エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.340
2014.07.13 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
洗練された外観はもとより、ドライブベイや冷却構造のギミックの多彩さに、すみずみまで紹介するのは一苦労というPCケースは実に多い。イマドキのPCケースは良くできたもので、以前のように明らかな粗悪品に出くわす確率が大幅に減った。これは自作PC黎明期に乱立したPCパーツメーカーが淘汰されたこと。さらに日本国内市場への導入にあたり、「入国審査」が厳しくなった事が要因ではないだろうか。後者の「入国審査」とは、日本国内の自作派による製品を見る厳しい目であり、市場の動向を知る代理店のシビアなジャッジにより、粗悪品は水際でふるい落とされている。国内市場に良品が多いのは、日本の自作市場が成熟している証拠と言えるだろう。
ガッカリするような粗悪品に出くわすリスクが減った事は、我々自作派にとってプラスだが、一方で画一的になってしまった感は否めない。多彩なギミックや紹介しきれない仕掛けは歓迎すべきだが、ポンと膝を叩くような独自機構を備えた製品は意外に少ない。まったく贅沢な好き勝手の言い放題だが、ともすれば横一線のPCケースカテゴリにおいて、ロングセラーが出にくい状況である事は、業界関係者の誰もが痛感しているに違いない。
さて今回、国内正規代理店であるCFD販売株式会社(本社:愛知県名古屋市)から届けられたMicroATX対応In Win「IW-CE685/300P」は、今まさに百花繚乱のミドルタワーPCケースとは違い、パーソナルコンピューターが登場した当時より存在する「王道中の王道」の、スリムタワー型PCケースだ。
In Win「IW-CE685/300P」 市場想定売価税抜15,000円前後 製品情報(In Win)(CFD販売株式会社) |
ライバルひしめくイマドキPCケースとは明らかに一線を画したこのモデルは、エルミタのチョイスとして疑問を感じる人もいるだろう。半ば「大人の事情」から強引に取り上げられたと思うかもしれない。確かに華やかなギミック溢れる新世代PCケースとは言い難い。しかし「IW-CE685/300P」はベーシックなスタイルながら、この手の製品としては十分にイマドキに出来ているのだ。
まずはサイド(またはトップ)パネルからドライブベイ、冷却ファンのマウントに至るまで、その大部分をツールフリーとしたロック機構。ドライバーを使わず、ガチャガチャとロックを解除する事で、構成部品をバラバラに取り外す事ができる。さらに搭載電源ユニットはこの手のPCケースとしては珍しい、80PLUS PLATINUM認証を取得した300W TFX電源が標準でマウントされている。選択肢はATX規格とは比べものにならないTFX規格にあって、80PLUS PLATINUM認証の高効率モデルは、省電力・低発熱なコンパクトPCを手軽に構築できる強みがある。
スリム型PCケース「IW-CE685/300P」は、この特徴を小さな筐体内部に詰め込んだシンプルな居住まい。省スペースの強みを生かしたデスクトップPCとして、またはPCパーツショップのオリジナルBTOや、中小規模の組み込み向けPCケースとしての採用も十分に守備範囲であろう。
多彩なロック機構と80PLUS PLATINUM認証TFX 300W電源。なお後者は国内独自仕様で、グローバルモデルとは異なる |