2019.05.25 10:08 更新
2019.05.24 取材
思わぬお宝との出会いが楽しい「秋葉原最終処分場。」で、レジ横に避けられたCPUクーラーに目が留まった。なんと懐かしのカノープス「Firebird R7」ではないか・・・。
カノープス株式会社と言えば、グラフィックスカードの国産ブランドとして、自作PCの黎明期を支えたメーカーのひとつ。発売日に店頭から在庫が消えるほどの人気を博したハードウェアMPEG2エンコーダー搭載「MTV1000」「MTV2000」を懐かしく思い出す自作派も少なくないだろう。
その歴史を紐解くと、1983年4月カノープス電子株式会社として創業。その後、1992年にカノープス株式会社に商号を変更し、2008年10月にはトムソン・カノープス株式会社に名を変える。さらに2011年3月にはグラスバレー株式会社となり、ついに社名からカノープスの名前が消えた。
そんなカノープスから2001年3月に発売された「Firebird R7」は、実にセンセーショナルだった。グラフィックスカード専門のメーカーが、なぜCPUクーラーに参入したのか。
今でも閲覧できるグラスバレーの製品情報によると、「SPECTRA 8800」(NVIDIA GeForce2 Ultra)などに使用されている冷却ファンやシリコングリスで培った冷却技術を、CPUクーラーに応用。SPECTRA開発チームである「G.I.Works」により製品化された。時はAMD Athlonの熱対策が課題で、「Firebird R7」はSocket A対応クリップ「Iron Claw-A」のみが付属。Pentium III/CeleronのSocket 370用クリップ「Iron Claw-370」は、なんと1,000円でオプション扱いだった。
かなり使い込まれた形跡のある個体。実は売り物ではなく、STAFFが自己使用すべく丁寧に磨きを掛けたそう |
「Firebird R7」発売当時の市場想定売価は5,800円。決して安くない価格ながら、カノープスという圧倒的なブランド力、さらに信越化学社製で、注射器型容器入りの超低熱抵抗シリコングリス「G-765」が付属するなど、それだけで十分に説得力があった事を記憶している。ただし飛び抜けて冷えたという記憶は無い。
なお「Firebard」のネーミングは、Thunderbirdを意識しているのかと思いきや、羽ばたく鳥の羽のような形状から命名されたという |
スペックを確認しておくと、外形寸法はW76xD60(クリップ部分75mm)xH48mm、重量190g。組み合わされる60mm冷却ファンは4,000rpmモデルを”モーターの限界値まで高めた”4,500rpm。軸受けは「Panaflow」などで当時流行の流体軸受けを採用する。
ちなみにカノープス発表による”性能の予想値”では、Athlonなら将来的な予想値で2.0GHz(ただし実証済みは1.2GHz)、Pentium 4で同じく2.0GHz(同1.5GHz)だった。
時の経過を感じさせる底面の使用痕。思えばコア欠けを防止する親和産業の銅板は自作派達のマストアイテムだった |
500rpmアップのチューニングが施された九州松下製の60mmファン。「MADE IN JAPAN」も高価だった要因のひとつ |
文: エルミタージュ秋葉原編集部 松枝 清顕
秋葉原最終処分場。: https://junk.co.jp/
グラスバレー株式会社: https://www.grassvalley.jp/