エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.206
2013.01.30 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
冒頭でも触れたように、今回取り上げるENERMAX「ELC」シリーズは、昨年の「COMPUTEX TAIPEI 2012」で初披露されたメンテナンスフリーのオールインワン水冷キット。ラジエターサイズに240mmタイプ1種と120mmタイプ2種の計3モデルが用意され、2012年12月より国内市場での発売が開始されている。発表から実に半年を経て投入されたENERMAXの自信作だが、外観上では数多ある既存のオールインワン水冷キットと大きな違い見は出せない。
2012年開催のCOMPUTEX TAIPEIで披露された「ELC」シリーズ。ENERMAXブースではひと際目立つ場所に展示されていた |
そもそもオールインワン水冷キットは、ポンプ一体型ウォーターヘッドと冷却ファン搭載のラジエターで構成されたシンプルなもの。市場に出回る製品はどれも似たようなデザインで、空冷CPUクーラーのように個性を出す事は難しい。ひと頃に比べれば選択肢は多くなったものの、結局は特定モデルに人気が集まりがちで、メーカーが手をこまねく状況に陥りつつある。そんな難しいカテゴリになりそうな予感のオールインワン水冷キットに参入したENERMAXは、既存のライバル機種との差別化を図るべく、独自のCPUヘッドを用意してきた。
ENERMAXといえば、言わずと知れたPCパーツメーカーの老舗。これまで多くのPCパーツを市場に投入してきた実績は、自作派ならば誰もが知るところ。特に美しい発光冷却ファンや、定評の電源ユニット、PCケースに至るまで、ラインナップはどれも個性的で、いわば独特な世界観をもっている。そんなENERMAXだけに、オールインワン水冷キットでもライバル機種にはない特徴を携えて市場に投入してきた。それが「ELC」シリーズ最大の特徴である特許取得の「QSC technology」(Quad-Shunt-Channel)を採用した銅製コールドプレートだ。「QSC technology」とは、こうだ。
特許「QSC technology」銅製プレート・・・ヒートシンク部に通常発生してしまう冷却液の境界層を除去し、循環効率を最大限に高め、強力な冷却性能を実現する |
CPUヘッド内部の銅製ヒートシンク≓コールドプレートは、CPUクーラーのように複数のフィンが並んでいる。この隙間に冷却液が流れるわけだが、整然と立ち並ぶフィンに水を通すことで表面に境界層(薄い膜)ができる。この境界層は、水流が発生しないため、簡単に言えば冷却水の流量が減り、冷却能力が思うように発揮できない原因になる。それを解消するために開発された「QSC technology」は、ヒートシンクに切れ目を入れることで境界層を壊す乱流を意図的に発生させ、水流の妨げを除去してしまおうという考えだ。
実際の冷却能力はテストセッションの結果次第だが、これまでにない独自設計を採用することで、ライバルモデルとの差別化を図ったのが、「ELC」シリーズというワケだ。では実機による詳細チェックを行う前に、各モデルの基本スペックを確認しておこう。
「COMPUTEX TAIPEI 2012」のENERMAXブースには、独自に開発されたコールドプレートのフライヤーが大きく掲げられていた。否が応にも「ELC」シリーズに対する同社の意気込みが伝わってくる |