エルミタ的一点突破 Vol.28
2012.12.26 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
はるばるオーストリアから空輸されてきたNoctua「NH-L9i」「NH-L9a」 |
古くからエルミタとは縁が深いオーストリアの冷却機器メーカーNoctuaから、Mini-ITXフォームファクタを始めとする小型PC向けロープロファイルCPUクーラー「NH-L9i」「NH-L9a」がリリースされた。ご記憶の読者もいるだろう。このモデルは「COMPUTEX TAIPEI 2012」の同社ブースで展示されていたプロトタイプそのもので、さほど改良が加えられる事なく市場に投入された。取材当初、発売時期は9月~10月とされていたが、Noctuaとしては珍しく(失礼)ほぼスケジュール通りのリリースと相成ったワケだ。
右がIntel用の「NH-L9i」、左がAMD用の「NH-L9a」。末尾の「i」「a」で対応ソケットが判別できる |
兄弟モデルとなる両者は、型番末尾に「i」が付くとIntel用、「a」が付くとAMD用で、搭載ファンの口径こそ同一ながら、ヒートシンクのサイズに若干の違いがある。詳細はのちほどご紹介するとして、まずはスペックを確認しておこう。
銅製受熱ベースとアルミニウム製放熱フィンで構成されたヒートシンクサイズは「NH-L9i」がW95×D95mmの正方形、「NH-L9a」がW114×D92mmの長方形を採用する。一般的なCPUクーラーであれば、Intel用とAMD用のリテンションを同梱させた共通ヒートシンクが常だが、どこよりも拘りの強いNoctuaは妥協することなく、敢えて2種類のヒートシンクを用意した。「だからどうした」と言うなかれ。メーカーはひとつのヒートシンクでIntel、AMD両対応にすればリスクが低い。設計、製造、在庫管理など、いずれも頭を悩ませるはずだが、限られたスペースで最大のパフォーマンスを得るためには、互いのソケットにあった最良のサイズを用意すべきというNoctuaの本気度を窺い知ることができる。
なお冷却ファンはいずれもPWM対応92mm口径の「NF-A9x14 PWM」をトップフローレイアウト。詳細についてはのちほど詳しくみていこう。
通常レビューの「速攻撮って出し」と違い、脱線の多い「一点突破」だが、ここではその本領発揮とばかりにCPUクーラー本来の役割である冷却とは無関係なパッケージについてあれこれ紹介したい。
Noctuaはオーストリアに本拠地を置くという、PCパーツ業界では珍しい存在だが、彼の地欧州の洗練されたデザインは、CPUクーラーにおいても手抜かりはない。コーポレートカラーであるブラウンとベージュのトーンは“市場で多く見かける鮮やかなカラーリングとは対照的に落ち着きと静謐を連想させるために選ばれた”(Noctua:Jakob Dellinger氏)と、以前のインタビューで答えてくれたNoctuaだが、外装デザインも去ることながら、パッケージも実に凝っている。
Noctua「NH-L9i」「NH-L9a」パッケージのフタを開くとご覧のとおり。1万円クラスの高価なCPUクーラーでも、ここまではやらないであろうこの風体。少々乱暴だが、筆者はこの時点で「多少冷えなくてもいいや」と思ってしまったほど |
注射器型グリス、ファン回転数減速ケーブル「Low-Noise Adaptor (L.N.A.)」、固定用ネジ4個分、さらにオマケ的要素のエンブレムまで、各々のサイズに綺麗にくり抜かれたウレタンで、CPUクーラー本体のぐるりにレイアウトされるようにデザインされている。ここまでくると、フタ裏面に挟み込まれたマニュアルにまでイチイチ感心してしまい、すでに、たとえ初期不良でも怒らない自信がある |