2023.08.11 19:00 更新
2023.08.11 取材
夏休みにお贈りするコレオシ番外編は、おもしろ家電でお馴染みなサンコーの広報部長にして、200回以上のテレビ出演をこなすキャラクター“ekky(エッキー)”こと﨏晋介さん。今回は同氏が出版した「広報ekky流『伝わる』の本質」を手に、伝えるより大事な“伝わる”ことについて語ってもらうことに。
私を見て「あれ、テレビで見たことあるかも」という方もいらっしゃるでしょうか。たった一人の広報部門からスタートして、いまでは“ekky”というキャラクターで色んなテレビ番組に出させていただいては、サンコーの商品をお茶の間にご紹介しています。
そんな私が、このほど「広報ekky流『伝わる』の本質」という本を出版させてもらうことに。私自身の広報マンとしての経験はもちろん、これまでの生き方で学んだ“伝わる”ということの大切さを詰め込みました。
自身のニックネームに由来する“ekky”というキャラクターとして、サンコーの広報業務に奔走している﨏晋介さん。テレビ出演時は、オレンジのシャツにゆったりしたオーバーオール、蝶ネクタイというスタイル、そしてアルファベットのeとkを作る“ekky”ポーズでおなじみ |
いまでこそ広報マン兼サンコーの“キャラクター”として仕事をしている私ですが、実は小中学生の時代に不登校になって、引きこもっていた時期がありました。いじめられていたわけではないんですけど、とにかく人付き合いが苦手で、他人とどう話していいか分からなかったんです。
その頃はひたすら家でアニメを見てゲームをして・・・といった具合で、中学卒業後も進学に二度失敗。そんなどん底の時代にのめり込んだのが、いまとなっては懐かしいパソコン通信のチャットでした。色んな世代の人たちとチャットで会話をして、その中には当然ながら仕事をしている人たちもいる。
これまでほとんど他人と関わってこなかった自分には、そうした中で会話するのは新鮮な経験でした。このパソコン通信が、自分にとってコミュニケーションの原点になっているのは間違いありません。
現在の明るいキャラクターからは想像できない、引きこもりの少年時代を過ごしていたという同氏。急成長するサンコーの立役者としての“ekky”の原点は、そんなどん底の時代にあった |
そんな風に毎日チャットしている内に、目立って上達していったのがタイピングの速さ。その技術を活かせないかと考えて、商業系の専門学校へ進学したのが人生の転機でした。2年遅れの高校生活で、周りは全員2歳年下。そうなると「自分がお手本にならなきゃ」という気持ちにもなるわけで、それ以降は無遅刻無欠席を貫くことになります。「ここで一日休むと、また休みグセがついてこのまま終わってしまう」という焦りもあって、とにかく自分を変えたかったんです。
その頃には(チャットの経験もあって)ずっと苦手だった人付き合いにも、抵抗はなくなっていましたね。そして何より、コミュニケーションをとる際に「相手の目線に立って考えること」を意識するようになりました。パソコン通信は文字だけで相手が見えませんから、相手がどんな人でどういう感情を持っているのか、イメージを膨らませる必要があります。それがリアルなコミュニケーションの訓練にもなっていたわけですね。
“風通しのいい文章”を目指したという本著。読みやすさを重視した内容で、スンナリ頭に入ってくる |
その後大学を卒業してしばらく営業マンとして働くことになるんですが、そこでも「相手の目線で考える」ことがすごく役に立ちました。車のセールスマンをやっていた時は、意外性をもってもらおうと、車を売るのにわざわざ自転車で駆け回って営業したり。ビジネスの相手に面白いと思ってもらう、そしてそれが売り上げにも繋がっていくという経験は、いまの広報の仕事にも生きています。
そもそもこのekkyというキャラクターも、メディアやタレントさん、テレビの視聴者さんとの関わりから、徐々に出来上がっていったものです。実際にテレビで取り上げてもらうには、どう使いたいと思ってもらえるか、その時にどんな能力を持っていれば喜ばれるのか。まずは伝えたい相手が受け入れてくれる必要があるというわけですね。
当初はサンコーにも営業マンとして入社。過去にテレビショッピングなどを担当した経験をもとにたった一人の広報部を立ち上げ、テレビ出演の増加とともにekkyのキャラが出来上がっていくことになる |
ちなみに私のやっている「広報」という仕事には、お互いの関係を高める、良好な関係を築くという意味合いがあるわけですが、それも双方のコミュニケーションがあってこそ。ただ目の前の商品を買ってほしいがために自分のメリットを喋るだけでは、いくら口がうまくても相手の心には響かないですよね。相手の目線から自分ごととして捉えること、それを想像することが単に伝えることでなく“伝わる”ということだと思うんですよ。
そのためにも、私は相手に伝える際に「必ずしも100%にこだわらない」方がいいと考えています。70%から100%に仕上げるのは大変な苦労も時間もいりますが、そもそも伝えたいことの軸(あるいは相手が求めていること)は70%でほぼ出来上がっているはず。それなら70%でいいから早く相手に届けて、残りの時間で相手とすり合わせた方がいいんじゃないか。そうした方がもっとよく“伝わる”んじゃないか、というわけです。
文中には、奥さんが手がけた手書きのイラスト入り。サンコー商品の情報や動画などにアクセスできるQRコードも記載されている |
この本も、そうした「70%的な思考」がベースになっています。文章の中には難しい言い回しや漢字、横文字は一切入れていません。いわゆる“広報本”として書いた本ではありますが、中身は中学生でもサクサク読めるような内容です。
だから学生さんにはぜひ読んでもらいたいですし、特に私の少年時代のこともありますから、不登校や引きこもりに悩んでいる人にこそ手にとってほしい。相手の目線で考えることで見方が変わって、少しでも人間関係や人生の楽しさのヒントにしてもらいたいという思いがあります。
そしてそれと同じくらい、そうしたお子さんをもつ親御さんにも読んでもらいたいですね。私の場合、登校拒否になった際に親から登校を強制されることはなく、最後まで大切に見守ってもらいました。
そうした中で出会ったのが、人付き合いの楽しさを教えてくれたパソコン通信。さらにはゲームやアニメ漬けの生活がヒントになって、経験値を積んでレベルアップして、色んなスキルを身につけていく・・・という風に、自分を主人公に置き換えて変わることができました。どん底の時代ではありましたけど、全部いまの自分の糧になっているというわけですね。
子供が興味をもつ何かに触れさせてあげること、そして何より信頼してるよ、と伝えてあげること。そうすることで、いずれ自分自身の考えでうまくいくようになる、ということが“伝わる”といいなぁと思います。
文: 編集部 絵踏 一
サンコー株式会社: https://www.thanko.jp/