おサイフに合った掘り出し物が見つかる真空管の専門店
秋葉原の電気街と同じ歴史を刻んできた、秋葉原の古さと新しさが同居する東京ラジオデパートを廻る「東京ラジオデパート探訪」。第11回は、3階の片隅に店舗を構える真空管の人気店「サンエイ電機」にお邪魔します。
サンエイ電機の創業は、東京ラジオデパートが現在のビルに建て替えられた約50年前まで遡ります。かつては半導体などをメインに扱っていた頃もあったところ、「先代が時代の最先端を追っかけていくのに疲れちゃって、それ以来もっぱら真空管を売るようになったんですよ」とは、約14年ほど前にお店を引き継いだ2代目の柿沼さんの談。
決して広くはない店内ですが、売り場には全部で数千点以上に上る国内外の真空管がズラリ。倉庫には「もううんざりするくらいある(笑)」(柿沼さん)というほど、この数十倍もの在庫を抱えているというから驚きです。
その売場を眺めてみると、お高いイメージのある真空管ながら1万円以下のものがほとんどを占めることに気が付きます。安いものでは300円からという球もあり、営業日には掘り出し物を目当てにオーディオマニアが群がる光景が日常。もちろんペアで100万円以上するような“銘球”もあるわけですが、そうしたメジャーな球ばかりが真空管のすべてではない、というのが柿沼さんのモットーだそうです。
「真空管は決して格調高いだけの世界じゃないんですよ」という同氏がオススメするのは、お手頃でリーズナブルな球。メジャーな球は比較的高価になりがちな一方で、スペックが同等で代替できる互換品があったり、アレンジすることで使用できる球もあるなど、そうした場合は元の球の1/10ほどで買えることも少なくありません。
もちろん互換品や同型番の真空管でも、時代や製造素材の違いで音に違いが出る場合があるあたりは、“沼の深さ”を感じる話。迷ったら「おサイフに合うものを提案しますよ」と語る柿沼さんに聞いてみましょう。
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価格は全然違うものの、代替に使えるという球も多数。ただし同型番でも素材の違いで音の出方が変わるモノもある
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こちらの球のように、日本人よりも外国人向けに人気というモノも
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真空管に次いで取り扱いが多いのはコンデンサ。真空管のお店とあって、管球アンプに好まれるチューブラ型のコンデンサが多いようです。PCパーツの世界では見ないような高耐圧のタイプだったり、独特な形状のものも多く並んでいますね。
また、真空管を使ったアンプを自作できる同人ハードウェアの工作キットも発見。サンエイ電機は、この手のキットをいち早く扱い始めたお店というのは、マニアの間で知られた話です。中にはかなりのヒットになるキットもあり、そのキットに使用される(あまりメジャーではなかった)双三極管や7ピンMT管、サブミニ管が急に注目を集めるようになった・・・ということもあったとか。
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真空管やコンデンサのほか、ニキシー管なども並んでいる
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毎回聞く:この店のベストセラーと“謎の売れ筋”を教えて!
柿沼さんに同店のベストセラーを聞いたところ、ほぼノータイムで教えてくれたのが、旧ソ連製の軍用管だったという「6SN7GT」や「6V6GT」。オーディオにもギターアンプにも使える比較的メジャーな型番ながら、その割に安いというコスパの良さから、長く売れ続けているそうです。
かつてかなりの数を仕入れたため在庫が大量にある、というのが手頃な価格を支えている理由な模様。さすがにだいぶ数は減ってきているそうですが、「いまでもウチの看板商品の一つですよ」とのこと。
そして“謎の売れ筋”と言えるかは分かりませんが、自分でアンプを設計するような好事家たちの中には、時に突拍子もない球を使って組む人も少なくないとか。なんと「IV-3A」のような数字表示管をオーディオ用に使うといったパターンもその一つで、「かつてメーカー製品でもそういう例があったので、表示管がオーディオに使えるのは知ってたけど・・・」と柿沼さんも驚いたそうです。
極まった愛好家になると、ありきたりな球を使うのでは面白くない、とアレコレ試行錯誤する楽しさに目覚めるのがお定まりのようで。このあたりはモノづくりの世界に共通することかもしれませんね。
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サンエイ電機は、基本的に土日のみの営業。ただし場合によっては平日に営業している日もあるため、同店Xでの告知を確認しよう
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文: 編集部 絵踏 一
サンエイ電機: https://x.com/sanei_denki