2017.06.08 20:00 更新
2017.06.08 取材
Noctua(本社:オーストリア)史上最も開発が難しかったという万能120mmファン「Next generation 120mm A-series Fan」が遂に完成。開発期間4年以上という、渾身の製品は年内にも発売が開始される予定だ。
NoctuaのプロフェッサーことJakob Dellinger氏が、これまでの製品の中で最も開発が困難だったという渾身の冷却ファン「Next generation 120mm A-series Fan」が遂に完成した。
ブースの壁一面に描かれた図を使いつつ製品の解説をしてくれたJakob Dellinger氏。なかなか理解できない筆者のために、ときにはメモを書きながら丁寧に説明をしてくれた |
インペラとフレームの隙間を従来の1.5mmから0.5mmへ削減。エアフローの損失を最小限に抑えることを目標を掲げ、プロジェクトがスタートしたのはなんと2012年のこと。その3年後の「COMPUTEX TAIPEI 2015」では初めてプロトタイプが披露。年内にも発売が開始されるという話だった。
インペラとフレームの隙間は通常の1/3にあたるわずか0.5mm。従来の素材では回転時の遠心力による膨張でぶつかってしまうことがあるという |
その後、設計や製造ラインの品質管理問題はクリアできたが、回転時の遠心力によるインペラの膨張という問題が発生。結局従来の素材ではNoctuaの求める品質をクリアすることができず、超硬質の新素材「Sterrox LCP」を新たに開発。ようやくこの難題をクリアすることに成功したという。
硬質・軽量な新素材「Sterrox LCP」を開発することで問題を解決。またインペラが固くなったことで回転時のブレも低減できたという |
開発には時間がかかったものの、その効果は抜群。従来の「A-series Fan」に比べて冷却性能は2倍に向上。また静圧・風量のバランスが非常によく、CPUクーラー、水冷用ラジエター、ケースファンのいずれの用途でも優れた性能を発揮できるのが特徴だ。
「Next generation 120mm A-series Fan」をシングル構成で搭載した場合(画像左)と、従来ファンをデュアル構成で搭載した場合(画像右)の温度比較。驚くことにほとんど温度に差は出ていない |
早ければ量産開始は7月、製品の販売は年内より開始され、単体発売時の価格は30ドル前後。また現在開発中の「Next-generation U-type cooler」では、この「Next generation 120mm A-series Fan」が採用される予定だ。
最大静圧は「NF-F12」(グリーン)に、最大エアフローは「NF-S12A」(ブルー)に劣るものの、CPUクーラー、水冷用ラジエター、ケースファンそれぞれの標準的な環境では、静圧、エアフローとも「Next generation 120mm A-series Fan」(イエロー)が最も優れている |
なおNoctuaでは既に140mm口径モデルの開発にも着手。インペラのサイズが大きくなるため難易度はさらに上がるということだが、順調なら来年中にもプロトタイプが完成する予定。Noctuaのさらなる進化に期待したい。
文: エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
RASCOM Computerdistribution(Noctua): http://www.noctua.at/
COMPUTEX TAIPEI 2017 記事一覧: https://www.gdm.or.jp/computex2017/