エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.184
2012.10.27 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
ここまで「HAF XM」の外観および内部構造をつぶさにチェックしてきたが、最後のセッションでは実際に組み込みを行い、そこで気がついたことや紹介しきれなかったことをまとめてお届けしよう。
各々構成部品を組み込んでみたところ。開口部も広く、邪魔になる部品がないため、スムーズに作業を進めることができた |
近頃のPCケースで重要視されているのが、ケーブルマネジメント機構。複雑な構成になればなるほど増える邪魔なケーブルたちを、マザーボードトレイ背面に配し、エアフローの妨げにならないスッキリとした内部を作り上げることができる。「HAF XM」ではケーブル配線用スルーホールが要所にレイアウトされ、使い勝手はすこぶる良好。これらを上手に使い、いかに見栄えのいい内部にできるかはユーザー側の腕の見せ所というワケだ。
ATX24pinコネクタ横には縦2列にケーブルマネジメントホールを用意。穴を通るケーブルが痛まないよう、各々にはゴムグロメットがはめ込まれている。なおケーブルマネジメントホールは、“痒いところに手が届く”要所にレイアウトされ、丁寧に配線することでケース内部はかなりスッキリとした状態に仕上げることができる |
下部にあるケーブルマネジメントホールは、電源ユニットから伸びるケーブルを、必要箇所に分配する分岐点的役割 | 2.5インチシャドウベイ横には、専用の“小窓”が。徹底的に使い勝手を考慮した設計は、さすがCooler Masterといったところ |
奥行きサイズに余裕があるため、内部スペースにもゆとりがある「HAF XM」だが、ハイエンド構成で導入を検討している人にとっては、拡張カード有効スペースは気になるところ。そこで実際にグラフィックスカードを装着し、その”収まり具合”を見ていこう。
上部着脱式シャドウベイを付けたままで、実測値約350mmの有効スペースを確保。装着テストで用意したグラフィックスカードの長さは270mmである事から、約80mmのスペースが残されている |
2.5/3.5インチ共用シャドウベイの上部左側のプレートは、側面4本背面2本のネジで固定。これを取り払うことで、拡張カードスペースが一気に約463mmまで拡大される |
次にCPUクーラー有効スペースをチェックしておこう。公称値では196mmとされているが、実際に計測したところほぼ誤差はなかった。そもそもケース幅いっぱいに搭載されているトップ200mm冷却ファンの存在を思えば、マザーボードトレイとスタンドオフの高さを考慮してもかなりのスペースは確保できる。市場には大型サイドフロー型CPUクーラーが多数販売されているが、ほぼどのモデルも搭載する事ができるだろう。
トップ部に搭載されている200mm口径ファンの存在を考えれば、CPUクーラー有効スペース(高さ)もおおよそ見当がつくというもの。市販の大型CPUクーラーも余裕をもって搭載する事ができるはずだ |
開口部の広い、CPUクーラーメンテナンスホールのカットアウト。これだけ広ければ、モデルによってバックプレートが干渉してしまうという事はないだろう。なお開口部の実測値は縦145mm×横211mmだった |
高いエアフロー性能を最大の特徴とする「HAF XM」。大口径冷却ファンが大風量で冷却する様は壮観だが、一方で騒音値も大いに気になるところだろう。そこで標準搭載冷却ファンを全て稼働させた場合の騒音値を計測してみた。
「HAF XM」騒音値テスト(単位dBA) |
PCケースフロントパネルから30cmのポイントにデジタル騒音計を設置して計測を行ったが、室内騒音値28.9dBAに対し、37.2dBAまで上昇した。この数値であれば、静音動作と言って問題がないだろう。ただしフロント200mm口径ファンは、大口径&大インペラ独特の「ゴー」という音が発生しており、人によっては少々気になるかもしれない。とは言え、床設置であればその動作音も幾分和らぐことから、ここではあまり問題にしない。
Cooler Masterブランドのラインナップでいえば、「Elite」シリーズや「CM 690 II Plus」よりも上位にあり、「COSMOS II」や「HAF X」の下位となる、中間ポジション的存在の「HAF XM」。秀作揃いの個性豊かな兄弟たちの中にあって、独自の主張を市場にアピールすることは、決して容易ではないだろう。しかし最大の特徴となる“ハイエアフロー”は十分に魅力的で、上手に差別化が図られている。さらに製品の質感や工作精度、内部設計は言うに及ばずクラス上位レベル。200mm口径ファン3基が標準搭載されている事を考えても、市場想定売価18,000円前後に割高感はない。10,000円前後のPCケースをチョイスして、構成パーツに予算をかけるという考え方もあるだろう。しかし「HAF XM」では期待を裏切らない価格以上の満足感が得られるはずだ。
Cooler Masterらしい完成度の高さが光る「HAF XM」。自作パーツショップの店頭で、是非現物に触れてみて欲しい。