2019.11.12 11:00 更新
2019.11.12 取材
株式会社毎日新聞社(本社:東京都千代田区)および株式会社サードウェーブ(本社:東京都千代田区)は11月7日(木)、高校生を対象とした「一般社団法人 全国高等学校eスポーツ連盟」(Japan High School Esports Federation/以下:JHSEF)の設立に関する記者会見を開催した。
JHSEFは、「eスポーツ」を通して高校生の成長を支援するのが目的の団体。登壇したJHSEF理事長の久保 公人氏は、eスポーツの普及が急速に進む一方、「まだまだ社会的な理解が進んでいない点も事実」とした上で、教育関係各方面、諸団体、公的機関、企業とも手を携え「高校生の課外活動としてのeスポーツを支えたい」とし、「さらに健全な発展と新しい文化の普及を図っていきたい」とその意義を語った。
続いて登壇したJHSEF理事の大浦 豊弘氏が、活動概要を解説。その中で、eスポーツが日本の新しい文化として社会に根付くことを目指しつつも、それらがもたらす教育的価値を啓発。eスポーツを通して高校生の成長に寄与し、社会で活躍する人材育成を支援する。
具体的には、教育的価値として、性別・障害の有無・身体能力などの違いを乗り越えチャレンジする「ユニバーサルスポーツとしての価値」、戦略/戦術を練る力・身体知を鍛える「頭脳と運動能力を向上させる価値」、チームコミュニケーションやグローバルコミュニケーションが養われる「コミュニケーションを向上させる価値」の3つを挙げた。
JHSEF理事長の久保 公人氏。文部科学省でスポーツ・青少年局長などを歴任。現在、尚美学園理事長・尚美学園大学学長を務める | JHSEF理事の大浦 豊弘氏はサードウェーブのeスポーツ部門を牽引している人物だ |
一方で、ゲーム依存症などネガティブな問題にも、真摯に真正面から取り組んでいくという。これを実現するための組織体制も発表され、窓口となる会員加盟促進やeスポーツ部支援、学校会員連携、広報活動などを担う「広報・普及部」、実証研究や調査、国内外研究機関との連携、海外教育eスポーツ団体との連携を担う「教育・医科学部」、そして全国高校eスポーツ選手権大会運営や部活動ルール策定、審判/コーチライセンス策定などを担う「競技部」の3部門が設置される。
中でもキモになるのが「教育・医科学部」だと語るのは、JHSEF理事の朝本 俊司氏。牧田総合病院の脳神経外科で、脊椎脊髄センター部長を務める医師であり、アイスホッケーのトップチームで担当医を務める現役のスポーツドクターでもある。
牧田総合病院の脳神経外科で脊椎脊髄センター部長を務める朝本 俊司氏 |
その朝本氏は「スポーツとeスポーツはまったく同じ」と断言。スポーツで直面する問題は、今後eスポーツが発展するうえにおいても必ず起こる問題として、医師の立場からそれらの課題に取り組んでいきたいという。具体的には「eスポーツはブレイン(脳)と反射神経が重要」との考えから、専門性の高いスポーツドクターを務める仲間の医師をも巻き込み、データを蓄積し考察。医療の面からからeスポーツに取り組む高校生を支援したいと述べた。
全国高等学校eスポーツ連盟の活動基本方針。「eスポーツ」を通して高校生の成長を支援。さまざまな課題に取り組んでいくとしている |
会見では、アメリカ・カリフォルニア州に本部を構え、北米を中心にeスポーツを通じた教育機会を開発・提供する北米教育eスポーツ連盟(North America Scholastic Esports Federation/以下:NASEF)との活動連携に向けた基本合意も行われた。
今回の合意は、教育的視点からeスポーツを通じた国際交流の推進が主たる目的。高校生の国際交流の環境を広げ、次世代の国際性を育む人材の育成にも取り組んで行くことが狙いだ。
北米教育eスポーツ連盟 副最高教育責任者 兼 クラブ活性化上級役員 Kevin T. Brown氏 |
NASEFの取り組みを紹介したのは、北米教育eスポーツ連盟 副最高教育責任者兼クラブ活性化上級役員 Kevin T. Brown氏。2018年4月では米国カリフォルニア州の高校28校38チームが加盟していたが、2019年11月時点では米国42州の450校以上500チーム、カナダ3州の8クラブが参加。加盟生徒数は4,500名以上と、急速に成長・拡大している点をアピールする。
加盟した高校生にはeスポーツ教育に関するカリキュラムを提供。さらにeスポーツが生徒の成長にどのような影響を与えているのかについて、医学的見地はもちろん、「クラブ活動」「カリキュラム」「(将来の)生徒キャリア」「コーチング」「競技」といった分野で支援を行っている。
NASEFが加盟している高校に提供しているカリキュラム。各学年に合わせた成長プログラムを構築。eスポーツをを通して学力向上やコミュニケーション能力の向上が確認できているという | さまざまな業界と連携する事で、学業とゲームを密接に結び付けることに成功。卒業後のキャリアについてもケアされている |
今回のJHSEFとの提携により、これらのノウハウを共有。「eスポーツを通して日米の懸け橋になる」と今後の発展に大いに期待していると言う。
文: エルミタージュ秋葉原編集部 Tawashi
株式会社サードウェーブ(ドスパラ): https://www.dospara.co.jp/
株式会社毎日新聞社: https://www.mainichi.co.jp/