2019.04.04 00:00 更新
2019.04.04 取材
3月26日にパリでファーウェイの「HUAWEI P30」シリーズが発表された。ファーウェイといえば、アメリカ政府から「5G」を中心に通信インフラの排除を受けており、その流れが日本にも飛び火している。はたしてこの窮地を乗り越えられるのだろうか、そんな気持ちで発表会を見守っていた。
盛り上がりを見せたのは、フラッグシップモデル「HUAWEI P30 Pro」のお披露目。特にカメラ性能のプレゼンがすごかった。発表会がほぼカメラの説明に費やされていたことからも、ファーウェイの力の入れようが分かる。
詳細なスペックはさておき、ペリスコープ式の光学5倍望遠レンズを搭載した「HUAWEI P30 Pro」は、カメラ性能では間違いなくスマートフォンの最高峰に立った。劣化の少ない10倍ハイブリッドズーム、さらにデジタルズームを組み合わせれば50倍ズームも可能という、お化け性能だ。自身が「HUAWEI P20 Pro」で達成したISO感度の世界記録も軽々と更新、なんとISO 409600の撮影が可能という。
事前のリーク情報は出ていたものの、カメラ性能に関しては不確定要素が多かった「HUAWEI P30 Pro」。それだけに発表のインパクトは大きかった |
その性能に驚かされる一方で、ライバル製品を徹底的に叩いていくスタイルも印象的だった。「HUAWEI P30 Pro」は天の川銀河が撮影できるのだが、その紹介の際も「(Samsungの)GalaxyではGalaxy(銀河)が撮影できない」という強烈なジョークが飛び出す始末。
そして50倍ズームにより、なんと月面すら撮影できるという「HUAWEI P30 Pro」。会場では実機でデモも行われたところ、その最中も「あー、これはiPhoneには無理だね」と「iPhone XS Max」もディスられることに。ほかにも近接2.5cmでボケずに撮れるなど、圧巻のカメラ性能が披露された。
銀河も月も撮れる。会場には「Galaxy S10 Plus」と「iPhone XS Max」 の実機も用意され、「HUAWEI P30 Pro」と比較されていた |
ところでファーウェイといえば、アメリカ政府や同盟諸国から「5G」を中心に通信インフラの排除を言い渡され、窮地に陥っているイメージだ。そもそもファーウェイは通信インフラから事業を拡大し、モバイルルーターなどのコンシューマ向け機器に手を広げ、その後でスマートフォンを手がけるようになったという経緯がある。今でも売上高の半数近くは通信インフラ関連から計上されているようだ。
アメリカとの政治的な対立で大ダメージを受けていると思いきや、業績自体は堅調に伸びている。スマートフォン事業の伸びは特に印象的だ |
その通信インフラ分野に横槍が入った格好だが、一方でスマートフォンを含むコンシューマー向け端末事業では大幅躍進。不利な政治情勢にありつつ、売上業績は同社初の11兆円超えを記録した。中国市場での盤石な売上に加えて、米国圏への依存が限定的なことから、影響は思ったより少ないのかもしれない。
かつてファーウェイがスマートフォンを始めた時は、本当に低スペックでローコストな端末ばかりだった。それが今や世界一クラスの端末を作れるようになったということは、素直に驚きだ。ファーウェイは2021年までにスマートフォンシェア第1位を目指しており、現在は第1位のSamsungと第3位のアップルに挟まれた第2位。このままの勢いなら、達成も十分に射程圏内かもしれない。
並外れたスペックの端末で会場を沸かせるプレゼンも、アップルの創業者である故スティーブ・ジョブズ氏を連想させる。彼もiPhone発表時には物理キー搭載のBlackBerryを全否定するなど、他社製品を叩くスタイルが特徴だった。
さてその一方で、アメリカや日本をはじめ通信インフラが政府調達から排除されるなど、難しい立場にあるのも事実。ここにきてファーウェイの“疑惑”とされたバックドアは単にシステムのバグなのでは、という報道も出ており、今後その状況は変わってくるかもしれない。もし変わらないとしても、今のように魅力的な端末をリリースし続ける体力があれば、十分にリカバーも可能だろう。ネガティブなニュースを含め、引き続き見守っていく必要がありそうだ。
文: フリーライター 太田 文浩