2024.03.09 10:00 更新
2024.03.09 取材
秋葉原の電気街と同じ歴史を刻んできた、秋葉原の古さと新しさが同居する東京ラジオデパートを廻る「東京ラジオデパート探訪」。第2回は、やはり専門性の高い個性的なお店が並ぶ2階にて、アナログオーディオ向けの海外製電子部品を扱う「桜屋電機店」にお邪魔します。
「桜屋電機店」も1950年の東京ラジオデパート開店時から存在するお店で、露天商の頃から数えて70年以上営業している老舗。最初は1階の入り口にお店を構えており、往時は非正規の流通品など主に無線機向けの電子部品を扱っていたとか。
その後、無線機とは基本的な仕組みが似ていることから、オーディオ向けの電子部品を手広く扱うことに。さらに共通の部品が流用できるギター用の機材を自作する人たちが集まるようになり、いまではギター用のエフェクターやアンプの部品を扱うお店としても知られています。
真空管アンプやポタアン用の部品を探す人たちに混じって、取材中もギターケースを背負った人を多く見かけました。
店頭に並んでいるのは、8割が輸入品というオーディオ電子部品の数々。「当時はどこも扱っていなかった」という理由が海外メーカーの製品を扱いはじめたキッカケだそうですが、その品揃えはいまでも国内最大級の規模を誇ります。
ヨーロッパやアメリカ、ロシアなどから仕入れた製品は、抵抗やコンデンサ、Pot、線材など多種多様。抵抗は抵抗値の違いで数えきれないほどのラインナップがあり、店内に仕舞っている物も合わせれば数万種類におよぶ膨大な数があるとか。コンデンサも軽く数百種類はあろうかという品揃え、さらに海外でも手に入らないようなビンテージ品も豊富に扱っています。
ビンテージ品の中には、マニアが見たら狂喜するようなシロモノから、そのままお見せできない貴重なものまで様々 |
その中にはもとは軍用に使われていたものなどもあり、まさに組み合わせは無限大と言ったところ。アナログオーディオの愛好家にとってはオアシスのようなお店ですが、「蟻地獄みたいなもんですよ(笑)」とはご店主の本間さんの言です。
そのほか、同店オリジナルでエフェクターなどのキットも販売。エフェクターやアンプ用のアルミケースも名物で、店頭にも様々なサイズやカラーのケース類が並んでいます。これらももれなく海外メーカー製、異なるアルミ材による硬さの違い、用途別で色や大きさを使い分けるなどのニーズに幅広く対応できるラインナップが自慢です。
ご店主の本間さんに「このお店で過去イチ売れた物は?」と聞いたところ、(あまりに多すぎるため)個別の部品としては不明ながら「ウチで一番売れているのは、間違いなくPot類っすね」とのこと。ボリュームなどダイヤル部分に使われている“中身”の部品です。エフェクターにしろアンプにしろ、ボリュームや数値をいじる類のアナログ機器には何にでも使われることから、おのずと必要とされる個数も多くなる模様。
実際に店頭でも、複数まとめ買いされる場合が珍しくないPot類。シャフトの径や長さの違いはもちろん、同時に異なる複数の数値を調整できる2連タイプなどもあるようです。
そして“謎の売れ筋”を聞いてすぐに出てきたのが、一見すると何の変哲もないスポンジと、これまた謎の黒いフタ。まずスポンジの方ですが、エフェクターのケース内に入れるクッションとして根強い需要があるのだとか。その正体は陶器製の抵抗を仕入れた際に入っている緩衝材らしく、ちょうどいいサイズなので3Mの両面テープを貼って商品化したらウケた、という背景があるようです。
そして黒い方は、エフェクターなどの電源にも使われる9V形電池用のフタ。保存時の腐食防止用なんでしょうか、「なぜか分からんけど売れてるんです」(本間さん)と言うから、まさに謎の売れ筋ですね。
そして意外なところでは、USBポートからのノイズ混入を防ぐ効果があるされる「USBターミネーター」も。いわく「基本はオカルトだと思ってるし、売るときもそう言ってるんですけど・・・なぜか売れるんですよね(笑)」とのこと。オーディオ沼の深さを感じるアイテムの一つな気がします。
※それぞれの画像に写っている価格は取材時点のものであり、常に変動していることにご注意ください。
文: 編集部 絵踏 一
桜屋電機店: https://www.sakurayadenkiten.com/