2019.02.24 00:01 更新
2019.02.24 取材
PCやスマホ三昧の僕らに潤いの1冊・・・。旅する書評家・北村有さんが"これぞ”と思った本を紹介してくれます。週末くらいは液晶画面から離れて、ゆっくり読書はいかがでしょうか。
あなたは、「バカ」ですか?
そう言われて、「はいそうです」と言える人はなかなかいないでしょう。
お世話になっております。今回から書評記事の連載をもたせていただくことになった、自称「旅する書評家」の北村と申します。以後、お見知りおきを。
国内一人旅と読書が好きな私。暇さえあれば本を読んで、時間ができたら旅行をして、人並み以上の知識と経験があると自負しております。・・・ですので、もしも面と向かって「あなた、バカですよね?」なんて言われたら、たとえそれが冗談でも鼻を殴りつけてしまうかもしれません。
そんな私、つい最近とある本を読んで、少し考え方が変わりました。
キングコング西野亮廣と堀江貴文の共著(敬称略)である『バカとつき合うな』(徳間書店)です。
バカとつき合うな(徳間書店) 著者:堀江貴文・西野亮廣 2018年10月26日発売(256ページ) 定価:1,300円+税 判型/仕様:四六判 ISBN:978-4-19-864705-6 |
「バカ」って本当に悪いこと?
センセーショナルですね。世の中のありとあらゆる「バカ」がこぞって批判をして、またもや炎上を引き起こしそうなタイトルですね。
ですが、このタイトルだけを見て判断を下してはいけません。
一言で表すなら、この本は「バカの概念を覆してくれる」1冊です。
最初から最後まで、様々なタイプの「バカ」について2人の視点から語られています。世の中にはこんな「バカ」がいるんだと、半ばある種のガイドブックのような網羅性さえ感じられる構成です。
私を含め、この本を読んだ皆さまは、一貫してこう感じていたはず。
まるで、自分は決して「バカ」ではありませんと、高みの見物をしながら読み通すはずです。例として、どんな「バカ」が挙げられているかみてみましょう。
「ああ、いるいる!」とあなたも思いませんでしたか?
努力や我慢を必要以上に重んじて、過去の栄光を事あるごとに語りだす自慢語り系上司。「◯歳なんだから、そろそろ結婚しないとね~」と前振りもなくぶっ込んでくる空気読まない系親戚のおばさん。遅れてくることがステータスだと勘違いしている自意識過剰系女子。
できれば、こんな「バカ」とは距離を置きたい。そして、こんな「バカ」には絶対になりたくない。「バカ」だと思われたくない。・・・そう思うのが普通の考えですよね。
しかし、本書では、いろいろな「バカ」を解説していくことで、ある価値観を提唱しているんです。それは、「自由に生きるにはバカになるしかない」ということ。
「バカです!」と手を挙げられる人間が実は、いちばん強い
誰でも「バカ」だとは思われたくないものです。
「バカですか?」と訊かれたり、「バカじゃん!」と断定されるのも、内心避けたいと思うのが普通の心理でしょう。
西野亮廣・堀江貴文は、「バカだと思われたくない一心で、反対に生きにくくなっているのでは」という問題提起をしています。
本書はある意味、人間の変わらないバカさについて語っています。
バカを考えることは、人間を考えることです。
思った以上に、そうでした。
人間というものがこの世に生まれてこの方、いつの時代もあらゆる「バカ」がいました。明治維新で有名な坂本龍馬や、相対性理論を発見したアインシュタインも、両名とも時代を担った偉人として知られていますが、見方を変えれば「ぶっ飛んだバカ」と言えなくもありません。
人間が真の意味で自由になるには、本質的な自由を勝ち取るためには、これまで積み上げられてきた「常識・世間体・一般論・普通」という概念を飛び越えるレベルの「バカ」にならないといけないのではないでしょうか?
いつの時代も、「自分はバカです!」と言い切れる人間が実は、いちばん強いのかもしれない。そんなことに気付かせてくれる「バカとつき合うな」、頭の凝り固まった昭和生まれのおじさんにこそ熟読してほしい良書です。
あなたは、どんな「バカ」?
人よりもたくさんの本を読んでいるし、知識も経験もそれなりにある。自分を高く見積もって生きてきた節が、私にはありました。
あらゆるタイプの「バカ」を羅列した本書を読み、脳天をがつーんとやられ、しばらく這いつくばって動けなかった私。そうか、「バカ」がいちばん強いし、停滞した日本に勢いをつけるには「バカ」になるしかない・・・。そんな決意さえ脳裏に浮かんでくるほどでした。
ここで、改めてあなたに問いたい。
「バカ」に対しての概念をひっくり返された1冊、「バカとつき合うな」。
自分はどの「バカ」に当てはまるのか考えてみるのもまた一興、かもしれませんよ。
ビジネス書や自己啓発書をはじめ、小説・エッセイ・写真集などありとあらゆる本を読む「旅する書評家」の私がこれから定期的に、これぞと思った1冊を紹介していきます。
連載が続くように見守っていただけたら、これ以上ない僥倖です。
北村有(きたむら・ゆう) 国内一人旅と読書が趣味なフリーライター・旅する書評家。 ブログ:https://kitayu.net Twitter:https://twitter.com/yuu_uu_ |
文: フリーライター・旅する書評家 北村 有