2024.01.25 21:20 更新
2024.01.25 取材
日本シーゲイト株式会社(本社:東京都品川区)は2024年1月25日、都内某所にて記者説明会を開催。30TBを超える大容量HDDを可能にする「Mozaic 3+プラットフォーム」について解説を行った。
日本シーゲイト代表取締役社長新妻 太氏 |
発表会の冒頭では日本シーゲイト代表取締役社長の新妻 太氏が登壇し、まずは「Mozaic 3+プラットフォーム」を開発するに至った経緯について語った。
昨年以来急速に普及を進むAIだが、有効に活用するためには大量のデータが必要になるため、これまで以上に保存領域の確保が重要になっている。とは言え、データセンターを新たに建設するには平均して10~15億ドルもの莫大な建設費が掛かることから現実的には難しい。さらに昨今の電力コストの上昇もあり、できる限り既存の施設を活かしながらストレージの容量だけを効率よく増やしていく必要がある。
そうなると、データセンターで主に使用されているHDDの大容量化が急務になるわけだが、プラッタ枚数を増やす方法では、ヘッドやプラッタ、コントローラが追加されるため、HDD自体の値段が高くなってしまう。さらに消費電力や、二酸化炭素排出量が増加するというデメリットがある。
そこでSeagateでは、熱アシスト技術(HAMR)をベースにした「Mozaic 3+プラットフォーム」を開発し、プラッタあたりの記録密度を高める戦略をとることにした。これにより、ヘッドやプラッタ、コントローラは従来通り(もしくはそれ以下)に抑えられる他、消費電力や二酸化炭素排出量の問題も解決することができる。
加えて、「Mozaic 3+プラットフォーム」を利用することで、垂直磁気記録方式(PMR)方式で伸び悩んでいたHDD 1台あたりの容量も飛躍的に増加することができ、順調であれば今後4年以内に容量を2倍に引き上げることができるという。
PMR方式では(スライド上ではディスクとなっているが)プラッタあたりの容量が2倍になるのに9年掛かったのに対して、「Mozaic 3+プラットフォーム」では4年以内に2倍になる予定 |
現在「Mozaic 3+プラットフォーム」に対応したHDDは、容量3TBのプラッタを10枚搭載した「Exos X 30TB」が出荷されているが、現状データセンターで最も一般的な16TB HDDをこちらの製品に置き換えることで、専有面積を変えずに容量を1.87倍に拡張できる。
さらに1TBあたりの消費電力は40%も改善でき、総所有コスト(TCO)を引き下げる効果も期待できるとのこと。なお新妻氏によれば現在「Mozaic 3+プラットフォーム」はデータセンター向けのHDDのみに採用されているが、今後はコンシューマ向けの製品にも展開される予定。
すでにプラッタあたり4TBと5TBの製品はロードマップに含まれており、それぞれ名称は「Mozaic 4+プラットフォーム」と「Mozaic 5+プラットフォーム」になる予定 |
プラッタ容量も順次拡張され、すでに4TBと5TBはロードマップに含まれており、ラボでは8TBや10TBの研究も進められているという。
技術的な解説を行ったSeagate Research副社長Ed Gage氏はオンラインで参加 |
発表会では、オンラインで参加したSeagate Research副社長Ed Gage氏による「Mozaic 3+プラットフォーム」の解説も行われた。PMR方式では、磁気保持力が弱く、記録面積の微細化が頭打ちになっていたが、「Mozaic 3+プラットフォーム」では従来の10倍以上の保持力を備えた「超格子プラチナ合金メディア」を採用することで、記録面積のさらなる微細化を可能にしている。
「Mozaic 3+プラットフォーム」の構成図。単純な熱アシスト技術ではなく、材質やレーザー、コントローラまですべてを刷新した新プラットフォームになる |
また磁気保持力が高く、安定した構造の「超格子プラチナ合金メディア」にデータを書き込むため、磁気特性を一時的に変化させる最新の「ナノフォトニック・レーザー」等で構成される「プラズモニックライター」や、微細な記録領域を正確に読み取ることができる「第7世代スピントロニック・リーダー」、回転速度やヘッダの動きなどを高精度に処理する「12nm統合コントローラ」など、すべてを刷新することで現行最高峰の高密度化を実現している。
文: 編集部 池西 樹
日本シーゲイト株式会社: https://www.seagate.com/jp/ja/