2023.06.05 11:42 更新
2023.06.05 取材
Noctua(本社:オーストリア)は、COMPUTEX TAIPEI 2023に合わせて、140mmファンのプロトタイプ「Next-gen 140mm fan」を持ち込んだ。
ブースでは「Next-gen 140mm fan」の開発工程が細かく記載されていた |
Noctuaブランドの人気ファン「NF-A12x25」シリーズの流れをくむ製品で、その開発は実に2015年から開始されていたという。ただし、2015年から2020年まではプロトタイプの作成まではクリアできたものの、エンジニアのバリデーションテストや、熱耐性評価をクリアできず、初期フェーズの「Development phase」をこえることができなかった。
「Development phase」では、様々な素材を使いブレードの開発が行われている |
そしてようやく「Development phase」をクリアしたのが2021年10月のこと。その後、素材の選択や鋳型の設計、制作などを経て、20~50ユニットのプロトタイプを製造。そのプロトタイプを使い、バリデーションテストをクリアし、第2フェーズの「Tooling phase」が完了したのが2022年6年だった。
そして最終フェーズの「Final validation phase」では、100~300ユニットの小ロットの生産が行われ、3Dスキャンによるチェックや、製品寿命、パフォーマンス、ノイズなどの検証を実施。その後60~70℃という高温環境下での動作チェックや、実際にCPUクーラーに取り付けた状態でのテストを実施することで、製品品質を厳密にチェックしていく。
「Final validation phase」までいっても、問題が発生すれば「Tooling phase」の最初の段階まで戻ることもある |
製品の解説をしてくれたJakob氏によれば、「NF-A12x25」シリーズに比べてファンのサイズが大きいため「Next-gen 140mm fan」の開発は格段に難しいとのこと。実際「Final validation phase」の中でも最終段階に近いCPUクーラー装着時テストで、フレームの剛性に問題が確認され、「Tooling phase」の一番初めの段階である「Material selecion」からやり直し。最終的にはブレードと同じ、硬質な液晶ポリマー素材を採用することで、問題をクリアしたという。
フレームにも硬質な液晶ポリマー素材を採用する現在の評価サンプル。外観からはその違いは分からないが、実際にフレーム部分に触ると一般的なファンより硬くなっているのが確認できた |
現在の評価サンプルでは「Final validation phase」の最終テスト「MVT procedure」まで到達。約4ヶ月間にわたるテストが完了し、チェックに問題がなければ2023年12月にも大量生産が開始される。ただし、万が一問題が発生した場合、「Tooling phase」からやり直しになる可能性もあるため、まだまだ予断を許さない状態だと語っていた。
これだけのこだわりを持って開発が行われている分、その静音性は非常に優秀で、既存モデル「NF-A14」の1,300rpm(29.7dBA)に比べて、「Next-gen 140mm fan」の1,500rpm(26.8dBAp)のほうが3.1dBAも騒音値が低下している。
ファンのサイズが大きくなっているため、「NF-A12x25」シリーズの0.5mmは達成できなかったが、ブレードとフレームの隙間はわずか0.7mm |
またエアフローの損失を防ぐため、ブレードとフレームの隙間は0.7mmまで削減。さらにブレードへの風の流れを最適化する効果のある「Centrifugal Turbulator hub」や、乱流を抑える「Winglets」、静音効果のある「Flow Acceleration Channels」と呼ばれるブレード設計などを組み合わせることで、静圧・風量とも既存モデル「NF-A14」を大きく上回り、CPUクーラー、水冷用ラジエーター、ケースファンのいずれの用途でも優れたパフォーマンスを発揮することができる。
文: 編集部 池西 樹
Noctua: http://www.noctua.at/