2024.06.26 19:18 更新
2024.06.26 取材
インテル株式会社(本社:東京都千代田区)は2024年6月26日、プレス向けセミナー「Intel Tech-Talk」を開催。2024年第3四半期に登場予定の最新CPU「Lunar Lake」などの技術解説を行った。
Lunar Lakeの解説を担当した安生氏によれば、Meteor Lakeの後継ではなく、上位モデルとして考えているとのこと |
COMPUTEX TAIPEI 2024に合わせて発表されたLunar Lakeだが、従来のMeteor Lakeと同じ3Dチップレット技術「Foveros」によるタイル構造を採用。ただし、タイルの構成はCPU、GPU、NPUなどが実装された「コンピュートタイル」、チップセットの機能を備えた「プラットフォーム・コントローラ・タイル」、ダミーの「フィラータイル」の3つの構成へと大きく変更された。
さらにCPU、GPU、NPUのそれぞれのコアについてはいずれもアーキテクチャを刷新。またIntelとしては初めてメモリをパッケージ上に統合しているのも大きな特徴。これにより消費電力は最大40%も削減できる他、基板上の実装面積は最大250mm²削減できるという。
PコアはMeteor LakeのRedwood Coveから、より高効率で、面積当たりのパフォーマンスにも優れる最新コアLion Coveへとアップグレード。Redwood Coveから分岐予測の深度は8倍に、実行ポートも12ポートから18ポートに拡張され、並列処理の効率がさらに向上している。これに伴いは効率が悪かったハイパースレッディング機能は省略されている。
その他、キャッシュのミスヒットを少なくするためメモリサブシステムの強化や、より細かいクロックの制御ができるようクロックの変動幅も100Hzごとから16.67MHzごとに変更されている。
こういった改良によってRedwood CoveからIPCは最大14%、ワットパフォーマンスも最大18%と大幅に向上している。
またMeteor LakeではSoCタイルの中に低電圧Eコアが、コンピュートタイルの中にEコアが実装されていたが、Lunar Lakeではこれらを一つにまとめるため、電力効率をさらに高めたSkymontと呼ばれるEコアを採用する。
Skymontでは分岐予測機能が改良された他、ディスパッチ・ポートも17から26に増加し、並列処理時の効率が改善。またL2キャッシュが2MBから4MBへと2倍に拡張されている。これらの改良により、シングルスレッド性能は最大1.68倍、マルチスレッド時の性能は4倍、消費電力は最大3分の1にまで低下しているとのこと。
さらにそれぞれのコアに処理を振り分ける「インテル スレッド・ディレクター」の機能も強化され、タスクに合わせてより最適なCPUに処理を割り振ることができるようになった。
新しい「インテル スレッド・ディレクター」では、負荷が高い場合でもEコアのみで処理するような設定も可能。Teamsなどのミーティング系アプリケーションをより高効率に動作させることができる |
そして内蔵GPUもこれまでのIntel Xeから新世代のIntel Xe 2にアップグレード。行列演算エンジンXMXが追加され、L2キャッシュも8MBに増量されたことで、グラフィックス性能は約1.5倍に向上している。またAI処理性能は67TOPSに達し、かなり重い処理もこなすことができる。
AI処理というとNPUばかり注目されがちだが、実際にはGPUを使用するアプリケーションが最も多いとのこと。そのためIntelでは、Lunar LakeでGPUも大幅に強化した |
そしてAIワークロード向けのNPUも第3世代から第4世代へと変更されている。ニューラル・コンピュート・エンジンが2基から6基に、SHAVE DSPは4基から12基に拡張され、メモリ帯域も2倍に広がっている。さらに内部演算処理の改良などによって演算性能は11TOPSから48TOPSへと4倍以上も向上し、Copilot+ PCにも対応できるようになった。
なお今回の発表ではLunar Lakeの詳細なラインナップや動作クロックなどのスペックについての情報はなかった。2024年第3四半期に登場予定ということなので、今後の続報に期待したい。
そしてセミナーではIntel Xeon 6プロセッサについても解説が行われた。第1弾モデルはTDP500Wの「Xeon 6 6900」と350Wの「Xeon 6 6700」の2シリーズで、それぞれモデリングやCAE、生成系AI、ディープラーニング、推論処理などに最適なPコアモデルと、クラウドネイティブアプリケーションやコンシューマ向けのデジタルサービスなどに最適なEコアモデルが用意される。
「Xeon 6 6900」「Xeon 6 6700」ともに、PコアモデルとEコアモデルがラインナップ |
Xeon 6 6900とXeon 6 6700ではTDPが異なるため互換性がないものの、Xeon 6 6900のPコアモデルとEコアモデル、Xeon 6700のPコアモデルとEコアモデルはプラットフォームの互換性が維持されており、ユーザーは用途に合わせて柔軟な選択ができる。なお年内に登場するのはEコアモデルのXeon 6 6700Eと、PコアモデルのXeon 6 6900Pで、来年にはPコアモデルのXeon 6 6700PとEコアモデルのXeon 6 6900Eもリリースされる。さらにスペックやプラットフォームは未定ながらXeon 6 6500P、Xeon 6 6300P、Xeon 6 Socも予定されている。
またNVIDIA H100対抗のAIアクセラレータ「Gaudi 3」についても解説されていたので、スライドで簡単に紹介しておこう。
AI学習処理専用に設計されたアクセラレータ「Gaudi 3」。NVIDIA H100に比べてGPT3-175Bの学習処理は最大40%、LLAMA2-70Bの推論処理は最大15%高速とのこと |
文: 編集部 池西 樹
インテル株式会社: https://www.intel.co.jp/