エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.5
2009.04.19 更新
文:テクニカルライター Jo_kubota
さて電源ユニットを購入する場合、皆さんはどのような見地に立って選んでいるだろうか。筆者は、大昔、SSI EPS規格の電源ユニットを2年間くらいの間、発売されたほぼ全てのモデルを購入し、独自にいい電源と、そうでない電源を選り分けていた。当時は、Xeonブランドが発足したばかりで、非常に電力食いなFosterコアなXeonシステムに、10台前後のHDD(しかも電力食いなSCSI HDD)をRAID構成するという、モンスターマシンを使っていたからだ。この頃から大容量の電源ユニットは、実のところ使ってみないと分からないというのが実情だった。
何が分からないのかと言えば、表示されている電源容量は当てにならないということだ。繋いで、負荷をかけるまで、不安定になるかどうか分からないのである。
時は流れて、今や大容量の電源ユニットは選びたい放題で、500Wはあたり前という時代となったが、結局のところ、電源ユニットの容量はメーカーの公表値を参考にするしかないのである。
その前に、自分のPCがどのくらい電力を消費しているのか、それを知らなければ電源の選びようがない。一つの目安となるのは、各PCパーツメーカーが公表している最大消費電力、またはTDP(Thermal Design Power)だ。TDPは正確には電力ではなく、放熱の目安となる数字だが、手軽に情報が得られるため、電源ユニット選びの参考にする数字として採用することで計算が楽になる。グラフィックスカードは、ミドルクラスでTDPが60~100W、ハイエンドで200~250W、ローエンド(PCI Express補助電源コネクタがないもの)なら、概ね60W以下のTDPとなっている。なお、CPUは、1個あたり最大でもTDP 130Wくらいと見積もっておけばよいだろう。
ドライブ類だが、7200rpmの3.5インチHDDなら起動時で約25W、10000rpm以上なら30W、光学ドライブは、スピンアップ時にもっとも消費電力が高くなり、どのドライブもおおよそ25W前後で、アクセス時は、15W前後だ。
と、ここまでなら誰でも検索などして、ある程度把握していると思うが、実際にTDPや消費電力の値を足していくと、意外と消費電力が大きい、あるいは逆に小さいと感じる人が出てくるはずだ。
例えば、
以上で計算すると、380Wしかないのである。これにメモリモジュール1枚あたり3Wとして2枚ないし4枚挿しても10W前後。さらにマザーボードの消費電力を20Wとして、ハイエンドな構成でも450W程度の容量があれば足りてしまう計算となる。
実際には、上の例だと450Wの電源ユニットでは不具合が起きることも多い。この要因となっているのが、各電圧の出力(A)の違いだ。例えば12Vが25Aとなっていても、12V+5Vが350Wとなっている場合、5V出力に食われると、12V出力は最大の25Aを割り込んでしまい、出力不足となる。あるいはその逆ということもある。
しかし、各パーツが一体どれくらい電流を必要としているのか、調べるのは困難だ。というのも、市販されているテスターの多くは、最大でも20A、小型の安価なものでも200mA程度しか計れないためだ。
雑誌記事でも、ワットチェッカーなどを使ってシステム全体の消費電力は計測しているが、個々の電源ラインがどれくらい電力を消費しているか、調べることはほとんどないのは、このためである。もちろん、世の中には計れる計測器はあるが、気軽に買える値段ではなかったりする。
その結果、導き出される結論は、想定されるより大きな出力の電源ユニットを買う、つまり「大は小を兼ねる」ということになるわけである。