2019.03.21 00:00 更新
2019.03.21 取材
機種によって違う通信料金や複雑なプラン、キャリアによる囲い込みを是正しようという、政府レベルでの動きが具体化してきた。いわゆる「分離プラン」といわれる仕組みだ。以前から高額なiPhoneやスマートフォンが「一括0円(あるいは1円)」で販売されてきたお馴染みの光景も、もう見納めかもしれない。
今月に入って電気通信事業法の改正案が閣議決定され、「分離プラン」の導入がほぼ固まった。しかしそもそもの話、「分離プラン」とはどういうもので、何をどう分離するのだろうか。
現状大手3キャリアは端末だけの販売を行っておらず、音声通話やデータ通信契約のセット提供を前提としている。「分離プラン」とは、この端末と通信契約のセットを分離させるもの。スマートフォンが欲しければ端末だけを購入し、通信契約が必要であれば別途申し込みできるという仕組みだ。
端末購入を条件に、複雑に変化する契約プラン。端末が破格値で手に入る代わりに、通信料金は割高だと言われてきた |
そもそもキャリアは、通信料金を原資にして端末料金の大幅な割引きを行っている。そのため、今やライフラインとも言えるようになった毎月の通信料金が割高になったり、機種によって通信料金が違うなど、料金プランの分かりにくさや不公平感が指摘されてきた。
そこで「分離プラン」導入で端末料金と通信料金を分離することで、端末割引の元手になっていた通信料金を値下げさせ、料金プランもシンプルにさせようという狙いがある。
では「分離プラン」が本格的に導入された場合、いったいどんな影響があるだろうか。まず通信料金は下がるだろう。ドコモはすでに2割の値下げを宣言しており、(auやソフトバンクは様子見ながら)業界全体で値下げ傾向に動いていくと思われる。
また、端末購入が条件から外れるため、通信プランも理解しやすいものになりそうだ。2年契約の違約金も常に同じという現状から変更され、期間が経つごとに減っていく“逓減型”が主流になるかもしれない。
48分割で端末を買っても、25ヶ月目に新機種に変えれば残りはチャラになる・・・など、端末を絡めた契約はとにかく難解だった。ただし端末を本来の値段で買う必要が出てくれば、最新iPhoneなどハイエンド機種は手に入りにくくなる |
その一方で、最新iPhoneなどのハイエンド端末を買いにくくなるデメリットも予想される。携帯ショップでよく目にしていた「一括0円(規制後は1円表記が多かった)」は、1台売れる(契約される)ごとにキャリアからショップに数万円単位のインセンティブ報酬が入るという仕組みで成り立っていた。ショップ側はインセンティブが入るため大幅な値引きが可能であり、契約してもらうことでキャリアはその原資を通信料金から回収できた。
ところが端末と通信の料金が完全に分離されることで、こうした芸当はできなくなる。これまで通信料金は割高でも破格で端末が手に入ったところ、通信料金が安い代わりに端末が高くなる・・・という流れになるだろう。
キャリア契約に縛られず端末を選べるため、端末単体が欲しい人には便利。XperiaやGalaxyなどSIMフリー販売が切望されていた端末も、単体で購入してアンロックすれば即SIMフリー運用できる |
いわゆる一括0円販売がなくなることで、「他社に乗り換えないと損」という風潮は変わると思われる。端末と通信が分離されることで、端末を買い換えることで何かしらの割引が入る、ということがなくなる。長く同じ端末や契約を使い続ける長期ユーザーも損をしないということだ。
メリットもデメリットもある「分離プラン」。端末のバラマキがなくなれば、中古スマホ市場には困ったことになるかもしれない |
ただし一括0円キャンペーンで複数台の端末を手に入れて買取ショップに持ち込む、ということができなくなるため、中古スマホ市場の中核である未使用品の白ロムは激減が予想される。まるで契約のオマケのような感覚で端末をバラまいていた流れが変われば、当然製造していたメーカーも大幅に出荷が減るだろう。
その一方で、ハイエンド端末を購入する人が減ることにより、2~3万円台で買えるミドル級スマートフォンの存在感が増しそうだ。「分離プラン」の具体的な施行時期はまだ決まっていないが、この年度末がiPhoneのもらい納めになるかもしれない。
文: フリーライター 太田 文浩