エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.326
2014.05.14 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
センターからリアにかけて装備された5枚のアルミニウム製フラップは、内部温度状況に合わせて自動開閉。冷却ファンと連動し、内部の熱を自動排出してくれる、それが「ZM-H1」最大の特徴である「AHVクーリングシステム」だ。最後のセッションでは、最も気になるZALMAN独自の新機構を解説しよう。
「AHVクーリングシステム」のフラップを裏面から見ると、とても電動で開閉するようには見えない | フロントトップから伸びるサーミスタ。PCケース内部の温度を検知し、「AHVクーリングシステム」のフラップを自動開閉させる |
5枚のフラップをオープン状態にした「AHVクーリングシステム」。フルオープンで、トップ部の120mmデュアルファンは回転状態になる |
「AHVクーリングシステム」の制御は、フロントトップにレイアウトされた操作パネルで行う。5枚のフラップは、内部に標準装備された120mm口径ファン2基と連動して動作。「マニュアル制御」と「自動制御」の2パターンから設定ができる。
「AHVクーリングシステム」の動作プロセスチャート | |
「AHVクーリングシステム」の動作設定は、ファンコントローラーのロータリースイッチと2つのプッシュスイッチで行う |
「マニュアル制御」の場合、デジタル温度計でPCケース内部の状況をモニタ。PCゲームや重いアプリケーション等を実行する場合は(1)のスイッチを「OFF」から「OPEN」に切り替える事で、フラップが立ち上がると同時に、停止していた120mm口径ファン2基が動作を開始。回転数もコントロールできる。
また(2)をプッシュした状態で「自動制御」に移行。(3)のボタンで設定温度を35℃または45℃に任意選択すれば、いずれかの温度に達した時点で「AHVクーリングシステム」が作動する。
2つの設定いずれもテストを行ったところ、フラップの開閉動作は想像以上にスムーズ。そもそも静音状態と、強制排熱を両立させるための実用的機能だが、自動車のリトラクタブルヘッドライトのような動作は実に楽しい。また「自動制御」時も設定通りに動作を開始してくれた。
「AHVクーリングシステム」の動作を制御できる操作パネルには、ファンコントローラー機能が装備されている。ケーブル類は予め接続済みで、ロータリースイッチは左からフロント200mm口径ファン、中央がリア120mm口径ファン、そして右端は「AHVクーリングシステム」に連動するトップ120mm口径ファン(2基)の回転数がコントロールできる。
3chファンコントローラーはロータリースイッチで回転数を制御。温度表示ディスプレイの数字をモニタしながら任意操作できる |
最後にラジエター搭載スペースについて触れておこう。「ZM-H1」の製品情報によると、120mm口径ファン2基が搭載されているトップ部には、ラジエター搭載を想定し、幅168mm、奥行き318mmのスペースが確保されている。また高さを計測したところ、約30mmだった。これだけのスペースがあれば、120mm口径ファン×2基の240mmサイズラジエターだけでなく、140mm口径ファン×2基の280mmサイズラジエターも搭載できるだろう。
トップ部にはラジエターが搭載できるスペースを確保。なおこの場合、「AHVクーリングシステム」はマニュアル制御にてフラップは常時OPENにしておく必要がある |
なおトップ部の他にも、リア120mm口径ファン搭載部にもラジエターが搭載可能。以前詳細検証をお届けした「Reserator3 MAX」を選択肢に加えても面白い。
2014年の年明け早々、冷却に新機構を備えたPCケースの開発についてZALMANから内示を受けていた。当初「自動で排熱を行うPCケース」という程度の情報だったと記憶しているが、これが今回の隠し球「AHVクーリングシステム」だったというワケだ。
次第に概要が明らかになるにつれて不安が募り、奇抜なだけで「よせばいいのに」と思わせる”イロモノ的”なギミックかと半信半疑にもなったが、どうしてコレがよく出来ている。
トップ部に備えた5枚のフラップは、開閉アクションも実にスムーズ。一時見かけた電動開閉フロントパネルのような、いかにも長持ちしそうにない「苦しげな動作」は一切感じられず、心配される耐久性については、恐らくZALMANも懸念したであろう事は容易に想像でき、妥協せずに製品化したに違いない。設定温度の35℃および45℃もほどよい。
いい意味で期待を裏切った「ZM-H1」は「AHVクーリングシステム」ばかりに気が向きがちだが、PCケースとしての完成度も高く、市場で人気の高いZALMAN製エントリーPCケース群とは一線を画す剛性も確保されている。
そもそもZALMANは冷却機器メーカーだ。良好なエアフローの確保にこだわった「ZM-H1」は、実にZALMANらしいPCケースと言えるのではないだろうか。