2019.08.11 00:00 更新
2019.08.10 取材
PCやスマホ三昧の僕らに潤いの1冊・・・。旅する書評家・北村有さんが"これぞ”と思った本を紹介してくれます。週末くらいは液晶画面から離れて、ゆっくり読書を楽しみましょう。
6月の初頭から、都内に居を移しております。旅する書評家の北村です。
「旅する」という肩書きが虚構になりそうで常日頃びくびくしているのですが、年内いっぱいは都内を中心に、またふらふらした生活を送ろうかと目論んでおります。
そんな中で手にした今回の1冊は、「説明は速さで決まる」。
こちらは、コピーライターをされている中村圭さんの初著書。実は最近、コピーライターという仕事にますます興味津々で、とくに中村さんのツイートは毎日追いかけているレベルでした(念の為言っておくと、ストーカーではありません)。
Twitterは「140字で思いを伝える」文字の文化。
コピーライターさんは、まさに言葉を武器に伝えたいことを伝えたり、曲解を防ぐためにさまざまな伝え方を研究されている方たちなので、普段のツイートからも学べることがたくさんあります。
コピーライター・中村圭さんの書かれた「説明は速さで決まる」。端的な説明をするためにはどうすればいいのか?わかりにくい説明をしないためには、どう準備すればいいのか?
説明は速さで決まる ~ 一瞬で理解される「伝え方」の技術 ~ 著者:中村 圭 出版社:きずな出版 2019年5月21日発売(208ページ) 定価:1,620円(税込) 判型/仕様:単行本(ソフトカバー) ISBN:978-4866630755 |
テクニックの話はもちろんのこと、「速い説明」を心がけることで、相手へのおもてなしになるという本質的な部分にも言及されています。令和の時代、この新たなおもてなし術を心がけておけば、SNSでも一味ちがう自分を演出できるようになるかもしれません。
私は、完全に「説明が下手」な典型タイプです。
きちんと伝えようとすればするほど話が長くなっていき、結局何が言いたかったのか自分でもわからなくなる始末。これじゃ本当に言いたいことも言えないし、時間だけが無駄に浪費されていくしで、お互いに何もいいことはありません。
喋るよりも、言葉で書くほうが何倍も的確に気持ちを伝えられるので、仕事のやりとりはすべて文字ベースにしたいくらいです。
ですが、そんな私のような「説明ベタ典型タイプ」のための解決策が、すべてこの本に書いてありました。「説明は速さで決まる」というタイトルは、速い説明が苦手な私にとっては手にとるのが怖いものですが、今回思い切って読んでみましたよ。
そして、記述してあった解決策のあまりにもの端的さに、読んでいる最中から度肝を抜かれました。まさに「速い説明」が実践できている……。説得力と信頼性がこれほど担保されている本はそうそうないのではないでしょうか。
キーワードは、「箇条書き」です。そう、箇条書きですべてが解決してしまうのです。
中村さんいわく、説明が下手な人ほど話が長くなってしまう理由は、「自分でも何を言いたいのか&何を伝えたいのか」把握しきれていないから、なんですって。
そんなばかな? と思ってしまいますよね。自分のことなんだから、自分がよく分かっているに決まっている! と。ただ、騙されたと思ってまずは箇条書きを試してみてください。順番は気にせず、何を言いたいのか、何を伝えたいのか、要素をすべて頭の中から出すつもりで、ががががっと紙に書き出してみます(スマホのメモアプリでも大丈夫みたいですよ)。
そして、次に出した要素を「並べる」。本には書かれていませんでしたが、説明が長くなってしまう人ほど、この「出す」「並べる」という作業を並行してやろうとしがちなのかな、と思ってしまいました。まずは、要素をすべて出してから、適切な順番に並べる!
この順番が、何よりも大切なんですね。そして最後に、もうひとつ大切なステップがあるのですが……、それは、ぜひとも本を手にとってみてください!
徐々に、「お金」という価値観と「時間」という価値観が、並列に語られるようになってきました。時は金なりというように、時間もお金くらい大切なものだよね! という考え方です。
これはよく出される例ですが、みなさん、いきなり目の前の人からお金を盗ろうとは思いませんよね?家族、友人、知り合い、仕事関係の人などなど、普段接している人たちから無理やりお金を奪おうという考えにはならないはずです。
ただ、「時間」ならどうでしょう?ついつい軽い気持ちで、目の前の人の時間を奪ってしまっていることはないでしょうか。
たとえば、電話。これは今すぐにでも気軽に簡単に相手の時間を奪えるツールです。今の時代なら、指先ひとつで簡単にコールできてしまいます。
電話を受ける側は、「◯時のタイミングで電話します」とは伝えられていない場合がほとんど。作業途中やリラックスタイム中でもお構いなく、相手の時間に割って入って要件を伝えようとする行為ともいえますよね。
こう書いてしまうと、電話をすることがとてつもなく悪いことにみえてしまいますが、電話は相手の時間を奪う可能性があるツールだ、という意識はつねに持っていたほうが懸命かもしれません。
そう、令和時代の、相手を思いやるおもてなし。それは、「時間を奪わない」という意識なのです。そして、話や説明を端的に終わらせる技術を身につけることも、最先端のおもてなし術といえるでしょう。
ぜひ、あなたも新時代のおもてなし術をこの本で学んでみてください。
北村有(きたむら・ゆう) 国内一人旅と読書が趣味なフリーライター・旅する書評家。 ブログ:https://kitayu.net Twitter:https://twitter.com/yuu_uu_ |
文: フリーライター・旅する書評家 北村 有