2019.06.27 10:28 更新
2019.06.27 取材
AMD Radeon Technologies Group Product ManagerのSimon Ng氏 |
続いて登壇したSimon氏は、AMDのGPU市場における好調ぶりについて言及。PC以外のゲームハードやGoogleのクラウドゲーミングプラットフォーム「Stadia」のデータセンターで採用されるカスタムGPU、モバイル向けのSoCチップといった広範な分野においてシェア獲得への取り組みを実施していることに触れた。
コンシューマー機や「Stadia」のデータセンターへの採用など、総合的なゲーム市場のシェアでは好調なAMD | PCゲーミング市場の課題として、「7割のゲーマーが3年以上前のGPUを使用している」ことを指摘 |
そのうえで、昨今のゲーミング市場における課題は、「7割のゲーマーが3年以上前のGPUを使用しており、さらにそのうちの7割のGPUがフルHD解像度(1,920×1,080ドット)でのゲームプレイを想定してデザインされている」ことだと指摘。ここで例に挙げられたのが、2017年8月に販売開始となった同社の「Radeon RX Vega 56」の性能だ。
「Radeon RX Vega 56」では、eスポーツ系タイトルやAAAタイトルで十分なフレームレートが得られない |
「Radeon RX Vega 56」を搭載したPC環境では、「Apex Legends」や「PUBG」といったモダンなFPSタイトルにおいて、中程度の画質セッティングで90~100fps程度のおおむね快適なフレームレートが出せるものの、最高画質までセッティングを上げると80fps前後までフレームレートが下がってしまう。さらに高負荷なAAA級タイトルである「モンスターハンター:ワールド」や「Dirt Rally 2」では最高画質時にフレームレートが60fpsを下回り、このままではなめらかな描画を実現できないとした。PCゲームの要求スペックに対し、数年前のGPUでは満足なパフォーマンスが発揮できていない、ということだ。
「Radeon RX 5700 XT」および「Radeon RX 5700」 | 「Radeon RX 5700 XT」は、「Apex Legends」や「PUBG」の最高画質時のフレームレートが90fpsを超え、「モンスターハンター:ワールド」や「Dirt Rally 2」の最高画質環境でも60fpsを上回れるなど、AAAタイトルでも戦えることをアピール |
こうした問題の解決策として、AMDが乗り換えを訴求するグラフィックスカードが「Radeon RX 5700 XT」および「Radeon RX 5700」というわけである。
Radeon RX 5000シリーズは、第3世代Ryzenと同じくTSMC 7nmプロセスで製造される「Navi」を採用。マイクロアーキテクチャは新たにゲーミングにフォーカスした「RDNA(Radeon DNA)」となり、クロックあたりの性能が1.25倍、消費電力あたりのパフォーマンスが1.5倍に向上したほか、ディスプレイエンジンとメディアエンジンの改善、PCI-Express 4.0をサポートするといった特徴がある。
「Radeon RX 5700 XT」と「GeForce RTX 2070」のベンチマーク結果。10タイトル中8タイトルで「Radeon RX 5700 XT」のフレームレートが上回っている | 「Radeon RX 5700」と「GeForce RTX 2060」の結果。すべてのタイトルで「Radeon RX 5700」のフレームレートが上だった |
位置づけとしては、どちらもWQHD解像度(2,560×1,440ドット)でのパフォーマンスにフォーカスしており、NVIDIAの「GeForce RTX 2070」や「GeForce RTX 2060」に対抗するGPUとなる。「Radeon RX 5700 XT」と「GeForce RTX 2070」のベンチマーク比較結果を掲載したスライドでは、10タイトル中8タイトルで「Radeon RX 5700 XT」のフレームレートが勝っており、「Radeon RX 5700」と「GeForce RTX 2060」の比較では、10タイトル中すべてのタイトルで「Radeon RX 5700」のフレームレートが高かったとしている。
「Radeon RX 5700 XT」の価格は449ドルで、「GeForce RTX 2070」の初出価格499ドルよりも安価。また、「Radeon RX 5700」は379ドルで、「GeForce RTX 2060」の初出価格349ドルよりも高いものの、ベンチマークを見る限りは性能面で優位に立っているため、どちらを選ぶべきかは難しい問題になりそうだ。
開発者用のオープンソースキット「Fidelity FX」を提供開始している | ポストプロセス処理によるゲーム映像のシャープネス化を実現する「Contrast Adaptive Sharpning」などを含むライブラリだ |
疑似的な高解像度化が可能になるシャープネス処理「Image Sharpening」。こちらは「Radeon Software Adrenalin Edition」のアップデートで実装される予定 | 入力遅延を30%前後も低減する「ANTI-LAG」。同じく「Radeon Software Adrenalin Edition」のアップデートで実装される |
また、Radeon RX 5000シリーズの発表に合わせ、ポストプロセス処理によるゲーム映像のシャープネス化を実現する「Contrast Adaptive Sharpning」などを含む開発者用のオープンソースキット「Fidelity FX」を提供開始。さらにパフォーマンスに極力影響を与えずに疑似的な高解像度化が可能になるシャープネス処理「Image Sharpening」、入力遅延を30%前後も低減する「ANTI-LAG」などの新機能が「Radeon Software Adrenalin Edition」に実装されるという。
AMD 50周年を記念した499ドルの特別エディション「AMD Radeon RX 5700 XT 50th Anniversary Edition」は残念ながら北米、中国のみの限定販売品となる見込みだ |
ちなみに、「Radeon RX 5700 XT」のAMD 50周年を記念した499ドルの特別エディション「AMD Radeon RX 5700 XT 50th Anniversary Edition」が登場することはすでに周知の通りだが、販売についての詳細を尋ねられたSimon氏は「現状では北米市場、および中国市場でのみ販売を予定している」とコメント。残念ながら、日本国内で入手するのは難しそうだ。
ブリーフィング終了後にAMD本国の担当者と雑談をする機会があったので、念のため「日本でも7月7日にすべてのSKUが販売されるのか? 供給不足になる心配はないか?」と訊ねたところ、「供給は潤沢なので、上位モデルから下位モデルまで問題なく販売されるだろう」との回答を得た。
担当者は「第1世代Ryzenの発売当時はCPUやマザーボードの供給不足があったが、あの頃とはまったく状況が違う」と笑っていたが、実際にここ数年でAMDのシェアが大きく巻き返し、余裕が生まれたからこその発言でもあるだろう。特にRyzenに関しては、現時点で公表されているスペックやベンチマーク結果を見る限り、第1世代、第2世代を上回る売れ行きとなる可能性も大いにある。7月7日を楽しみに待ちたいところだ。
文: 松野 将太
AMD: https://www.amd.com/ja