2017.03.22 00:01 更新
2017.03.22 取材
こんなスマホやあんなタブレットをちぎっては投げ。なんと半年足らずで数十台を使い倒すという、筋金入りのスマホオタクがお気に入りの端末をアレコレ語る「ギークの殿堂」。今回は、かつてスマホ業界に新風を吹き込んだFirefox OSスマホの「Fx0 LGL25」を紹介します。日本中のマニアをワクワクさせ、一代限りで散っていった“第3のOS”をもつスマホとは何だったのか?
どうもこんにちは、モバイルならおまかせなイオシス アキバ中央通店スタッフの太田です。マニアの視点からスマホやタブレットをご紹介していくこのコーナー、今回はスマホ史上でも記念碑的なモデルとして名高い“迷機”の「Fx0 LGL25」について語ろうと思います。コレを見て「おっ」とテンションが上がった方は、相当なマニアでしょう(笑)。そもそも発売当時にKDDIの社長自身が「ギーク向け」と称していた端末で、AndroidではなくFirefox OSを搭載するという野心的なスマホでした。結果的に国内キャリアから発売された“最初で最後のFirefox OSスマホ”になってしまったワケですが、当時は私も胸を踊らせたマニアの1人だったんです。
2014年12月にKDDIから発売された、Firefox OS搭載スマホ「Fx0 LGL25」が今回の主役。当時の業界事情から国内キャリアが“第3のOS”を模索した時期の端末で、結果的に国内向けでは唯一のFirefox OS搭載端末となった |
でもなんでKDDIがFirefox OSスマホを出したのか?実はこれに関しては、当時の業界事情が関わってきます。ちょうどGoogleから「あまりAndroidをいじりすぎるな」と警告が出た頃の話で、実際にAndroid 4.2のリリースでは「Androidを断片化させるような改変は許されない」というような文言がSDKに流れました。ひょっとしたら、今まで当たり前に搭載してきたワンセグやおサイフ(FeliCa)、メーカー独自アプリが入れられなくなるのかも・・・大手キャリアも大慌てになったんです。
そこで新しい自由を求めて、ドコモはTizen OSを、KDDIはFirefox OSの搭載を検討することになります。結果的にGoogleがOSに制限をかけることはなかったので、ドコモのTizenスマホは技適を通ったところでお蔵入りに。でもKDDIの方は、1回だけFirefoxスマホを出してくれたんです。前置きが長くなりましたが、それがこの「Fx0 LGL25」というワケですね。
さすがギーク向けを謳うだけあり、全身スケルトン仕様という尖りきったデザインが採用されている。デザイナーの吉岡徳仁氏がデザインし、端末自体はLGが製造を行った。Firefox云々は知らないけど、このスマホは見たことある、という人は多いハズ |
そもそもそれまでFirefox OSを搭載していたのは、新興国市場向けの端末ばかり。1万円もあれば買えてしまうようなスマホばかりで、デザインもスペックもショボいというか・・・「なんとか動いてるね、使えるね」といった具合でした。当時この感覚をもっていたのは私だけじゃなかったと思います。
でもこの「Fx0 LGL25」はデザインが素晴らしい!カッコいいスケルトン仕様のボディは“自由を表現するため”で、端末内部のアンテナまですべて丸見えになっているんです。もちろんスペックはAndroidスマホに比べれば劣りますが、Firefox搭載モデルとしては類をみないハイスペック構成。“世界最強のFirefoxスマホ”と言い換えても間違いではないと思います(笑)。
それで肝心のFirefox OSというと、全部がHTMLで書かれているという珍しいWeb OSでした。普段見ているニュースサイトやブログと同じ言語で書かれているワケで、ホーム画面もなく縦にスクロールするだけ。アプリ起動にしてもブックマークを開くような感覚で、なんとも斬新というか、まったく見慣れない構成でした。
もっともHTMLで書かれているということは、「Webをいじれる人が自由に改変できる」というメリットがあります。開発者にとっては夢があるプラットフォームで、自分のアイデアをOSに組み込んで開発フォーラムに提案したりもできました。開発なんてできなかった私ですら、いったい何がどう出来上がっていくんだろう、とドキドキワクワクしたものです。
当時HTMLにタッチできる人口はAndroidやiOSを圧倒しており、HTMLの知識があれば自由に開発できるメリットがあった。「モノとネットが融合するIoTを促進させるOS」と呼ばれたことも | |
設定画面はどことなくAndroidっぽいものの、中身はまるで別物。アプリをインストールするというより、ブックマークを追加する感覚だった。もっとも、容量は7KBと超軽量。OSとしての動作はかなり軽快だ |
・・・でも結果的にAndroidスマホに制限がかかることはありませんでしたし、さらに大人気のiPhoneも敵に回しての“第3のOS”に到底勝ち目はありませんでした。「さぁ、何つくる?」のキャッチでスタートして、結局「何もできなかった。何もなかった」で終わってしまったのは、実に悲しいですね。とはいえ、こんなにスペックの高いFirefoxスマホ自体が貴重で、しかもそれが日本で発売されたというのは意義深いこと。ケータイ・スマホ業界の歴史に名を刻んだのは、間違いないと思います。マニアの間でも、「あんな端末があったよね」とずっと語り継がれていくんじゃないでしょうか。
文: エルミタージュ秋葉原編集部 絵踏 一
イオシス アキバ中央通店: https://www.gdm.or.jp/shop/iosys-chuou/