エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.236
2013.05.23 更新
文:GDM編集部 絵踏 一
「CK Series」と「GK-601」のリッチな打鍵感の源泉は、何と言ってもZF Electronics製のメカニカルスイッチCherry MX赤軸(Product code:MX1A-L1xx)だ。クリック感のないリニアタイプのスイッチで、45g荷重の軽快な押下特性により、指先だけのわずかな力で絶妙の底打ち感を味わえる。軽さにまかせて片っ端から入力していくスタイルとは相性もよく、近年ではゲーミングモデルを中心に採用モデルがグッと増えてきた印象だ。
軽快な打鍵感が魅力のCherry MX赤軸。ゲーミングモデルを始め採用機も多く、人気のメカニカルスイッチだ |
押し下げるごとに荷重がリニアに変化するリニアタイプ。認識点における荷重は45gと軽量で、荷重を意識することなく指先だけで底打ちできる |
そもそもCherry MX赤軸は2008年に搭載モデルが登場した後発のスイッチで、世界に先駆けて日本市場に投入された。従来リニアアクションのCherry MXスイッチといえば、押し込むごとに荷重が増していく60g荷重の“黒軸”のこと。そこにシリーズ最軽量の赤軸が颯爽と登場したことにより、重量級でともすれば玄人向けと思われていたリニアスイッチのイメージは一変。たちまち人気のスイッチとなり、採用モデルも急速に増えてきたというワケだ。
ストローク4mmのちょうど中間にあたる2mmが認識点(Operating position)だが、リニアスイッチの特性上意識することはまずない。負担なく膨大な入力量をこなすことができるため、ゲーミングユースはもちろんオフィスワークにも向く。騒音になりがちなクリック音もなく、職場での使用にも不安はない。5,000万回以上の打鍵に耐える高耐久設計のため、長く愛用できるところもポイントだ。
厳格な品質検査とテストを経て生産されるCherry MXスイッチ。5,000万回以上の入力に耐える高い信頼性も魅力の一つだ |
日本語キーボードとして最も馴染みやすいスタンダードなレイアウト。パームレストいらずの筺体デザインも使いやすかった |
そのCherry MX赤軸を装備する「CK Series」と「GK-601」だが、もちろん単に優秀なスイッチが上に載っているだけではない。筺体設計も堂に入ったもので、力強くキーを叩き込んでも“たわみ”などが気になることはない。また、筆者は普段パームレストを愛用しているのだが、両モデル共通の“エルゴデザイン”のおかげか、パームレストなしでも十分寛いだタイピングが可能だった。配列も日本語キーボードのお手本のようなレイアウトで、ほとんどの人は素直に使いやすいと感じるはずだ。
また、両モデルともにNキーロールオーバーをサポートするなど機能面も優秀。特にUSB接続ながら全キーの同時押しに対応する「GK-601」は、ゲーミングモデルとして十分なアピールポイントといえる。マクロキーなどと併用することで、かなりアグレッシブな使い方ができるだろう。
Microsoftの検証ツール「Keyboard Ghosting Demonstration」で「GK-601」の同時押しをチェック。USB接続ながら、どんなシーンでも押下されたキーすべてを認識できる |
ゲーミング機能だけに注目するには惜しい、スタイリッシュかつ使い勝手のいい良品キーボード。Cherry MX赤軸とのカップリングも相性バツグンだった |
やはり新しいキーボードを使ってみるというのは純粋に楽しいもので、「CK Series」と「GK-601」もその期待に応えてくれた。初カテゴリの第1弾アイテムとは思えない出来栄えで、軽快な赤軸の特性も合わせ、オールマイティーに使えるキーボードに仕上がっている。いわゆる“ゲーミング押し”なモデルとは一線を画する嫌味のないデザインも相まって、仕事などの普段使いにも活躍してくれるはずだ。メカニカルキーボードとしての機能を純粋に求めるのであれば「CK Series」で構わないし、強力なゲーミング機能やバックライトと合わせた“Lightning”デザインに惚れた場合は上位の「GK-601」に手を伸ばしてもいい。どちらか好きなモデルを選べる“ハイローミックス”なラインナップはユーザー視点からも嬉しい。
出だしから注目のモデルをリリースしたMSIだが、今後入力デバイスカテゴリをどう展開していくのかも気になるところ。同社といえば高い信頼性とパフォーマンスを誇る「ミリタリークラス」などのハイエンドレーベルでも名を馳せているが、ここは一つキーボードでも同じようなモデルを期待してみるのはどうだろう。ウルトラタフな“軍事規格準拠”的キーボードとか、ちょっと面白いかもしれない。