2019.05.26 00:00 更新
2019.05.26 取材
PCやスマホ三昧の僕らに潤いの1冊・・・。旅する書評家・北村有さんが"これぞ”と思った本を紹介してくれます。週末くらいは液晶画面から離れて、ゆっくり読書はいかがでしょうか。
「あなたは天才だ」
突然そう言われたとしたら、あなたならどうしますか?
こんにちは。旅する書評家を名乗っています、北村と申します。
北野唯我さんが書かれた「天才を殺す凡人」というビジネス書を手に取りました。ジャンルとしてはビジネス・自己啓発書にあたる1冊ですが、中はストーリー仕立てになっているので慣れない方でも読みやすいはずです。
それにしても、このタイトル。「天才を殺す凡人」。
実に尖っていて、センセーショナルで、攻撃的で・・・。電車の中やカフェなど、屋外で読む場合は少々まわりに気を遣ってしまいますが、これまでの凝り固まった価値観をひっくり返してくれる新しい視点をくれました。
今回は、こちらの本を紹介します。
天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ (日本経済新聞出版社) 著者:北野 唯我 2019年1月17日発売(272ページ) 定価:1,620円(税込) 判型/仕様:ソフトカバー ISBN:978-4532322533 |
冒頭の問いに戻りたいと思います。「あなたは天才だ」、そう言われたとしたら、あなたならどうしますか?というより、どのように感じるでしょうか。
もしも私が実際にこう言われたとしたら、まず「そんなわけない」と思うでしょう。否定から入ります。これは謙遜でもなんでもなく、「天才」とはどんな存在であるか、私なりに定義と理想を持っているからです。
天才とは、常に努力し続けられる人。努力を楽しむことができる人。周囲の意見や風潮に流されない人。自分を持っている人。誰にも負けない知識や技術がある人。「天才とは?」と訊かれたら、似たようなことを答える人が多いのではないでしょうか。
ただ、この「天才を殺す凡人」の中で、北野さんは言います。
それにくわえて、「あなたの中にも確実に天才はいる」と書いています。どういうことか?
この「武器」と「ストッパー」について、もう少し詳しくみていきましょう。
人には、あらゆる「表現方法」が用意されています。
それは人によっては絵であったり漫画であったり、歌であったり、言葉や文章であったり、はたまたダンスや演技であったりするでしょう。自分の思いや感情、意見をそのまま表に出すための方法は、人によってまさに千差万別です。
あくまで私の解釈ですが、この「表現方法」=「武器」だと仮定すると、私にとってはそれが文章になるでしょうか。武器と書いてしまうとおこがましい気もしますが、覚悟は決まりますね。この武器、道具をつかって、自分が生涯を通して表現していきたいものを世界へ表出させるのだ、という一種の覚悟だと思います。
一般的に「天才」と言い表される存在は、つねに表現したい(すべき)ものを抱えている印象があります。ただ、これは天才に限ったことではありません。本書内では「才能は3つに分類される」として、天才・秀才・凡人という言葉で表されていますが、秀才にだって凡人にだって言いたいことや表現したいことはある。それを表に出すための方法・技術が「武器」ということです。
そして、次に「ストッパー」です。
このストッパーとは、他人から浴びせられる言葉や態度であり、自分で自分にかけてしまう言葉でもあります。どういうことか?
「良いこと思いついた!」と思っても、少し時間が経ったら色褪せてみえることがありませんか。あれだけ個性的で良い案だと思ったのに、一晩置いて改めてみてみたら、誰でも思いつきそうな、ありふれたものに見えてしまったり。
はたまた、会議の席で、質問したいことが浮かんだとしても、「こんな変なことを訊いてもいいのだろうか」「わかりきったことを訊くなと思われないだろうか」ともう1人の自分が囁いてきて、怖気づいて結局、発言自体をとりやめてしまったり。
誰しも、経験があると思います。この内なる声が、「ストッパー」にあたります。
このストッパーさえ取り外し、自分に合った武器を振るえるようになれば、誰でも自分の中にいる天才の能力を伸ばすことができる、と説いているのが本書です。
自分に合った武器を見つけ出し、研ぎ澄ましつつ、隙あらば現れるストッパーを避けて表現し続けること。自分の中の天才はちょっとしたコツと意識で伸ばすことができます。
それと同じくらいに大切なことが、他人の中の天才を攻撃しないようにすること。
あなたにも、尊敬する人や憧れる人、「ああなりたい」と羨望を向ける対象が1人はいるでしょう。彼または彼女は、まさに自分に合った武器を見つけて、ストッパーを外すことにいち早く成功した人です。
憧れが行き過ぎて嫉妬心を燃やしてしまう人もいますが、それは相手の中の天才を殺してしまう行為。相手を下げることは自分を上げることと直結はしません。
天才を伸ばしましょう。自分の天才も他人の天才も、同じ天才です。
ぜひ「天才を殺す凡人」を読み、才能の正体を知って、潰すのではなく伸ばす方法を知りましょう。あなたの中の天才に出会うために。
北村有(きたむら・ゆう) 国内一人旅と読書が趣味なフリーライター・旅する書評家。 ブログ:https://kitayu.net Twitter:https://twitter.com/yuu_uu_ |
文: フリーライター・旅する書評家 北村 有