2012.12.31 16:45 更新
2012.12.31 配信
2012年大晦日。早いもので今年も1年を振り返るこの日を迎えた。自作PC業界の2012年は、第3世代Coreプロセッサ・ファミリーとなるIntel Ivy Bridge解禁(4月29日)や、AMD APU Trinity解禁(10月2日)、マイクロソフトWindows 8 発売(10月26日)など、大型リリースが相次ぎ、例年通りに多くのトピックがあった。とは言うものの、いずれも盛り上がりは今ひとつ長続きせず、インパクトが弱かった印象は否めない。この日を迎える業界関係者の多くは「来年こそ」と心に思うここ数年の大晦日。業界の繁栄を祈りつつ、今年も2012年のエルミタを振り返ってみよう。
PCパーツ的には1月9日にAMD Radeon HD 7970の解禁があったものの、ベスト3にはランクインせず、1月の1位はCooler Masterの20周年Anniversaryモデル「COSMOS II」のグローバルリリース記事。2月にはSandForce搭載のIntel「SSD 520」がリリースされたにも関わらず、コネクタの向きを気にせず挿せる世界初のUSBハブが1位。2位にはクレバリー1号店/2号店がインターネット館“集約営業”に多くのアクセスが集まった。
Cooler Masterより1月に正式発表された巨艦「COSMOS II」 | 2月末には老舗・クレバリーの1号店/2号店が閉店し、インターネット館に集約 |
第3世代Coreプロセッサ「Ivy Bridge」深夜販売で賑わう秋葉原PCパーツ通り |
4月12日、PC DIY SHOP FreeTが開店1周年直前に旧クレバリー2号店跡地に移転を発表。同月28日には第3世代Coreプロセッサ・ファミリー“Ivy Bridge”がリリースされ、深夜販売で秋葉原は大いに賑わいを見せた。特に「Core i7-3770K」に人気が集中し、編集部でも勢い2個購入。2012年を代表するCPUとなった。
20年に渡る歴史に幕。クレバリー経営破綻 |
そして5月31日、業界内では経営難の噂が絶えなかったクレバリーの経営破綻。今だから明かしてしまうと、2月末の店舗移転理由は“区画整理”とされていたが、編集部ではすでにテナント募集の不動産情報を確認しており、財務状況悪化は深刻であったようだ。「コレオシ」にも幾度となくご協力頂いた老舗だけに、心が痛む。
アジア最大級のPC見本市「COMPUTEX TAIPEI 2012」は計34本の記事を配信。入社1年目の新人STAFFは、その規模のデカさに圧倒され、数日間フリーズ状態。今なおその傷は癒えず、編集部内では一時「台湾」が禁句に |
エルミタ読者にはファンの多いブランドのひとつCORSAIR。メディア向け夏の新作発表会記事には多くのアクセスが集まった |
お盆休みの影響も手伝って、8月16日に行われたNVIDIA GeForce GTX 660Tiの“やや深夜販売”はいつになく静か。パーツ通りには業界関係者の姿ばかりが目立った |
2012年10月26日0:00から発売が解禁されたWindows 8。深夜販売は大いに盛り上がり、秋葉原の夜は今年1番の賑わいをみせた。一方、隣国台湾ではかなり静かなスタート |
ついにWindows 8 が10月26日0:00より発売が開始された。大型イベントや各店舗の深夜販売は大盛況。PCパーツ通りは休日の日中を思わせるほどの賑わいをみせ、久々に活気のある秋葉原が帰ってきた。新キャラクター、「窓辺ゆう・窓辺あい」も登場し、発売記念パック「秋葉原リミテッドエディション」の売れ行きは好調。しかしタッチパネル液晶や対応タブレット端末等に特化されたOSという印象が強く、自作派からの評判は未だ賛否両論。Windows 7 の出来が良すぎただけに、今後どのような存在になっていくのだろうか。Windows 8 最大のライバルは、Windows 7 だ。
11月22日、手のひらサイズのIntel製NUC対応マザーボード「Desktop Board D33217CK」「Desktop Board D33217GKE」発売 |
突如飛び込んできたパソコン工房のアキバ撤退と、フェイス秋葉原本店の移転。実は“かなり以前からのスケジュール通り”との話も |
