2024.04.09 17:15 更新
2024.04.09 配信
AMD(本社:アメリカ)は2024年4月9日、AI駆動の組み込みシステム向け高性能SoC「Versal AI Edge Gen 2」を発表した。
これまでAIが活用されているシーンと言えば、AMD InstinctやEPYC、Ryzen PROが活躍するクラウドやデータセンター、研究・開発向けのワークステーションなど大規模なシステムが中心だった。しかし、最近ではヘルスケアや通信、スマートシティ、工場のオートメーションシステムなど小規模な組み込み向けシステムでもAIを活用するシーンが増えてきている。
組み込み向けシステムでは、性能はもちろんのこと実装スペースや消費電力、周辺温度などの影響も考える必要がある。さらにセキュリティや信頼性に優れ、長期間安定供給されるSoCが求められる |
こういったAI駆動の組み込み向けシステムでは、映像データなどをセンサーから取得してAI推論で活用できる形にする「Preprocessing」、実際にAI推論処理によって分析などを行う「AI Inference」、AI推論処理の結果を元に実際のアクションを行う「Postprocessing」の3つの処理を実行する必要があるが、現在1チップですべてを処理できるSoCはなく、複数のCPUやSoC、外部メモリを組み合わせている。
「Preprocessing」から「Postprocessing」までを一括で処理できる性能を持ったSoCはこれまで存在しなかった |
そのため基板サイズの大型化や、消費電力の増加、チップ間通信によるレイテンシの増大のほか、システム設計が複雑になることによるセキュリティや信頼性の問題も発生している。
この問題を解消するために開発されたのが、今回AMDから発表された「Versal AI Edge Gen 2」だ。「Versal AI Edge Gen 2」では、「Preprocessing」用のプログラマブルロジックを内蔵したことで、さまざまなセンサーのデータを最小限の労力でシステムに取り込むことができる。
「Versal AI Edge Gen 2」からAI機能を省略した「Versal Prime Gen 2」もラインナップする |
また従来の「Versal AI」からAI推論のワットパフォーマンスは3倍に向上。さらにCortex A78AE×8、Cortex R52×10のCPUを内蔵し、先代モデルの弱点だった「Postprocessing」性能は最大10倍に引き上げられており、「Preprocessing」から「Postprocessing」までを1チップで実行できるようになった。
これにより、組み込みシステムの小型化や、消費電力の低下、レイテンシの削減といった効果が期待できるという。またAMDからは「Versal AI Edge Gen 2」向けのランタイムやドライバ、ファームウェアなどを集めたライブラリ「Vitis AI」が提供されるため、組み込み向けシステムの設計・開発時間も短縮できるようになる。
なお「Versal AI Edge Gen 2」のドキュメントについてはすでに開発者がアクセスできるようになっており、サンプルのシリコンは2025年上四半期中に、量産シリコンは2025年末に提供が開始される予定だ。
先代「Versal AI Edge」と「Versal AI Edge Gen 2」は併売されるため、クライアントは用途に合わせて最適なSoCを選択できる |
文: 編集部 池西 樹
AMD: https://www.amd.com/