2023.12.18 21:50 更新
2023.12.18 取材
インテル株式会社(本社:東京都千代田区)は2023年12月18日、AI機能を搭載した新製品、および「AI Everywhere」に関する記者発表会を開催した。
昨年末から急速に普及したAIだが、現在はクラウドサーバー上でAI演算処理を行うのが一般的だ。ただし、データ通信に伴う遅延やコスト、さらにはデータのプライバシーやセキュリティ上の問題もあることから、クラウドサーバーを使うことに抵抗のある企業は多いという。
そこでIntelでは、クラウドだけでなく、エッジサーバーやクライアントPCなどすべてのプラットフォームでAIが処理できるようにする「AI Everywhere」を提唱している。これにより、パブリックなデータや大規模な推論はクラウドで、機密性の高いデータや小規模な推論はエッジサーバーやクライアントPCで実行できるようになり、全てのユーザーがAIの恩恵を受けることができるという。
これまでクライアントPCでは限定的な活用だったAI機能だが、今後はあらゆる作業でAI機能が活用されるようになるだろうとのこと |
実際、米ガートナーの予測レポートによれば「2025年までに企業が管理するデータの50%以上がクラウドやデータセンターを使わずに生成・処理されるようになる」としており、今後クライアントPCなどローカルでのAIの運用は広まっていくことだろう。
そんなクライアントPCでの効率的なAI処理を実現するため、先日14日に発表されたのが「Core Ultra」だ。Intelのクライアント向けプロセッサとしては初めてAIエンジン「Neural Processing Unit」(NPU)が統合され、低消費電力でAI処理が可能。さらに最大8基のXe-Coreを内蔵するIntel Arc GPUも内蔵され、並列処理性能が求められる重い処理も高速に実行することができる。
「Core Ultra」では、NPUに注目が集まりがちだが、実際にはCPU、GPU、NPUそれぞれに最適的なAI処理を割り振ることで優れたパフォーマンスと高い電力効率を実現している |
記者発表会では、実際にCore Ultraを搭載したノートPCで生成系AI処理のデモも行われた |
またIntel 4プロセスで製造される「Compute Tile」、TSMC 5Nで製造される「GPU Tile」、TSMC 6Nで製造される「SOC Tile」「GPU Tile」の4つのタイルで構成されるチップレット技術を採用しているのも特徴。ちなみに4つのタイルは、22nmプロセス製造された「Baseタイル」上に、3Dパッケージ技術「Foveros」を使用して実装されている。
Core Ultraの「Compute Tile」では、最先端のIntel 4Nプロセスを使用。さらに次世代のIntel 3は2024年ラウンチ予定のSierra Forestで採用が予定されている他、Intel 20AやIntel 18Aも順調に開発が進んでいるとのこと |
そしてCPUコアの構成もパフォーマンスを重視したPコア、効率を重視したEコアに加えて、「SOC Tile」内により省電力なLP Eコアが新たに追加。各コアに処理を割り振るスレッド・ディレクターの動作も、従来のPコア→Eコアの順に処理を割り当てる方式から、LP Eコア→Eコア→Pコアと割り振る方式に変更することで、電力効率が大幅に向上しているという。
Core UltraではAI処理以外の性能も向上。さらにLP Eコアやスレッド・ディレクターの改善によって電力効率が大幅に向上している |
なおIntelではCore Ultraを皮切りにPCのAI対応を進め、2025年までには1億台以上のAI搭載PCを導入する予定。また100社以上と協力し、300種類を超えるAIアプリケーションを用意していきたいとしている。
記者発表会ではデータセンター向け新CPU「第5世代Xeonスケーラブル・プロセッサ」についても解説が行われた。基本的なアーキテクチャは「第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサ」から変更はないが、最大コア数は60コアから64コアに、メモリはDDR5-4800からDDR5-5600に、キャッシュ容量は約3倍の320MBへと拡張されている。
タイルの構成が4タイルから2タイルに変更されたことで、レイテンシも低減しているという |
これにより「第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサ」との比較では、汎用的なコンピューティング処理性能は最大1.21倍、AI推論処理性能は最大1.42倍、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)処理性能は最大1.4倍、ネットワークのスループット処理性能は最大1.7倍に向上している他、タイルの構成が4タイル構成から2タイル構成に変更されたことで、レイテンシも低減しているとのこと。
さらにコアとSoC間の電力効率改善や、アイドル時の電力効率のチューニングによって、ワットパフォーマンスは1.34倍、アイドル時の消費電力に至っては100Wも低下しており、TCOを削減する効果も期待できる。ちなみに後方互換性が維持されているため、すでに「第4世代Xeonスケーラブル・プロセッサ」を使用しているサーバーならCPUを載せ替えるだけでアップグレードができる点も強調していた。
その他、AIアクセラレータの新製品として「Gaudi 3 AIアクセラレータ」が2024年に登場予定。また記者会見では、デジタル人材育成やグローバルサプライチェーンの強化、ファウンダリー事業の拡大などにも積極的に取り組んでいることが言及された。
文: 編集部 池西 樹
インテル株式会社: https://www.intel.co.jp/