エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.256
2013.08.07 更新
文:GDM編集部 絵踏 一
派手なトピックの多い「Toughpower DPS」だが、やはり電源ユニットとして最も求められるのは安定動作。ここからは組み込んだシステムに火を入れ、各種ベンチマークテストを通じて高負荷環境における挙動を検証していきたい。
なお、テストには先日詳細レビューをお届けしたばかりの、MSI製ハイエンドグラフィックスカード「N780GTX Twin Frozr 4S OC」を使用している。その他の構成は以下の表を参照していただきたい。
まずトップバッターは、定番の負荷テスト「OCCT 4.4.0」よりPowerSupplyTestを実行する。CPUとGPUの両方に負荷をかけるテストで、最高レベルの高負荷環境を再現、「Toughpower DPS」の挙動をチェックしていこう。なお、ワットチェッカーを使用しての消費電力計測は356Wと、ほぼ最小構成ながらにパワフルな消費状況となった。
OCCT 4.4.0 PowerSupplyTestによる各電圧の変化 | |
OCCT 4.4.0 PowerSupplyTestによる各電圧の最大/最小/平均値 |
+12Vは最大/最小値こそ0.264Vとやや大きめの変動幅をマークしているものの、最大/平均値の差はわずかに0.1V。定格電圧をほんの少し下回っているのは気になるが、テスト中はほとんど電圧変動なくグラフの波形もきわめてフラットに推移している。+5Vと+3.3Vの最大/平均値差はさらに微小で、高負荷環境でも出力がきわめて安定しているのがよく分かる。
次は定番の3Dベンチマークテスト「3DMark」を使用し、3Dゲームプレイを想定した負荷環境を再現する。設定は最も負荷の大きい「Fire Strike」の“Extreme”プリセットを選択し、計測を行った。なお、ベンチマーク中最大の消費電力は276W。
3DMark「Fire Strike」による各電圧の変化 | |
3DMark「Fire Strike」による各電圧の最大/最小/平均値 |
再びテスト中における電圧変動の最大/平均値に注目すると、+12Vはわずか0.02V(+5Vは0)、3.3Vは0.01Vとほぼ変動なし。「OCCT 4.4.0」時よりもさらに安定した波形を描いているのが分かる。いずれも多少定格出力を下回る数値をマークしているが、これは製品の特性なのかもしれない。ともあれ、ハイレベルな3D環境でもブレのない安定した挙動が望めるのは間違いなさそうだ。
最後は実際のゲームベンチから、「バイオハザード6」のPC版ベンチマークテストをチョイス。DirectX 9.0C環境ながらグラフィックスカードのパワーを使い切ってくれるテストのため、システムにも高い負荷がかかることが期待できる。品質設定は初期設定のまま(最高品質)とし、解像度を1,920×1,080ドットにセットして計測を行った。なお、ワットチェッカーによる消費電力計測では282Wをマークしていた。
バイオハザード6ベンチマークによる各電圧の変化 | |
バイオハザード6ベンチマークによる各電圧の最大/最小/平均値 |
結果はこれまで同様、最大/平均値で+12Vが0.13V、+5Vで0.001V、+3Vで0.018Vと大きな変動なくループ計測を終えた。ゲームマシンにおける安定動作はプレイに直結するだけに、信頼性の高い電源ユニットは必須要件。突発的に負荷のかかるシーンも多いところ、電圧変動がほとんど誤差の範囲に収まっているのはさすがといえる。
これまでは「どうやらちゃんと動いているようだ」程度の付き合いが関の山だった電源ユニット。文字通り“物言わぬパーツ”として静かにひっそりと使い続けてきただけに、「Toughpower DPS」の示す存在感はある種異質ともいえる。CPUやグラフィックスカード並に稼働状況をリアルタイムでモニタリングできるという新機能は、まさにデジタル制御の電源ユニット設計を突き詰めて得られた果実。詳細な稼働データ取得にデスクトップ上からの動作への“介入”、SNSへのデータアップロードなど、新時代の電源ユニットを体現するかのような多彩なアプローチは、これまでにない新しい可能性を感じさせてくれる。
単に搭載して静かに動いているだけ、という“地味パーツ”なスタイルはもうお終い。「Toughpower DPS」は、見れていじれる新時代のデジタル電源だ |
電源ユニットとしての本分といえる安定性は折り紙つき、唯一ネックになりそうなのはやや割高な価格といったところだろうか。ただし「リアルタイムパフォーマンス監視」を謳う、現状唯一無二の機能が面白い。すべてのパーツをコントロール下におきたいエンスージアストはもちろん、概算コストの計算にも対応するイマドキな機能はエコ志向なユーザーにとっても魅力的。ややもすれば地味な扱いの電源ユニット、これまでにない新鮮な気持ちで付き合ってみるなら「Toughpower DPS」がベストパートナーになってくれるだろう。