エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.41
2010.05.22 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
FD-CA-DEF-R2-BL(Black Pearl) |
「Define R2」は4月上旬、編集部に到着した。インターホンが鳴り、入り口を映すモニタを覗くと配達業者が大きな箱を重そうに抱えている。その箱に目をやるとなぜか“Antec”の文字が。
AntecのPCケースを手配した記憶もなく、おかしいなと思いつつひとまず受領。すぐに中を確認してみると、なんとAntec「P183」外装箱の中に「R2」が箱ごと収まっていた。
他メーカーの箱を使うのは、本来よくある話なのだが、今回に限っては非常に意味深。深読みすると、(1)少なくともFractal designに「P183」が1台ある、(2)その外装箱は不要になった、(3)事務所にたまたまあったので使った、ひいては(4)Antecとなんらかの関係がある、(5)工場が同じ、(6)製造メーカーが実は同じなど、想像を膨らませれば、どこかに答えが…。などと、勘ぐるのはこのへんで控えたいが、出足からなかなか興味をそそる“演出”に、期待は膨らむばかりである。
黒を基調とした外装パッケージ。海外からの単品輸送ではどうしても“箱がヤレてしまうため”他社メーカーの箱の中に「R2」は収められていた。なお箱から全3色展開とわかる |
余計な詮索は一時忘れる事にして、早速本題に入ろう。
唐突だが「いいとこどり」という言葉がある。ある事や物の優れた部分を選りすぐって取り込む事だが、使い方や聞く側の心持ちによって、ただの「真似」と片付けられてしまう事もある、たいへん危険な言葉だ。
送り出す側としては好意的に受け取って欲しくても、意図しない解釈が蔓延すれば、せっかく優れた部分を随所に採用した製品も、市場からは総スカンを食らってしまうだろう。今回採り上げるFractal design「Define R2」(以下:R2)は、まさにそのギリギリの所にある「いいとこどり」ミドルタワーケースと言って良い。これをどう判断するかは時期尚早。これから紹介する各所のギミックを余すところ無くチェックし、それぞれの結論を下して頂ければと思う。
Fractal design 「Define R2」 (左「FD-CA-DEF-R2-TI」Titanium Grey/右「FD-CA-DEF-R2-SI」Silver Arrow) W207.4×H440×521.2mm/12.5kg(net) ATX/MicroATX/Mini-ITX 5.25インチ×2/3.5インチ×8 電源非搭載 Color:Black Pearl/Silver Arrow/Titanium Grey http://www.fractal-design.com/home/product/cases/discontinued-products/define-r2-black-pearl |
さて、まず手始めに「R2」とほぼ同様のコンセプトを持つミドルタワーケースとのスペック比較を行ってみたい。今回サンプルに選定したのは発売直後に“撮って出し”たCoolerMasterの「CM690II Plus」、さらに静音コンセプトの代表格としてAntec「P183」の2台だ。
比較対象に選んだ2台が国内市場では代表的なミドルタワーケースである事は誰もが認めるところだろう。「CM690II Plus」は高エアフローを、「P183」は静音をそれぞれ特徴としているが、「R2」はフロントドアスタイルが採用されている分、どちらかと言えば静音コンセプトに重きが置かれているのではないかと現時点では想像できる。
簡単に数字上だけで比較すると、外形寸法で言えば高さこそ他の2モデルよりも低めながら、幅や奥行きについては大差無い事が分かり、そのサイズから「CM690II Plus」は他2モデルに比べてやや軽い。「R2」および「P183」には静音ギミックが備えられている分、やや重量があるという事だろう。また「CM690II Plus」がメッシュ仕様であることもその要因と考えられる。
次にドライブベイを見比べると、「R2」は3.5/2.5インチシャドウベイの数が2台分多いが、逆に5.25インチベイが2台分少ない。この点については限られたスペースの中でドライブベイ数をどう配分するか?という味付けの問題であり、“オンザフライ”という言葉が未だに生きているかは別として、5.25インチは1または2つもあれば十分というユーザーには、「R2」の判断は使い勝手が良いだろう。
なおスペースの関係上、スペック表だけでは分かりにくい仕様やファンの標準搭載個数などは割愛されている点はご容赦頂きたい。一昔前のスペック表ならば、ただ数字を並べれば事は済んだが、最近のモデルは表と数字だけでは説明できないギミックが本当に多くなっていると感じる。