2019.03.31 00:01 更新
2019.03.31 取材
PCやスマホ三昧の僕らに潤いの1冊・・・。旅する書評家・北村有さんが"これぞ”と思った本を紹介してくれます。週末くらいは液晶画面から離れて、ゆっくり読書はいかがでしょうか。
この言葉に何度も背中を押され、励まされ、自分の人生に誇りを持てるような生き方ができるように努力をしてきました。はあちゅうさん著「半径5メートルの野望」内に書かれている一文です。こんにちは、旅する書評家と名乗っています。北村と申します。
私が会社を辞め、未経験でありながらいきなりフリーランスへと転向したのは昨年(2018年)10月のこと。ちょうど、はあちゅうさんというブロガー・作家を知った1年後のことでした。
半径5メートルの野望 完全版 (講談社文庫) 著者:はあちゅう 2016年6月15日発売(288ページ) 定価:600円+税 判型/仕様:文庫本 ISBN:978-4062934152 ※画像は「完全版」 |
大げさでもなんでもなく、私は、この「半径5メートルの野望」のおかげで今のような人生を送れています。何事にも臆病で、内に籠もって、1人では何も成し遂げられなかった弱い私が、やりたいことで生きている現状。たまに、不思議に思います。
私は心のどこかで、「いつか凄い誰かが自分の目の前にあらわれて、あれよあれよという間に、人生を変えるきっかけを与えてくれるに違いない」と思っていました。
必死に歯を食いしばって、汗を流して、時には涙して、泥臭く頑張らなくったってその内に誰かが、劇的にこの人生を変えてくれると。誰かが、私の望む何かを与えてくれるはずだと。
長い間そう思い続け、流れに身を任せ続けて20年以上。私の目の前にあった景色は、心からやりたいとはとても思えない仕事。刺激の少ない環境。日々同じように流れていく時間。
仕事をこなしながら、何度か転職を重ねながら、それでも尚機会をただ待つだけだった私に、奇跡なんて起こるはずもありませんでした。
そんな20代半ばを過ぎたある日、ふと立ち寄った書店で見慣れない言葉が目に飛び込んできたんです。
「半径5メートルの野望」
なんだろう。まずそう思ったのを覚えています。半径5メートル、の、野望。自分を起点にした半径5メートルは、とても身近。その中にある野望とは、きっと、とても近しいもの。
私は普段、新しい本を購入する際は少しだけ中身をチェックするのですが、この時はそのままレジに直行しました。中に書いてあることが気になって気になって、たまらなくなってしまったのです。
がつん、ときました。
きっと心のどこかでは分かっていた、それなのに、敢えて見ないようにしていた現実を直視させる言葉が、この本の中には並んでいました。
自分の人生は、自分で変えるべき。自分の人生の面倒は、自分にしかみられない。
いつの間にか、「誰かがどうにかしてくれる」「いざとなったら助けてくれる人がいる」と思い込んで、受け身の他力本願な生き方になってしまっていたのです。そんな姿勢で人生に臨んでいる私が、「本来の自分の人生」なんて生きられるはずがありません。
もしかしたら、これは当たり前のことなのかもしれない。それでも、当時読んだ私にとっては、心から血が出るくらいに痛くて、新鮮でした。
他にもぜひ紹介したい金言は山のようにあるのですが、それだけで文字数をオーバーしてしまいますので、控えておきます。
この本の、この言葉たちのおかげで、私は「人生を変えるための行動」を意識することができるようになりました。俗にいう「読んで人生が変わった本」なんて、言葉にしてしまうと途端に陳腐なものに成り果てますが、私にとってはまさにそんな1冊として今も光り輝いています。
本になぞらえていうなら、まさに半径5メートルの範囲から、変えられるものをまずは変えていく、という意識を持つことです。私の場合は、「朝起きてまず何をするか」「朝食には何を食べるか」「家を何時に出るか」「仕事をどんな段取りで進めるか」・・・と、日々のちょっとした行動を少しずつ変えていきました。
そこから徐々に、「そもそも今の仕事のままでいいのか?」「退職するとしたら、転職するとしたら?」「違う仕事をするとしたら何をしたい?」という深いものに転化していき、やがて、「私は何がしたいのか?」という本質的な問いに。
半径5メートルの範囲から、未だに私は飛び出していません。
広さは変えず、ただひたすらに深さを掘り進めていくイメージで、やりたいことだけを追求する生き方にしました。それが、旅をしながら本を読む、「旅する書評家」としての私を形作ってくれたのだと思います。
冒頭で、私は「1人では何も成し遂げられなかった弱い私が」と書きました。
今でも私はたった1人では何もできない弱い自分のままです。けれど、半径5メートルからなら、変えられる。今日もそんな気持ちで生きています。
北村有(きたむら・ゆう) 国内一人旅と読書が趣味なフリーライター・旅する書評家。 ブログ:https://kitayu.net Twitter:https://twitter.com/yuu_uu_ |
文: フリーライター・旅する書評家 北村 有