12月17日、突如パソコン工房秋葉原本店とフェイス秋葉原本店の閉店が発表された。パソコン工房はアキバ地区完全撤退ながら、フェイスは移転営業になる予定。両店舗は2009年10月17日、旧石丸ソフトワン跡地に同時オープンされたが、開店当時より同テナントは“時限付きの入居”という話がある。その真意は定かではないものの、2012年の中頃には“年内退去”の二次情報をキャッチ。それによると、移転先は蔵前橋通り“妻恋坂近辺”という話だったが、あくまでウワサ。正式発表を心待ちにしよう。
今年はあと3本で“煩悩の数”となる、計105本のレビューをお届けした。自作PCで必要な構成パーツを、できる限り平均的に取り上げるよう心がけているが、どうしても偏りがちになってしまう。頻度の高さは市場の流行に依存する部分が多く、マザーボードやグラフィックスカードの主要パーツはもとより、2012年はSSDやPCケースの検証が目立った。
上位5傑をみると、1位はPLEXTOR「PX-M3/PX-M3P」シリーズ、2位はCooler Master「COSMOS II」、3位はSilverStone「SST-TJ04B-EW」、4位はSilverStone「SST-FT03-MINI」、5位はASRock「Z77 Extreme4」となり、SSDが1アイテム、PCケースが3アイテム、そしてマザーボードが1アイテム。いずれも上半期に掲載した記事になっているのは、露出期間の長さが大きな要因だが、掲載1ヶ月間で比較した場合でも、ほぼ同じ結果だった事を付け加えておく。
PCケース史上に残る名機、Cooler Master「COSMOS II」 | 5月にお届けしたにも関わらず、未だにアクセスが多いSilverStone「FORTRESS SST-FT03-MINI」 |
ことPCケースは製品としての息が長いアイテムだけに、他の製品に比べて“賞味期限”も長くなる傾向にある。特に今年はSilverStoneのPCケースの“持続力”が目立ち、当たり年になった印象。ちなみに巨艦「COSMOS II」検証で筆者は肩と腰を痛め、数日間整骨院の世話になった。年間2位にランクインしたことで、良しとしなければならない。
さて、いろいろあった2012年も残り数時間あまり。アクセスランキングでエルミタの1年を振り返ってみたが、必ずしも仕掛けられた製品リリースやイベントが上位を占めることはなく、読者の関心が岐にわたっている点は興味深い。ここ数年、勢いが止まらないスマートフォンやタブレット端末に話題をさらわれがちで、自作業界からは嘆きの声をよく耳にする。両者の共存共栄を考えた動きも焼け石に水で、諦めムードが漂っている感もある。そうはいっても、その勢いを羨む人たちのポケットにはiPhoneやGALAXY S、カバンにはiPadやNexus7があり、便利な必需品になっているはずだ。
今年も秋葉原では幾度となく深夜販売が行われ、現地入りした取材班から配信されてくる現場レポートの掲載作業に追われた。配信にはスマートフォンが大活躍するワケだが、さておきそれはWindows 8の深夜販売の時のこと。現場からの配信が一時途切れたカウントダウン直前、ひと息吐きながら、今年は深夜販売が多い事に気が付いた。
中にはやや無謀とも思える“強行敢行”もあったが、最近の深夜販売は主役を押しのけ、前後に用意される特価品を目当てに来る人が多い。それもアキバらしいワケだが、これほどまでに深夜販売が行われたのは、どこか安心感を求めているからではないだろうか。やや元気のない自作PC業界にあって、多くの自作派が深夜の秋葉原に集結する様子は、自作ブーム真っ只中の週末を思い起こさせる。利益度外視のイベント特価に多くの人が集まり、さらにそれを窺おうと、業界関係者も多く集まる。その様子を見て“まだまだ捨てたモンじゃない”と感じている。いいじゃない、それもアキバらしい。
自作業界の現状を劇的にひっくり返すような起爆剤はそう見当たらない。しかし僕たちは自作PCならではの楽しみ方を知っている。来年は自作PCパーツショップに足を運び、2013年も大いに自作で遊ぼう。
今年も1年間のご愛読、ありがとうございました。自作の「楽しさ」をたくさんお届けすべく、エルミタ編集部は年末年始も年中無休で元気に稼働中。良いお年を。
文: GDM編集部 松枝 清顕