エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.20
2009.10.23 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
ここからは簡易風速計を用いて、ケース内部で起こる実際のエアフロー構造をチェックしてみたい。この特殊とも言える90度マザーボードレイアウト最大の恩恵である内部エアフローレイアウトは、想像通りにその役割を果たしているのか非常に興味深いものだ。
なお今回のテストに用いた簡易風速計は、以前レビューにも登場した主にスポーツやレジャー等で使用する、どこでも手に入るタイプのものを用意した。これはいわゆる取引証明目的では使用ができない風速計で、あくまで計測箇所の風量の違いを知るためだけの物である。数値は0.0m/sec~計測が可能で、本体内蔵されているプロペラが回転し、その速度を測ろうというものだ。その意図をご理解頂いた上で、数値を参考にして頂きたい。
風量計を用いた内部エアフロー計測 | ||
180mmボトムファン | 吸気部 | 0.2m/sec |
180mmボトムファン | 排気部 | M:2.5m/sec L:1.6m/sec |
メモリ部 | ボトム面 | M:1.0m/sec L:0.6m/sec |
120mmトップファン | 吸気部 | 0.4m/sec |
120mmトップファン | 排気部 | 2.7m/sec |
何度も言うように、「RAVEN 2」はその90度マザーボードレイアウト採用によるエアフローレイアウトが最大のポイントだ。実際に内部の風の流れを確認すると、180mmボトムファンは回転をM(1,000rpm)で動作させると風切り音が出るものの、うるさく感じる事はない。L(700rpm)に至っては静音ファンと十分に言えるレベルとなっている。また風量に関しては、吸気は微量ながら、排気はMで2.5m/secとなり、ケース内部に十分な外気を取り入れることが出来ている。
また、3基の180mmボトムファンはそれぞれ各セクション向けに風を送り込み、いずれもロスが少ない印象を強く持つことができた。ハードディスクセクションは縦搭載HDDレイアウトのおかげで3台共に直接風が感じられ、CPUセクションでは特にメモリ部の冷却に有効である事が判った。なおCPUクーラーへの恩恵だが、実際にボトムファンの効果は風量で感じることはできなかった。これは直下にメモリヒートシンクが風を遮っている事と、トップフロータイプのCPUクーラーからくる排気の影響が挙げられる。今回は都合上サイドフロータイプのCPUクーラーテストは行わなかったが、上下方向にCPUクーラーをレイアウトすれば、さらにストレートなエアフロー環境が構築できる事だろう。
筆者絶賛のメモリヒートシンク部へのエアフロー構造。櫛状のヒートスプレッダが搭載されたメモリモジュールには非常に理想的な形で180mmボトムファンからの風を受けることができていた。ケース選びはメモリ選びにも通じる事が分かるだろう |
一方グラフィックスカードもこの恩恵を受けている。ファンに対して垂直となる拡張カード類は少々大げさに言えば理論上整流効果をもたらし、グラフィックスカード冷却ファン吸気部まで外気を送り込む事ができる。製造プロセスの改善により消費電力はこれ以上に上がらない事を祈るばかりだが、このエアフローを採用する限り、まだまだ余裕があるように感じる。機会があれば是非グラフィックスカードの温度変化等もテストしたい。
90度マザーボード搭載レイアウトと称される「RAVEN 2」の“看板機構”には思わぬ事件が起きた。このレイアウトを採用する事で、電源ケーブル、モニタケーブル、入力デバイスのケーブルなど全てがトップ面に挿す事になる。これを採用する事のメリットは、通常リアに挿すケーブルが無いため、設置する場合に壁ギリギリまで本体を押し込むことが出来る(ただし、電源ユニットの吸気部は残す必要アリ)。奥行きの長いPCケースなだけに、これは重宝するのだが、グラフィックスカード出力でDVI→D-Sub 15ピンのアナログ出力変換アダプタを装着するとトップカバーが閉まらなくなってしまった。無理にテンションをかければどうにかなるかもしれないが、実用の範囲からは逸脱する。今やデジタル環境が大多数になり、ここは割り切りとされている部分なのかもしれない。
「RAVEN 2」の90度マザーボード搭載レイアウトで思わぬ自体に。若干極端な画像とはいえ、DVI→D-Sub 15ピン変換アダプタを装着すると高さが増す分、トップパネルが装着できなくなってしまった 。時代は完全にデジタル時代と痛感 |