エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.22
2009.12.26 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
「Fortress SST-FT02」最大の特徴はなんと言っても、4.5mm厚のアルミニウムを使用した一体成型フレーム構造だ。今更ながら、この型番からも推し量れるように、「Fortress FT02」は「Fortressシリーズ」第2弾の位置付けとなる。
「Fortress」シリーズの第1弾「SST-FT01」が登場したのは2008年11月。非常にシンプルなデザインから強烈なインパクトは無いものの、後述する正圧設計と一体成型構造は共通する。さらに遡ると、SilverStoneのアッパークラス帯としてリリースされた「TEMJIN」シリーズ「SST-TJ07」(2006年1月発売)というモデルがあるが、大きな特徴としてトップパネルからフロントパネル、そして底面パネルまで“コの字”に一体成型がなされている事が分かる。
このように既存ラインナップを紐解くことで、「RAVEN」シリーズ、「Fortress SST-F01」、「TEMJIN SST-TJ07」の3モデルそれぞれの特色を集約させたものが「Fortress SST-FT02」となっている事がわかる。言い換えるとSilverStoneの技術が詰まった内容の濃いケースであり、SilverStoneのケースエンジニアが出した現時点での理想形=答えがここにあるわけだ。
Fortress「SST-FT01」の内部構造。一体成型は「SST-TJ07」譲りだが、「RAVEN」シリーズのDNAはあまり感じられない | TEMJIN「SST-TJ07」シリーズは“コの字”型の元祖一体成型を採用したモデル。サイドパネルとの合わせに苦労したという開発秘話も |
「Fortress SST-FT02」は、「TEMJIN SST-TJ07」や「Fortress SST-FT01」と同じくフレームに一体成型が採用されている。フロントパネル、ボトム部、リアパネルが“Uの字”構造となり、SilverStone独特なデザインが冴えるひとつの重要な要素だ。
ここでは“一体成型”の利点とはなにかを考えてたい。ただしここに挙げた長所は一般的に言われているもので、個別に説明をしなければ少々誤解を招くかもしれない。
これら一体成型の長所を「Fortress SST-FT02」に照らし合わせて行くと、必ずしもPCケースでは合致しない所もある。例えば(1)で挙げたローコスト化については、数年単位で同一の構成部品を継続的大量製造する場合に言えることで、PCケースの場合同一デザインで数年単位の“市場製品寿命”がある事は稀で、ローコスト化できるほどの大量生産品には属さない。(通常の部品構成よりも却って高額になる)
さてそれ以外を見て行くと、(2)「複雑な図面設計が不要に」ついては(7)「部品点数が削減できる」にリンクする。つまり、当然の事ながら一体にする事で、通常複数からなる構成部品点数をひとつにする事ができるメリットは大きい。また(8)「つなぎ目がない」ために、ビビリ音問題が解消でき、さらには(6)「曲面が再現できる」事で、「Fortress SST-FT02」のように(5)「デザインが自由自在」に加工する事ができるという訳だ。(3)「表面の仕上がりの美しさ」および「仕上げの加工の手間を削減できる」利点もありつつ、工作精度が良くなければ、サイドパネルのラインとカーブが合わず、個体差が出てしまう事が懸念されるという。
なお「Fortress SST-FT02」では、4.5mm厚アルミニウムが採用されているのは、デザイン性の観点からの高級感の演出だけでなく、強度を求めた結果でもある。実際にこのモデルはなんの不安も感じさせない高剛性が実現されており、他モデルを寄せ付けない圧倒的な安心感を得ることができる。
一体成型がよくわかるのはボトムの曲線部分だ。“Uの字”で作られた外装部は角が丸くデザイン性にも富んだ独特な全体イメージを創り出す |