2024.02.25 00:01 更新
秋葉原の電気街と同じ歴史を刻んできた、秋葉原の古さと新しさが同居する東京ラジオデパートを廻る「東京ラジオデパート探訪」。第1回は、古き良き秋葉原の空気が一際濃厚に感じる3階にて、特殊電子部品を扱う老舗店の「斉藤電気商会」にお邪魔します。
「斉藤電気商会」の歴史は古く、1950年に最初の東京ラジオデパートが完成した際に出店した約33店舗の内の一つで、いわばローンチメンバー。露天商時代に遡ればさらに来歴は古いわけですが、東京ラジオデパートの開店当初は米軍放出の電子部品などを扱っていたそうです。ラジオを含む通信機用の部品がメインだったとか。
そして現在の店頭では、主に通信機器向けの電子部品、同軸コネクタなどを販売。そのほかセラミックコンデンサやコアなど、何十年と売れ続けている部品たちが並んでいる売り場は実に壮観です。無線機などに使われる、いまや入手困難なバリコン(可変コンデンサ)が店頭で買える数少ない場所でもあります。
その中でも圧倒的な品揃えを誇っているのが、軽く百数十種類はあるという同軸コネクタ。秋葉原はもちろんネットでもノーブランドの格安品が手に入る部品ではありますが、このお店で販売しているのはすべて一流メーカーによる正規品です。
この手の同軸コネクタが使われる通信分野は機材が恐ろしく高価で、製造の甘さや微妙なズレが生じかねないノーブランド品やコピー品を使った場合、ネジ山をナメるなどして機材側を壊してしまうことも。そうした心配がない信頼できる正規品が、いつでもどんな規格でも買えるのがこのお店というわけですね。
ちなみに一口に同軸コネクタと言っても、使われなくなる規格がある一方で新しい規格も年々増えているとか。比較的新しいものでは、マイクロ波に使われる小さなSMA型コネクタなども販売されています。
今回お店をご案内いただいた牧野社長は同店の2代目で、秋葉原でこの道60年という大ベテランです。早速「このお店で過去イチ売れた物は?」と聞いたところ、「そりゃあ分かんないね、種類によってメーカーにも得手不得手があるし。メーカーの優劣みたいな話もしないことにしてるんだよ」というカラッとしたお返事。
そう言いつつも(ベストセラーとはややズレるかもですが)同店のイチオシを聞いたところ、「やっぱりウチならトーコネ(旧東洋コネクター)の同軸コネクタだろうね」と教えてもらいました。同社製の同軸コネクタは一通りが揃っているとのことで、取り扱う種類の多さでは秋葉原随一。品質が高く価格とのバランスも取れているのが人気の理由だそうです。
なお“謎の売れ筋”については、「それが分かればもっと儲かってるよ(笑)」とのこと。用途別に規格化された正規品を取り扱うお店だけに、売れる理由に謎はないのかもしれません。
文: 編集部 絵踏 一
株式会社 斉藤電気商会(東京ラジオデパート): https://www.tokyoradiodepart.co.jp/tenpo/view/52