2015.05.14 10:38 更新
2015.05.15 取材
1950年の創業から数えて実に65年、アキバで長きに渡り営業を続けてきた老舗電器店のチチブデンキが来週5月20日(木)に店舗営業を終了する。店舗閉店に際し、半世紀あまりアキバの地を見守ってきた同店の小菅英臣会長を訪問。これまでの思い出やチチブデンキのこれからを語っていただいた。
「いやはや、振り返ると長いもんですねぇ。アキバに移ってチチブデンキとして営業を始めてから、この店も今年で65年。私が先代から店を引き継いだのが1970年頃ですから、この街にはもうずいぶん長いことお世話になりました。これまでやってこれたのも、お客様や取引先の皆さん、そしてこのアキバという街に育てていただいたからだと思います。来週の5月20日(水)でお店の営業は終了になりますが、今まで本当にありがとうございました。
この街も昔と比べればだいぶ様変わりしましたが、ウチも真空管から始まって、白物家電そしてパソコンと、世の中に合わせて取り扱い製品も変えてきましたね。特にウチを長く支えていただいたこともあって、1970年代からは東芝さん1本に。東芝ノートのパーツならなんでも揃う“Librettoの聖地”なんて呼ばれたりもして、Windows 95全盛の頃は馴染み客のたまり場でしたよ。新しいLibrettoが発売されようものなら、ぞろぞろと集って改造談義。でももう改造って時代でもないし、今は保守部品の取り扱いがメインです。とはいえネジからバッテリー、キーボードまで東芝ノートの純正部品ならなんでもござれ、“困ったときのチチブさん”は今でも健在ですよ(笑)。
店内に並ぶ東芝製ノートPCの保守部品。ネジからバッテリー、キーボードとなんでも揃い、現行製品はもちろん「古い物も相談してもらえば探しますよ」と頼もしい | |
今や東芝製品の取り扱いよりも有名かもしれない、同店の代名詞的存在の「おでん缶」。「電器店・パソコン全盛の時代は、まともに飲食店が入り込めなかったんですよ」という“食糧難”な頃のアキバで大ヒット、たちまち名物になった |
そしてLibrettoやDynaBookに縁がない人でも、ウチの名前で思い浮かべるのが『おでん缶』でしょう。昔は今とは比べものにならないくらい飲食店が少なかった。でも自販機で暖かい物といえば、お汁粉とかコーンスープがせいぜい。そこで『おでん缶』なんて物を入れたら面白いだろうと始めたワケですが、これが大当たり。お客さんがあちこちで宣伝してくれたり、メディアさんにも取り上げられたりして、多い時には月に5~6万個は売れたでしょうか。中には輸送用の車で乗り付ける方もいましたよ(笑)。“おでん缶発祥の地”や“おでん缶の聖地”なんて風に呼んでいただいて、アキバ名物、アキバ土産として、お客さんにも喜んでいただけたんじゃないかと思います。
最盛期は自販機や店舗に行列ができ、ひっきりなしにレジを打っていたというほどの人気アイテムに。通販での注文も絶えず「北海道から沖縄まで、全国に届けました」とは小菅会長の談。なんと6万個を売り上げた月もあったという | |
その店舗営業も来週の5月20日(水)で終了。営業再開後の5月25日(月)以降は、通信販売のみの営業に移行する。同店のアイデンティティの一つでもある「おでん缶」はどうなるだろうか? |
それとお店での営業は20日でお終いになりますが、商品の取り扱いは通信販売でこれまで通り続けていきます。気になっている方も多いでしょう『おでん缶』も、これまで通り。ビルの管理をお願いしている店舗流通ネットさんに『これだけはウチの看板だから』と、残してもらうことにしたんですよ。今の『おでん缶』も改良を重ねてはや5代目、私もメーカーの天狗さん(天狗缶詰)といろいろ相談して、一時期は『ラーメン缶』とか『カレーライス缶』なんてものもやりました。今は定番の『おでん缶』が2種、これからも変わらず食べに来ていただけると嬉しいですね。
1Fにはクレーンゲーム専門店「秋葉原クレーン研究所」、2Fの女性職人の寿司店「なでしこ寿司」、上階にメイドカフェなどが入る同店の持ちビル「チチブ電器ビル」。今後は「ほっかほっか亭」などを運営する、店舗流通ネット株式会社がビル管理を担当するとのこと |
もちろん長いことお世話になった街ですからね、離れるとなれば寂しいですよ。でもこうして振り返ってみると、アキバは本当に面白い、エネルギーのある街だと思います。パソコンが下火になっても他の分野が盛り上がったりして、いつも人の絶えない場所です。ウチのビルを見ても女性職人が握る寿司屋さんだったり、メイドさんのお店だったり・・・知ってますか?ウチが引っ越した後の3Fにも、メイドカフェさんが入るんですよ(笑)。昔とはずいぶん変わったけれど、いつも新しいものがどんどん入ってくる。それもこの街のいいところです。これからもこのアキバを応援していただいて、ずっと通っていただければ、これ以上嬉しいことはないですね」
「新しいものがどんどん入ってきても、昔ながらの繋がりもなくならない。アキバは本当に面白い街ですよ」と語る小菅会長。昔からすっかり様変わりした今でも、アキバという街への愛着は変わらないようだ |
文: GDM編集部 絵踏 一
チチブデンキ: https://www.gdm.or.jp/shop/chichibu/