2022.03.05 12:31 更新
2022.03.05 配信
AMDチップのマザーボードを眺めていると不思議な安心感(?)が漂ってきますが、それは長く変わらないプラットフォームにあるのかもしれません。最新世代のRyzen 5000シリーズもお世話になっているSocket AM4が登場した時期は、2016年の第7世代APU(Bristol Ridge)や、その翌年にデビューした初代Ryzenの頃まで遡ります。
もうそんなに経ってるの?と驚きつつ、その間にライバルのIntelは4回もプラットフォームを更新しているわけで。移り変わりの激しいPC市場において、Socket AM4が異例と言える長寿プラットフォームになっていることが実感できると思います。
2017年3月に発売が開始された初代Ryzen。解禁当日の深夜販売には多くの自作派がアキバに集結した |
しかし、ソケット自体の電気的・物理的な互換性は維持されていますが、チップセットによってサポートするCPUは異なります。ちなみにAMD 300シリーズが公式にサポートしているのはRyzen 2000シリーズまでで、Ryzen 3000シリーズは、マザーボードメーカーが独自にBIOSを提供することで対応しているというスタンスです。
AMD X570チップセットが出た当時のプロセッサ対応表を確認すると、Ryzen 3000シリーズに正式対応するのはAMD 500/400シリーズで、AMD X370/B350はメーカーが独自に対応するというスタンスでした |
そして、最新世代のRyzen 5000シリーズについては、これまでASUSやGIGABYTEからAMD A320チップセットモデルの一部に対応BIOSが提供されていますが、ハイエンド向けAMD X370(とミドルレンジ向けAMD B350)に対しては動きがありませんでした。・・・というより、もうすっかり過去のチップセットなわけですから、それが当然ですよね。
「Fatal1ty X370 Professional Gaming」向けのRyzen 5000シリーズ対応BIOSは現時点でβ版として提供されています。なおRenoirことRyzen 4000Gシリーズも動作します |
ところが今年1月に入って、ASRockから「X370 Pro4」向けにRyzen 5000シリーズ対応BIOSがひょっこり登場。さらに2月には、AMD X370搭載の主要マザーボードに対しても、続々と対応BIOSのアップデートが提供されました。まさに長寿プラットフォームならではの芸当ではありますが、6年前のチップセットに最新世代のCPUが対応するなんて、かなり珍しいですよね。(もちろんこんなことをするのはASRockだけ)
そこで今回は、(押し入れに眠っていた)手持ちの「Fatal1ty X370 Professional Gaming」を使用して、ちゃんとRyzen 5000シリーズが動くのかをチェックしてみようと思います。
今回ASRockから提供されているRyzen 5000シリーズ対応BIOSですが、いずれも前段階として「Bridge BIOS」の導入が必要になります。そのため都合2回BIOSをアップデートすることになりますが、手順自体は従来と同じため一度でもBIOSのアップデートをしたことがあれば戸惑うことはないでしょう。また「Fatal1ty X370 Professional Gaming」では問題ありませんでしたが、一部のモデルではBIOS ROMの容量不足を解消するため、第7世代APUやAthlon X4など、Bristol Ridge世代のプロセッサが使えなくなるので注意してください。
BIOSアップデート前のCPUにはRyzen 9 3900XTを使用しました | まずは「Bridge BIOS」であるVer 7.00にアップデートします |
「Bridge BIOS」へのアップデートが完了したら一度再起動して、Ryzen 5000シリーズ対応BIOS(原稿執筆時点Ver 7.06)へアップデートします |
2段階のBIOSアップデートが完了した後に、CPUをRyzen 9 5950Xに載せ替えたところ問題なく起動しました |
Ryzen 5000シリーズの起動が確認できたところで、CINEBENCH系のベンチマークを使って、パフォーマンスを簡単に確認していきます。CPUは起動確認時と同じRyzen 9 5950Xを使い、比較用のマザーボードにはAMD X570チップセットを採用するMSI「MPG X570 GAMING PRO CARBON WIFI」を用意しました。
「Fatal1ty X370 Professional Gaming」の「HWiNFO64」の結果。マルチコアテスト時(画像左)は3,950~4,000MHz、シングルコアテスト時(画像右)は最高4,825MHzまでクロックが上昇しました |
MSI「MPG X570 GAMING PRO CARBON WIFI」の「HWiNFO64」の結果。マルチコアテスト時(画像左)、シングルコアテスト時(画像右)ともクロックは「Fatal1ty X370 Gaming X」とほぼ同じでした |
今回は「CINEBENCH R15/R20/R23」の3種類のベンチマークで動作を確認していますが、シングルコアテスト、マルチコアテストとも動作クロックに大きな違いはありません。ベンチマークスコアも差は1%未満で、AMD X370チップセットでも十分にCPUの性能を引き出すことができています。安定性についてはテスト時間が短いため断言はできませんが、「CINEBENCH R23:Minimum Test Duration:30 minutes」のストレステストは問題なく、テスト中に不安定になることもありませんでした。
最新のマザーボードと比べると、PCI-Express4.0やネットワークなど機能面で見劣りする面は確かにあります。しかし、AMD X370はもともとハイエンド向けに設計されたチップセットのため、堅牢な電源回路や高品質なパーツを使用しているマザーボードが多いのも事実です。まもなくプラットフォームがSocket AM5へと切り替わる今だからこそ、対応製品を使っているのなら最終アップグレードとしてRyzen 5000シリーズの導入を検討してみてはいかがでしょう。
文: エルミタージュ秋葉原編集部 池西 樹
ASRock Incorporation: http://www.asrock.com/