2019.07.14 00:00 更新
2019.07.14 取材
旅する書評家がタブレット片手にKindle三昧。北村さんは今日もお気に入りの場所で、楽しく読書を楽しんでいます。
思わず神様に頼んでしまいたくなるような1冊を、Kindleで見つけてしまいました。Fire HD8の画面越しにも伝わってくるマットな白表紙の上、威厳たっぷりに大書された「勉学術」の文字。白取春彦さんの書かれた、「大人のための勉強の仕方」入門書です。
実に耳が痛い一節です。私も一応大学は卒業している身ですが、4年の間に学習したことが今も残っているかといわれると、とても自信がありません。大人になってからの勉強法、独学法について知りたいあなたは、ぜひ入門書として手にとってみてください。
大人になってからも、勉強は続きます。
受験勉強の経験がある、または塾や予備校に通ったことのある方なら、共感していただけるはずです。勉強には、ある種の型やルートがありましたよね。とくに理系分野は、こう訊かれたらこの答え、この公式、というように、決まりきった形式が存在しました。
私たち受験生は、様々な参考書や問題集を駆使して「問題の型」を覚え、そのとおりに問題に答えればよかった。こう書くとやけに私が秀才だったかのように見えますが、点数は良くても、決して応用力が高かったわけではありません。
そう、学生の頃の勉強には正解がありました。ですが、大人になってからの勉強には、正解がないのです。
参考書で公式を覚え、問題集でひたすら答え合わせをしていた私たちは、いざ学校を卒業し社会に参加してみると、これまで繰り返してきたことには何の意味もなかったことに気付かされます。ですが、それ自体が勘違いだ、と白取さんは言います。
在学中でも、会社員になってからでも、独学の方法さえ知っていれば迷うことはない。むしろ、大人になってからの勉強や独学にこそ意味があるとしています。
大人になってからの勉強は、自由です。何を勉強してもいいし、勉強しないという選択もできる。仕事のため、自分自身の興味のため、ただの趣味……、きっかけは多様ですが、学生時代とくらべて違うのは、題材を自分で選ぶことができる一点に尽きます。
将来、自分ひとりの手で稼ぐために、調理師免許や宅建などの資格を取得する。アロマが好きだからアロマテラピー検定、ファッションが好きだからカラーコーディネーター検定など、趣味嗜好や好奇心のままに勉強する。
著者・白取さんが作中でこう書いているように、強制された学習ではなく、自ら臨んで得る学びなので、そもそもの吸収率が違ってきます。土台に興味関心があれば、どんなに難しく思える事柄でも、すっと頭に入ってくるものなのです。
必死で暗記し、試験のたびに取り出してきたものは、将来の道をつくる材料でしかなかったということかもしれません。
学生の頃の暗記型教育で、やりたいことや興味の持てる事柄が見つかった、という方ももちろんいることでしょう。ですが、大半の方はなんとなく学生生活を終え、必要に迫られて就職活動をし、今のポジションにいるのではないでしょうか。
心から、打ち込めるものを見つけたい。天職だと思える仕事に出会いたい。
そう思ったときに、注目するべきワードは、「なぜ?」です。
2~3歳ほどの子どもには、必ずといっていいほど「なぜなぜ期」と呼ばれる時期がやってくるそうです。子どもにとって、目に見えるもの・耳に聞こえるもの、五感でキャッチできるすべての事象が初体験だらけ。言葉も覚えてきて喋りたい盛りなことも相まって、「なぜ?」という疑問は尽きることがありません。
私たち大人にこそ、いま、この「なぜなぜ期」が必要なのではないでしょうか。
この「勉学術」を読んでからというもの、大学入学前にこの本に出会っていたどれだけ違っただろう、と無意味な考えにふけってしまいます。今すぐタイムスリップして、「勉学術」を読んでから大学に通うことができたなら……。
そんな後悔があるからこそ、同じ被害者をうまないために、街で暇そうにしている学生を見たら勧めてまわろうと誓った、旅する書評家・北村でした。
北村有(きたむら・ゆう) 国内一人旅と読書が趣味なフリーライター・旅する書評家。 ブログ:https://kitayu.net Twitter:https://twitter.com/yuu_uu_ |
「勉学術」 白取 晴彦 (著) ディスカヴァー・トゥエンティワン (2000/9/25) 税込1,026円 (Kindle版) |
文: フリーライター・旅する書評家 北村 有