エルミタ的一点突破 Vol.29
2013.02.09 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
サイズオリジナルCPUクーラー「阿修羅」には、ヒートシンク設計に加え、もう一つの大きな特徴がある。それは新たに設計されたブリッジ式・リテンションだ。サイズは放熱フィンの形状等、独自設計で自作派を楽しませてくれるメーカーだが、一方で直接冷却とは無関係な取り付け方法にも改良を重ね、常に製品の特長として大きなアピールポイントとなっている。これまで「兜2」(型番:SCKBT-2000)採用のN.G.C.S(New Generation Clip System)や「侍ZZリビジョンB」(型番:SCSMZ-2100)採用の改良版VTMS(Versatile Tool-Free Multiplatform System)など、完成度の高いリテンションを開発してきたが、それに飽きたらず、「阿修羅」では台座をくみ上げた後、受熱ベース部中央に渡すブリッジにより固定する、いわば利便性追求型ともいえる方式を投入してきた。では早速その手順をご紹介しよう。
なお今回は検証にむけて、テスト機材であるIntel LGA1155への取り付け方法を解説している。Intel LGA2011およびAMD系の取り付け方法については、図説マニュアルで確認頂きたい。なお台座を作るまでの手順については、概ね全ソケット共通となっている。
最後にファンクリップを使い、「隼140 PWM」をヒートシンクに装着すれば、マザーボードへのマウントは完了。デュアルファン仕様にする場合は、対面にも冷却ファンを固定すればいい |
ここまでの作業時間は15分程度。「阿修羅」で新たに投入されたブリッジ式リテンションは、非常に完成度が高かった。なにより台座を事前に組み上げた後、残るは2本のネジを留めるだけという方法は、使い勝手がイイ。ナロータイプの放熱フィン設計も手伝って、ドライバーを無理な角度で回すということもない。サイズのオリジナルCPUクーラーは、ほぼ歴代のモデルを手にしてきたが、さすがに新設計だけあって、これまで採用されてきたマウント方法では間違いなく1番の出来といえる。
高い冷却能力と引き換えに、隣接するメモリスロットに大きくはみ出すヒートシンクの大型化は、高さのあるヒートスプレッダ付メモリがフル搭載できないというジレンマがある。Intel系マザーボードを例にとると、CPUソケット左右にメモリスロットがレイアウトされるX79 Expressでは比較的余裕があるものの、メインストリームであるZ77/H77/B75 Expressは最大4本のメモリスロットが片側に集中。多くの大型CPUクーラーは、メモリスロットの一部を占有することになる。
これを解消すべく設計された、ナローフィンデザインの「阿修羅」は、見事にこの課題をクリアしている。装着テストにはCORSAIRの「VENGEANCE」シリーズ(高さ52mm)を用意したが、さすがに冷却ファンとの距離は僅かながら、これ以上背の高いヒートスプレッダ付メモリでも問題はない。これまでメモリスロットをフルに活用できなかった人には、待望の製品と言えるだろう。
隣接するメモリスロットとの物理的干渉で、引き合いに出されることが多いIntel Z77/H77/B75 Expressチップセット。ナローフィンデザインにより、4つのメモリスロットへの”張り出し”は回避されている |