2019.06.02 00:00 更新
2019.06.02 取材
Noctuaブースレポート2回目となる今回は、研究開発用に作成したという「Fanless CPU cooler」を紹介する。いまのところ製品化の予定はないということだが、ファンレスへの最適化のノウハウがいろいろと詰め込まれていた。
これまで、プロトタイプモデルと言えども、それを感じさせない洗練された製品を持ち込むことが多かったNoctua。そんな同ブランドらしくない、いかにも無骨な風貌の「Fanless CPU cooler」は、「ハイエンドCPUを完全ファンレス駆動」させることに注力した製品だ。
ファンレスでTDP120Wまで対応する一方、ファンを付けても180Wまでとあまりマージンが伸びないのは、当然ながらファンレスに最適化しているため |
ブースレポート1回目で紹介した「Next-generation 140mm D-type」をはじめ、空冷ファンモデルでは、フィンの形状は異なるものの、基本的には薄いアルミニウムフィンを、狭いピッチで数多く積層する構造が一般的に採用されている。
Noctuaブランドのプロトタイプとしてはかなり無骨。これまでのCOMPUTEX TAIPEIの展示アイテムの中でも異彩を放っていた |
しかし、ファンレスでの動作を想定した場合、薄いアルミニウムフィンは急激に温度が上昇し、すぐに冷却性能が飽和する欠点がある。さらにファンレスでは、温められた空気が上方へ移動することで空気の流れを作り放熱をするが、ピッチが狭いと空気が滞留し、長時間・高負荷がかかる環境では安定した動作ができなかったという。
空冷ファンモデルではありえない、肉厚のフィンと、広いピッチがファンレスでは活きてくる |
そこで、試行錯誤を繰り返し、温度上昇が緩やかになる肉厚のフィンを、空気がスムーズに流れるピッチで実装したのが「Fanless CPU cooler」だ。
ヒートパイプを実装した受熱ベースは、空冷ファンモデルとほとんど変わらない |
実際ブースには、静音PCを得意としているイギリスQuiet PCの協力により、Intel Core i9-9900Kと「Fanless CPU cooler」をベースにした完全ファンレスPCが展示。ストレステスト「Prime 95」による動作デモが行われていた。
「Next-generation 140mm D-type」との違いを確認したところ、ファンレス動作限定では圧倒的に「Fanless CPU cooler」の方が冷却性能は高いという |
担当者によれば、COMPUTEX TAIPEI 2019の会期中はずっと開始から終了まで動作させているが、最終日まで一度もフリーズしたことはないという。ただし、CPUのコア温度はいずれも90℃以上、ケースのトップ部分やサイドパネル部分の温度も60℃前後まで上昇し、かなりギリギリの動作であることは間違いない。
当然のごとく、この状態で販売する気はなく、研究開発用としての意味合いの方が大きい。今回の製品で得られた検証結果を元に、空冷ファンモデルのヒートシンクの改良や、現実的なファンレスクーラーなど、さらなる可能性を追求していくということだ。
文: エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
RASCOM Computerdistribution(Noctua): http://www.noctua.at/
COMPUTEX TAIPEI 2019 記事一覧: https://www.gdm.or.jp/computex2019/