2019.06.29 12:00 更新
2019.06.29 取材
旅する書評家がタブレット片手にKindle三昧。北村さんは今日もお気に入りの場所で、楽しく読書を楽しんでいます。
「面白法人カヤック」をご存知でしょうか?
ソーシャルゲーム事業・コミュニティ事業を主に展開しており、その社名の通り、面白いと思えることをどこまでも追求して実現させる、鎌倉に根付いた会社です。
最近だと、横浜駅直結「アソビル」の中に突如現れた「うんこミュージアム YOKOHAMA」が記憶に新しいところでしょう(ちょうど鎌倉滞在中に会期がかぶっていたのですが、勇気が出なかったため行けず)。
この面白法人カヤックのCEOである柳澤さんが書かれた「鎌倉資本主義」がとても良かったので、紹介いたします。
面白法人カヤック、初めて知った! という方は、ぜひ公式サイトを覗いてほしいです。あえて都内ではなく鎌倉にこだわっている部分も充分面白いですが、そこに込められた熱い思いも本書には丹念に綴られています。
面白法人カヤック公式サイト:https://www.kayac.com/
「まちの社員食堂」という取り組みもユニークなんですよ。こちらは、鎌倉にゆかりのある飲食店が毎週持ち回りで、食事を提供するというシステム。鎌倉で働いている人なら、誰でも利用することができます。
まちの社員食堂公式サイト:https://kamakura-shashoku.machino.co/
何をおいても、「面白法人カヤックがどんな会社なのか?」「どんな理念でもって活動しているのか?」について書かれた本書なので、取り上げたい箇所は山程あるのですが、私が最も共感したのは以下の一節です。
「何がしたいのか?」「何のために働くのか?」
就活を通ってきたみなさんならお分かりでしょう。やれ志望動機だ、やれ自己分析だと追い詰められて、本当に自分がしたいことは何なのかなんて、ゆっくり腰を落ち着けて考える暇もありませんでした。
ましてや、どこで・誰と働くかなんて二の次。考えたこともない。というよりも、仕事内容がはっきり決まってから、自然と付随してくるものであって、自分で選択するという価値観も希薄だったように思います。少なくとも、これまでの世の中では。
面白法人カヤックは、その順番をごっそりと変えてしまいました。
まず、どこで・誰と働くのか?
これが最も重要な要素で、何をやるかはその後決めればいいという考え方です。働く場所と共に進む仲間さえ決まれば、事業内容はどんなものであっても成功しやすいということなのでしょうか。
きっと、これまで長らく会社勤めをしてきた私たちにとっては、すぐには受け入れがたい価値観です(私もまだまだ会社員精神が抜けません)。
けれど、きっとこの「鎌倉資本主義」を読んでもらうことで、新しい考え方をインストールする一助になると思います。
面白法人カヤックでは、この3つの資本を柱とし、いかに「幸せ度」高く働いていくかを最重要視しています。
その上で、定められている経営理念はこちらです。
「つくる人を増やす」。
言葉を変えれば、発信側・生産者であれ、ということでしょうか。
世の中にはあらゆるコンテンツやエンタメが溢れています。スキマ時間なんてどんどんなくなっていき、たとえ1分でも2分でも暇さえあれば、スマホでサクッと空いた時間を埋められる時代です。
そんな現代では、我々は「作ってもらって」「受け取るだけの」受け身体質でいることに慣れきってしまいます。いかに「つくる人を増やす」か。発信し、生産する者を増やしていくのか。
仕事、という言葉にはネガティブなイメージがつきまといがちです。
ブラック企業やブラックバイトなんていう言葉もよく耳にするようになり、幸せに働く自分がどうしてもイメージできず、ふさぎ込んで引きこもってしまったり、最悪の場合は命を落としてしまうケースも多くなっています。
心からやりたい仕事ではないからでしょう。自分こそやりたいと名乗りを挙げたくなる仕事ではないからでしょう。
面白法人カヤックが理念としてかかげる3つの柱、「何を」「どこで」「誰と」やるのか。自分にとってのベストな選択を見失っているからでしょう。
心が浮き立つ仕事に出会えれば、人は自然と「つくる人」になれるはずなんです。
この「鎌倉資本主義」には、そのヒントが詰まっています。
北村有(きたむら・ゆう) 国内一人旅と読書が趣味なフリーライター・旅する書評家。 ブログ:https://kitayu.net Twitter:https://twitter.com/yuu_uu_ |
「鎌倉資本主義」 柳澤 大輔 (著) プレジデント社 (2018/11/30) 税込1,361円 (Kindle版) |
文: フリーライター・旅する書評家 北村 有