エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.270
2013.10.16 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
製品の特徴をご紹介した後は、いよいよ冷却機器としてのパフォーマンスを知るべく、温度計測テストを実行する。
今回は従来のテストのようなバラック状態ではなく、より実使用の状態を再現するためにAntec「P280」に組み込んだ状態でテストを行った。なおテスト機材構成は以下通り。
検証には「OCCT 4.4.0」を使い、高負荷状態1時間経過時のCPU温度をモニタ。計測には「HWMonitor」のCPU Core Packageの数値を採用している。なお室内温度は27.8℃(テスト開始時)だった。
実使用状態を再現すべく、「P280」に組み込んだ状態でテストを慣行。サイドパネルも閉じた状態でストレステストを行ってみよう。なお冷却ファンの回転数については、デフォルト状態のままで動作させている |
室内温度27.8℃(湿度59%) |
Haswell Core i7-4770K定格動作では、アイドル時33℃に対し、高負荷時は61℃だった。ある個体に対し、どんなに頑張ってもこれ以上冷却は難しいというラインがある。これまでCore i7-4770Kのテストを多数行ってきたが、普通に動かす事において、高負荷時の60℃近辺は優秀であり、「Kuhler H2O 1250」も高いパフォーマンスを発揮してくれている。
室内温度27.8℃(湿度59%) |
次にCore i7-4770Kを4.5GHzまでオーバークロックし、同様にテストを試みたところ、高負荷時で71℃になった。コアによって68℃~70℃をウロウロといったところだが、この数値も十分に冷却できていると言って差し支えない。
一方で騒音値はどうだろう。いくらCPU温度で及第点以上を計測しても、耐えがたい騒音値なら常用モデルとしては失格だ。
ここでは同梱ソフトウェアのAntec「GRID」を用い、最小回転「Silent」の770rpm、最大回転「Extreme」の2,297rpm、そして任意設定できる「Custom」では、中間の1,500rpm(表示で1,464rpm)に設定。3パターンの動作音を、デジタル騒音計で計測した。なお計測ポイントは、フロントパネルから30cm離れた位置で、両サイドパネルは閉じた状態としている。
室内騒音値29.1dBA ※フロントパネルから30cmの位置で計測 |
最も回転数が低い770rpm:「Silent」では、32.9dBAを計測。室内騒音値29.1dBAから3.8dBAの上昇にとどまり、静音動作を維持してくれる。次に最大回転数2,297rpm:「Extreme」では52.3dBAとなり、実に23.2dBAも数値は高くなってしまった。付属ソフトウェア「GRID」で回転数を上げた途端に勇ましい冷却ファンの音が響き渡り、さすがに常用には耐え難い。ただし瞬間的な冷却を必要とする場合には活躍してくれるだろう。
最後に「Custom」で中速1,500rpmに設定した結果は40.4dBAだった。ちょうどこの辺りの数値は「可もなく不可もなし」といったレベル。使用するアプリケーションの負荷状況とCPU温度の兼ね合いをモニターしながら、「システム」と「使い手」にとって快適な回転数を見つけたい。
「Kuhler H2O 1250」を決定づける、「移設」されたデュアルポンプは斬新だった。そこから生える2本のウォーターチューブの存在も、なかなか見栄えがいい。
Antecが従来型オールインワン水冷ユニットよりも張り出しの大きい、敢えて「PCケースを選ぶ」水冷ユニットを採用したのは、他と差別化を図るデザイン上の効果もさることながら、デュアルポンプにより圧送力の低下をなくすことを優先した結果。さらに深読みすれば、オールインワン水冷ユニットの主な騒音源となる冷却ファンとポンプを一カ所に集約させたかったのかもしれない。
さて肝心の冷却能力については、デュアルポンプによる圧送力の維持が功を奏しているのかは知るすべが無い。ただし検証から、Core i7-4770Kを冷却するには十分な力を持っている事がわかった。また付属ソフト「GRID」の存在は思いのほか大きい。ソフトウェア上で回転数が任意調整でき、状況に応じて「Kuhler H2O 1250」は瞬時に性格を変える。静音から大風量まで、その広い守備範囲は、240mmサイズラジエターのデュアルファン設計ならではの利点とも言えるだろう。
「Kuhler H2O 1250」は、搭載スペースが最大の懸念事項だ。一方で「Kuhler H2O 1250」を使うために、PCケースを選ぶというパターンもあっていい。そんな気にさせる、Antecの意欲作だった。