• 編集部：
  ヒートパイプにも当然ながら品質の良し悪しや価格差もあると？
• 杉田氏：
  あります。例えばですが、ヒートシンクから飛び出しているヒートパイプの先端がありますよね。それぞれ独特な形状をしていますが、詳しい人ならそこを見ただけで採用しているヒートパイプのメーカーや品質がすぐに分かります。サイズの製品に限らず、キャップ等を被せたりしている場合も多いですが。
  　高品質なヒートパイプは当然高価になりますが、非常に重要なコンポーネントということで、サイズではこだわっています。また良いヒートパイプは量産した際、品質が安定するというメリットもあります。

NoctuaやかつてのThermalrightは見せ方が上手い

• 編集部：
  メーカー側から見て10年間で記憶に残っているCPUクーラーなどありますか？
• 杉田氏：
  いろいろありますが、あえて挙げるなら「スサノヲ」でしょうか。100mm口径ファン4基を搭載していたやつです。ハッキリ言ってネタ的な商品でしたが、あのようなモデルがたまにあっても楽しいですよね。

2011年2月にリリースされた「スサノヲ」。100mm口径ファンを「田型」に4基搭載した異色作。売価も8,480円と、サイズオリジナルCPUクーラーとしては最も高価なモデルだった

• 編集部：
  エルミタでもレビューさせていただきましたが、色々な意味で凄い製品でした。サイズのCPUクーラーでは価格設定も異質だったと思います。
  　例えば海外メーカーの製品では10,000円前後のハイエンドクーラーがありますが、あのような「冷えるけど高価」というモデルは作らないのですか。
• 渡辺氏：
  サイズのイメージって物凄くハイエンドではないですし、ローエンドだけというわけでもない。全てが“そこそこ”だと思います。会社の戦略もそこで、あえてミドルレンジ帯を押さえにいく。「なるべくいい性能でなるべく安く」という哲学のもと続けてきました。ですから、販売価格については今後もこだわっていきたいですね。
• 杉田氏：
  ご存知のように他社の代理店もやっている関係で、高価なモデルも取り扱っています。ただ、やっぱり高いモデルの出荷数はそれなりなのです。
• 渡辺氏：
  作り手側の論理かもしれませんが、沢山売れるモデルだろうと売れないモデルだろうと、製品の価格が高くても安くても、作るためのエネルギーは一緒なんです。だとしたら、より売れるモデルにリソースを割きたいですよね。やはりセールスに直結するかは常に意識します。
• 編集部：
  そういう意味では、高価なモデルとサイズ製品では、市場で棲み分けができているということでしょうか。
• 渡辺氏：
  はい。実際に購入されるユーザー層も違うと思います。例えばNoctuaやかつてのThermalrightなど、商品の見せ方が非常に上手だと思います。ヒートシンクを見た時に、ハイエンドらしい迫力や説得力がありますからね。そこはサイズでは適わない部分かもしれません。
  　一方、サイズ製CPUクーラーのヒートシンクには、明らかにサイズ製品だと分かる雰囲気が漂っていると思います。鋭いフィン形状や装飾をなるべく排したデザイン志向などですね。

Thermalrightが手掛けた空冷サイドフローCPUクーラー最強クラスを謳う「Silver Arrow SB-E」。高価なモデルながらハイエンドユーザーからの支持は高い