2017.02.25 00:00 更新
2017.02.25 取材
ROSSO(赤)とNERO(黒)を纏ったスタイリッシュなケーブルを作る、エスエスエーサービスとはオレたちのこと。密かにサプライ業界の天下を狙うアキバのケーブル屋さんが、ケーブルの魅力を解説する「はじめてのケーブル道」。今回は、「急速充電ケーブル」の具体的な規格の第1弾として「USB BC」について語りましょう。身近だけど意外に知らない、奥深いケーブルの世界を“その道のプロ”がご案内します。
どうもこんにちは、ROSSO(赤)とNERO(黒)のカッコいいケーブルでアキバでもお馴染み、エスエスエーサービスの担当Tと申します。毎日使っているけれど、意外に知らないことが多いケーブルの世界。今回は「急速充電ケーブル」の第2回ということで、具体的な規格のお話をしていこうと思います。まずは従来のUSB充電を拡張した「USB BC (USB Battery Charge)」について。一般的にケーブルやACアダプタ、モバイルバッテリーで“急速充電”と表記のあるUSB充電の製品は、大半がこの規格に該当しています。そもそもがUSBで高速な充電を実現するため生まれた仕様で、もちろんAndroidスマホなど現行のモバイル端末も対応していますよ。
アキバのケーブル屋さんが、知られざるケーブルの世界を解説してくれる「はじめてのケーブル道」。今回は急速充電ケーブル連載の第2回として、最も基本的な「USB BC」について紹介するぞ |
ただし「USB BC」というキーワードがイコール“急速充電”ではありません。「USB BC」は、使うケーブルや機器、シチュエーションに応じて3つのプロトコルに分類されるんです。まず充電・データ通信両対応のケーブルで接続した際に、通信線のD+/D-の両方に抵抗値15Ωを検出した場合は「SDP(Standard Downstream Port)」というプロトコルが適用されます。なんだか急に専門的な話になってきましたね(笑)。
このプロトコルには、「High Power:5V/500mA」と「Low Power:5V/100mA」、そして「Suspend:5V/2.5mA」と3つのモードがありまして、これはUSB2.0の基本仕様と同じものです。そう、「USB BC」の中でも、このプロトコルは急速充電ではない形式なんですよ。
スイッチで充電・通信と充電専用モードを切り替えできる、便利なコネクタ「SUAM-KSAF」 | 充電・データ通信モードで接続している状態では、後述の「CDP」プロトコルで充電されている。出力は定格より高いものの、急速充電というレベルには達していない |
そのほかに、「CDP(Charging Downstream Port)」というプロトコルがあります。これは充電・データ通信両対応のケーブルで接続した際、通信線でハンドシェイク(認証)を行ってポートを検出する方式です。通信線を使った機器認証が必須なので、基本的にはPCと小型端末間の充電に使う例が多いでしょうか。
最大5V/1.5Aの出力が可能ですが、実際にどの程度の充電速度が出るかはケーブルの質にも左右されます。何しろ充電・データ通信両対応のケーブルって、充電専用に比べて抵抗が高めなものが多いんですよ。基本的に、いわゆる“急速充電”と言えるほどの充電速度は出ないことが多いですね。
データ通信をカットした充電専用モードでは、「DCP」プロトコルによる急速充電が行われる。同じ環境でもプロトコルが違うだけで、出力は約1.3Aと倍以上の差が。モバイルバッテリーなど、電源側が通信非対応でも「DCP」充電になるぞ |
そして最後は「DCP(Dedicated Charging Port)」というプロトコル、これはケーブルの通信線が200Ωの抵抗で短絡されている場合に適用されます。通信線をショートさせた充電専用ケーブルを使った時がそれで、電源側が端末を“充電専用機器”として認識して、急速充電を開始するという仕組みですね。ACアダプタやモバイルバッテリーといった、電源側が通信をサポートしない機器の場合も同様です。通信をしないことで“端末が急速充電可能であると認識させる”方式だと言っていいでしょう。
出力は最大5V/1.5Aで、冒頭触れた“急速充電”を謳うケーブルやACアダプタのほとんどが、このプロトコルを利用しています。最近ではUSB本来の限界を超えた出力を可能にするACアダプタやバッテリーも増えていまして、そんな時に2A以上の出力に対応したケーブルが真価を発揮するワケです。
プロトコルだけでなく、ケーブルの質も急速充電の重要な要素。従来難しかった300cm級のロングケーブルでも、品質を向上させて2.4Aに対応した「SU2-MC300RG」のようなモデルも | 充電・通信と充電専用ケーブルが一体になった二股ケーブル「SU2-MC80RB2」。二股ながら合計2.4A出力に対応、赤と黒のツートンカラーも人気らしい |
ただし、単に通信線をショートさせただけの「充電専用ケーブル」がイコール「急速充電ケーブル」ではない、という点には注意が必要です。いかに電源と機器側が急速充電が可能な状態であっても、実際の充電効率がケーブルの質に依存するのは、「DCP」プロトコルの場合も同じなんです。ケーブルやコネクタの質が悪いせいで抵抗値が高くなっては台無し。お店でケーブルを探す際は、「2.4A出力対応」とか「急速充電対応」といった表記がある製品を選びたいですね。
さて、急速充電の中でも最も基本的な「USB BC」のお話はこれまで。次回の「はじめてのケーブル道」では、また別の規格についてご説明しましょう。
文: エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
株式会社エスエスエーサービス: http://ssa.main.jp/