2015.10.01 11:00 更新
2015.10.01 取材
株式会社アイ・オー・データ機器(本社:石川県金沢市)は2015年10月1日、ピュアオーディオ市場に向けたハイレゾ対応の高級オーディオNAS「fidata」を発表した。開発に3年をかけたという同社初の本格オーディオ製品。30万円を超える価格帯の自信作とは、いったいどのようにして生まれたのだろうか?
PC周辺機器を手がける一大メーカーであるアイ・オー・データ機器から、ハイレゾ全盛時代に向けた高級オーディオNAS製品が登場。発表に先立ち、日本オーディオ協会内の一室にてメディア向け内覧会が開催された |
アイ・オー・データ機器から、同社が初めて手がけるピュアオーディオ向けの本格オーディオNASが登場した。先月半ばにティーザーサイトにて予告されていたもので、その正体こそが本日正式に発表された「fidata」だ。価格は30万円超という高級志向の製品で、試作・開発には3年の期間をかけたという。
PC周辺機器メーカーである同社としてはやや意外なプロダクトながら、その完成にはこれまでのノウハウも活かされている。特に以前に挑戦者ブランドからリリースされた、自作NAS「RockDisk」シリーズがオーディオユースにも好評を博したことから、本格オーディオ製品開発の構想がスタート。得意とする法人向けNASの技術を応用するなど、技術畑のスタッフと社内のオーディオマニアたちが結集、「fidata」の製品化にこぎつけたというワケだ。
“信頼”を意味するイタリア語に由来するオーディオNAS「fidata」。まったく新しい分野の挑戦なだけに、「まずは上位モデルで最高レベルの品質を提供して、ブランドの信頼を確立したい」(担当者)というメッセージが込められている |
誰でも原音の迫力を手軽に味わえるハイレゾ音源の台頭を受け、アイ・オー・データが着目したのがネットワークオーディオの分野だ。ノイズの塊であるPCを介在させずに音源をNASに集中できることから、新潮流のリスニングスタイルとして期待度が高い。そして「fidata」は、徹底したノイズや振動対策、最適な音を出す部品選定といった細部までこだわった、オーディオに最適なNASとして誕生した。
その外観は重厚で、肉厚のアルミE型サイドパネルに4mm厚のアルミ天板、2.3mm厚かつ2.2kgのベース鋼板を組み合わせる。製品はすべて石川県内の工場で生産。筐体の接合部に和風家具に用いる「先留め」という技法を採用したり、和紙をイメージさせる螺旋状研磨目を施した天板など、アルミ加工や伝統工芸が盛んなお膝元・金沢の特色が反映されている。
ちなみに「fidata」のラインナップは、Western Digital製AV機器向けHDD「AV-GP」のカスタム仕様を採用したHDD搭載モデル「HFAS1-H40」と、Samsung「850EVO」を内蔵するSSD搭載モデル「HFAS1-S10」の2モデル展開。HDDモデルは2TB×2のミラーリング構成により容量と冗長性を確保、500GB×2のスパンニングで構成されるSSDモデルは振動や音の発生しないゼロスピンドル仕様と、それぞれニーズに合わせたチョイスが可能になっている。
ストレージとの2室構造を採用した電源・基板部。徹底したノイズ対策はもちろん、搭載部品による音の違いなどを突き詰め、オーディオに最適なチューニングが施されている | |
電源は、信頼性に優れた独立配置のTDKラムダ製50Wスイッチング電源2基を搭載。メイン基板には、オーディオグレードを含む大容量コンデンサや、低位相雑音特性をもつ真空タイプの水晶発振器が実装されている |
ストレージと分割配置された基板・電源部は、徹底したノイズ対策の真骨頂だ。システム部とストレージの電源生成回路を完全に分離するなど、パターン設計を最適化。さらにグランドを1点で底面ベース鋼板に落とし、共通インピーダンスを排除する「1点アース方式」が採用された。電源もシステムとドライブそれぞれに専用の電源ユニットを用意、独立して配置することでノイズの混入を防いでいる。
また、「for Audio」と「for Network」の2つのLANポートを搭載する「リンクセパレーションシステム」も大きな特徴。「for Network」でホームネットワークに接続しつつ「for Audio」でプレイヤーに直結することで、高品位な信号を直接伝送できるという仕組みだ。
LANポートはネットワーク用とオーディオ用の2ポートを用意、機器を挟まずプレイヤーに直結できるのが強み。なおそれぞれのコネクタは、接続時にケーブルのテンションを利用して強固に接続できるよう、通常とは上下逆に実装されている |
そして内覧会の最後には、「fidata」によるハイレゾ音源の“聴き比べ”セッションも行われた。プレイヤーに直結したHDDモデルとスイッチングハブを介したSSDモデル、一般的なNAS製品の3タイプを用意。一般向け製品ではやや音がこもるような印象があったところ、「fidata」はフィルターを取り去ったかのような明瞭なサウンドを披露。機器を介在させない“直結”のメリットと合わせ、駆けつけたメディアのほとんどが違いを認識していた。
本日から受注が開始される「fidata」の想定売価は、HDDモデル「HFAS1-H40」が税抜320,000円、SSDモデル「HFAS1-S10」が税抜370,000円。量販店やPCショップでの販売は行わず、ピュアオーディオユーザー向けにオーディオ専門店のみで販売する予定という。また、今後もユーザーに向けた試聴の機会を増やすべく、オーディオ専門店と連携した試聴会やイベントへの出展を計画しているとのこと。直近では、10月16日より開催される「オーディオ・ホームシアター展 2015」(音展 2015)への出展が予定されている。
内覧会の締めくくりは、一般向けNAS製品を絡めた聴き比べセッション。なお再生環境には、LINN製のネットワークプレイヤー「AKURATE DS/K/2」と、B&W製のトールボーイスピーカー「CM10S2 MR」が使用されていた |
文: GDM編集部 絵踏 一
株式会社アイ・オー・データ機器: http://www.iodata.jp/