エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.191
2012.11.20 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
「CNPS9900DF」の特徴、外観および細部、搭載方法すべてを頭にたたき込んだところで、CPUクーラーの善し悪しを決める冷却性能をチェックしてみたい。ラウンド・サイドフロー上位モデルは、どのようなパフォーマンスを見せるのだろうか。
CPUクーラーテストレギュレーション | ||||||
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1.マザーボードはケースに組み込まない状態で計測する (ケースファンなどケース内エアフローの影響を受けない状態で、できる限りCPUクーラー本来の性能を見る 2.マザーボードなどの各種設定はデフォルトのまま行う 3.CPUに100%負荷をかけ、計5回のテストを実行 4.騒音値は、ファンから30cmの距離で計測 5.高負荷状態はストレステストツール「OCCT 4.3.2」を使用 (アイドル時および高負荷時(100%/30分)の数値を計測) 6.CPU温度計測には「OCCT 4.3.2」を使用(全コア平均値) 7.ファン回転数は「SpeedFan 4.46」を使用 |
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【参考モデル】Intel Core i7-3770K同梱純正CPUクーラー
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CPU温度:室内温度15.1℃/湿度73% |
CPU温度を計測したところ、アイドル時で31℃、高負荷時で54℃という結果になった。室内温度が低くなってきた事を考慮しても、アイドル時の31℃は秀逸。さらに高負荷状態でのストレステストを都合5回(30分/回)行っているが、回を重ねる毎に温度が上昇する気配はない。今回は常用使用を想定したごくスタンダードな温度テストだったが、この状態であれば難なく真夏でもクールに仕事をこなしてくれるはずだ。
室内騒音値:29.1dBA |
次に騒音値だが、アイドル時で37.9dBA、高負荷時で41.8dBAとなった。「CNPS9900DF」がデュアルファン仕様である事、さらにピッチの狭い放熱フィン形状から、ある程度の風切り音は覚悟していたが、37.9dBAのアイドル状態であれば、さほど音は気にならない。一方、高負荷時のPWM制御で回転が上昇した状態では、ある程度の駆動音は発生する。とは言え目くじらを立てるほどの騒音ではなく、PCケース内に閉じ込めてしまえば、多くの人は許容する範囲ではないだろうか。音の問題は個人差があるため、一概には言えないものの、筆者の感覚ではいずれもあまり気にならなかった。
SpeedFan 4.46での回転数計測値(140mm口径ファンのみ) |
計測した140mm口径ファンの回転数は、アイドル時997rpm、高負荷時1,318rpmだった。メーカー公称値は900~1,400rpm±10%であることから、ほぼスペック通りの数値と言える。都合5回のストレステストでは、いずれもほぼ同じ数値が計測されている事を付け加えておこう。
非接触型デジタル温度計によるポイント別温度計測 注※(6)は(5)の逆側、(8)は(7)の逆側 |
テストセッション最後は、高負荷状態におけるヒートシンクポイント別温度計測を行った。今回計測したのは計11ヵ所。最も温度が高かった箇所は(4)の25.1℃、逆に低かった箇所は(8)の18.3℃だった。(4)に関してはVRM付近という事もあり、マザーボードからの熱の影響を受けやすい事を考慮しなければならない。逆に(8)は熱源から最も遠い箇所である上、クリーンな空気が取り込まれる最もストレスが掛からない箇所と言える。
これまでのポイント別温度計測では、温度の高低差が大きく、さらにバラバラな結果になる事が多かったが、「CNPS9900DF」は突出した箇所が少なく、ヒートシンク全体が平均的な数値となっている。この結果から、ラウンド形状と360度にレイアウトされるヒートパイプの効果が数値に現れているとみていいかもしれない。
ここまで勝手に名付けた“ラウンド・サイドフロー”型CPUクーラー「CNPS9900DF」をイジリ倒してきたが、率直な感想は“想像通りのCPUクーラー”だった。独特な形状にこだわるZALMANは、ライバルモデルとの差別化を図りつつ、高い冷却能力を維持するという自らに課せたハードルをクリアし、今回も良品に仕上げてきた。
彼らの製品に対する思いは、以前行ったインタビューでも明かだが、ひとつのデザインを納得のいくまで熟成させ、小さいながらも改良を重ねる姿勢はその形状のみならず、他に類を見ない。流行ではなく、スタンダードになった“スクエア・サイドフロー”型CPUクーラーでは飽き足らない自作派からの根強い支持は、そんなところにあるのかもしれない。
肝心の冷却能力は申し分なく、価格に見合ったパフォーマンスを発揮する。ただし手放しで褒められないのが、搭載のしにくさだ。取り付け手順のセッションでも触れたが、この製品で唯一ZALMANが妥協した点ではないだろうか。搭載してしまえばオシマイと言えばそれまでだが、メーカーの姿勢はときに次回のモデル選定に影を落とす可能性がある。総評でポイント評価する「エルミタ的一点突破」が鋭意改装中であることで難を逃れたが、次のモデルでは確実に改良して欲しい。
とは言え、冷却能力は現在流通する空冷クーラーのトップクラスに位置付けられる事は間違い無い。なにやら近々また新たなチャレンジとも言えるCPUクーラーが用意されているらしいZALMAN。今後のモデルにも期待しよう。