エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.267
2013.09.23 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
拡張カード有効スペース310mmに、264mmの「N760GTX HAWK」をマウントさせたところ、意外な落とし穴に気づくこととなった。それはグラフィックスカード搭載スペースに隣接する電源ユニットの存在。
さきほど5mmほどオーバーした奥行き165mmの「NEWTON R3 600W」を搭載したが、モジュラーコネクタの半分以上がグラフィックスカードの基板に覆い隠され、あろう事か電源のケーブルが使えなくなってしまったのだ。
なんと基板がコネクタを覆い隠してしまうというマサカの事態に遭遇。しばし狼狽する筆者であった | グラフィックスカードを外し、電源ユニットコネクタ部を確認すると、半分以上が使用不能になっている事が分かった |
説明不要。見たままこの通りの状態。フルモジュラー式電源ユニット等を使う場合は特にショート基板の拡張カードをチョイスする必要がある |
モジュラー式の電源ユニットと、GPUの性能を買って「N760GTX HAWK」を組み合わせたワケだが、両者は物理的に相性が悪いという結果になった。ちなみに電源ユニットをノーマルタイプの直結式にした場合、この問題は回避できるだろう。さらに「Node 304」に対してフォローすると、マニュアルには日本語で「170mmより長いグラフィックスカードと160mmより長いPSUは食い違うことに注意してください」(原文ママ)とあり、物理的干渉に関する注意喚起はなされている。とはいえ、マニュアルは本体を購入しなければ確認できないため、これについては製品情報ページやレビューサイト等で事前にリサーチしておく必要がある。
ミドルタワーPCケースと違い、内部容積が狭いCube型PCケースが苦手とする「ケーブルのやり場」について確認しておく。主にマザーボードトレイ背面スペースを使うケーブルマネジメント機構など望むべくもないスタイルだけに、接続したケーブル類は全てマザーボードやグラフィックスカードの搭載エリアと共存しなくてはならない。特に「HDDブラケット」にストレージを満載させ、さらに補助電源コネクタ付きグラフィックスカードを挿した“フルスペック状態”では、ミドルタワーPCケースでも頭を悩ませるほどのケーブル数になってしまう。
「HDDブラケット」を3つ装着し、電源ケーブルを接続しただけの状態。ケーブルの結束は単純にワイヤーを巻いただけの簡易的なものだが、内部はすでにかなりの混雑状態となっている | |
ケーブルの置き場として都合がいいのは、グラフィックスカード搭載スペース。オンボードグラフィックで行くならば、ケーブルにとって貴重なスペースとなるだろう |
「Node 304」に限らず、スペック上搭載できる構成パーツ点数と、実際にそれをフル搭載させた場合の「完成ギャップ」は、“パーツ同士の物理的干渉”と“ケーブルの処理”の2つが挙げられる。後者は特にマニュアルに記載される事がなく、組み込み前に想像がしにくい点がややこしい。最悪、高額なパーツが無駄になる可能性もあり、「それも自作の楽しみのひとつ」とは軽々しく言えるわけもない。
このような「ステルス・トラップ」は、小型PCケースになればなるほど注意が必要。「Node 304」でハイエンド構成を計画するならば、「HDDブラケット」をひとつ外すなど、ユーザー側のひと工夫が要求される事を覚えておきたい。
最後に気になるオールインワン水冷ユニットの搭載可否をチェックしておこう。リア140mm口径ファン搭載部分には、120mm口径ファン用のネジ穴も用意されている。これは言うに及ばず、多くのオールインワン水冷ユニットが採用する、120mmファンサイズラジエターに対応するためのもの。Mini-ITXマザーボードの高スペック化に伴い、対応PCケースもミドルタワー並の装備品搭載を想定しなければならない。Mini-ITXフォームファクタ=スリムPCケースという構図は、今や少数派というワケだ。
一般的な120mmサイズラジエター採用のオールインワン水冷ユニットを搭載させてみたところ、特に問題はなかった。ただし、CPUソケットとラジエターの位置関係がミドルタワーよりもかなり接近しているため、水冷チューブに硬質素材を使用している場合は、取り回しに若干苦労するかもしれない |
Fractal Design製品のキーワードといえば、「スカンジナビアデザイン」だ。北欧の洗練された、シンプルで機能的なものと解釈するようだが、「Node 304」も既存モデル同様に“モダンスタイル”が受け継がれている。その象徴と言えるのは、オープンベイを省略した思い切りの良いフラットなフロントパネルであり、余分なデコレーションを一切排除したことで、Fractal Design独特な雰囲気を小型Cubeケースでも見事に再現している。
また、前出のオープンベイ省略による恩恵は外観デザインのみならず、3.5インチHDDを最大6台搭載できるストレージ収納力に現れている。この“マイナスから生み出すプラス”の妙は、Fractal Designの大きな武器といえるだろう。
一方で、小型Cubeケースならではの内部容積により、構成パーツをスペック通りにフル搭載させた場合、ケーブルの処理に頭を悩ませる事になるはずだ。グラフィックスカードのチョイスにも気遣いが必要になるだろう。とはいえ、数ある小型Cubeケースの中でも、優れた内部設計は秀逸。PCケースを含め一気に丸ごと1台分のパーツを集めてから組み込むよりも、内部スペースを確認しながらコツコツ作り込んで行くといいだろう。現行Cube型ケースでは、間違いなく上位クラスの出来映えだった。