2024.04.27 08:00 更新
2024.04.27 取材
秋葉原の電気街と同じ歴史を刻んできた、秋葉原の古さと新しさが同居する東京ラジオデパートを廻る「東京ラジオデパート探訪」。第5回は、大小様々なケースがうず高く積まれた売り場が印象的な、2階のケース・ラック専門店「エスエス無線」にお邪魔します。
ここ東京ラジオデパートの創業は戦後間もない1950年まで遡るわけですが、この「エスエス無線」もその当時から長く営業を続けている老舗店の一つ。店名に“無線”が入っているように、当初は無線関連の機器やスピーカーなどを扱うお店だったそうです。
ところが50年ほど前に大胆に業態転換、現在まで続く各種ケース類を扱う専門店に衣替えしたという歴史があるとのこと。ちなみに「いったい何に使うケースを売っているのかな?」と思った人(エルミタ取材班含む)は、ちょっと勘違いしているかもしれません。
お店に並んでいるのは、ありとあらゆる形状、サイズ、デザインのケースたち。オーディオアンプに使うようなアルミケースがあれば、リモコンのフレームに使われるような小さいプラスチック製のもの、さらに防水処理を施した屋外用の電工ボックスに至るまで・・・なんとも圧倒されるほどの豊富なバリエーションがあります。
店長の坂井さんが「お客さんが何を入れたいかによりますね」と語るように、基本的に特定の用途に限定したケースではなく、あくまでユーザーのニーズ次第。自身が何を作りたくてどれくらいのサイズが必要なのか、どんな素材にしたいか、防水の有無は?といった欲しい要素を組み合わせて“理想のハコ”を選ぶというわけですね。
ちなみにケース類はタカチ電機工業やリード、ラックは摂津金属など、取り扱っているのはどれも信頼性と品質に定評のある日本メーカー製品。アイテム数は店頭で値札が付いているものだけで1,500点以上に及ぶほか、微妙なサイズや色違いなど表に出していないバリエーションを含めれば、実に数万点ものラインナップがあるそうです。
そして「直接触って確かめられる実物をここまで出しているのは、ウチくらいでしょう」とは坂井さんの談で、見る人を圧倒させる展示の多さが他にない魅力。アキバで唯一無二なのはもちろん、店頭で実際に手に取ることができるケース類の数では、日本でも一番かもしれません。
坂井さんのイチオシは、昔ながらのシンプルな汎用アルミケース。手動で穴が開けられる加工のしやすさがポイントで、サイズのバリエーションも多い |
サーバー用など大型のラックが置かれた売り場には、元は専門書を扱う書店があったとか |
なおケースやラック以外では、アルミや銅、真鍮、リン青銅などの金属材料も主要な取り扱い商品。板はケース内に敷いたり仕切りなどに多用されるほか、ロボットを作る素材として買っていく人も。円柱状のアングルはシャフトに使われたりなど、これまたユーザー次第と言ったところ。素材屋から直接仕入れているとのことで、だいぶ安く購入できるのもよく売れる理由のようですね。
端子や取っ手、インシュレータなどケースに組み合わせる周辺部材も扱っている |
「このお店で過去イチ売れた物は?」というお馴染みの質問を坂井さんにぶつけたところ、個人向けではやはりオーディオアンプ用途のケースが売れるとのこと。この東京ラジオデパートには、真空管のお店やオーディオ電子部品の専門店などオーディオに関わるショップが多いことから、なるほど納得と言ったところ。重たいトランスなども収める必要があるため、しっかりした構造のアルミケースが好まれているそうです。
ちなみに純粋な数なら法人案件ということになるわけですが、そういう意味では無線アクセスポイント用にかなりの数を受注しているという、タカチ製のプラケースが該当。言われてみれば、アクセスポイントやルーターの筐体も“ケース”の一種なわけで、身の回りにもエスエス無線扱いのケースが使われたネットワーク機器があるのかもしれません。
なお「謎の売れ筋というのはちょっと浮かびません」とのことですが・・・数あるケースの中で、坂井さんも「具体的に何に使うのか分からない」と首をひねる1cm大の超小型ケースが気になりました。このお店で扱っている最も小さなケースで、まさかこんなサイズまであるとは、とビックリ。「ひょっとすると小さいマイクなどを仕込んだりするのかも・・・」という話もあるようですが、はてさて。
文: 編集部 絵踏 一
有限会社 エスエス無線: https://www.ss-musen.co.jp/