エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.370
2014.11.12 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
CPUクーラーメンテナンスホールのすぐ左横に搭載されている基板は、「PWM HUB」だ。もはやPhanteksブランドのPCケースを知る人にはお馴染みの装備品で、ネーミングで想像できる通り、PWM信号を複数の冷却ファンに振り分け、一括制御しようというもの。まずマザーボードのPWM対応CPUクーラー用コネクタに、ケーブルを接続。FAN1~FAN6まで用意された3pinコネクタに冷却ファンを接続すれば、電圧制御により回転数を自動でコントロールしてくれる。システムに掛かる負荷状況を判断し、PC全体のクーリングを最適化しようという便利な装備品だ。
歴代Phanteks製PCケースで採用されている「PWM HUB」。ちなみに前回検証した「Enthoo Luxe Full Tower Chassis」搭載基板から若干の変更が加えられているようだ | |
なお電源供給用に、SATA電源コネクタを接続する必要がある点も従来通り |
そもそも冷却ファンやCPUクーラーがラインナップの主要カテゴリだったPhanteks。PCケース内のエアフロー環境はもとより、CPUの冷却も考慮しPCケースが設計されている。既存のPCケースは、全てDIY水冷に最適化された仕掛けが随所に見られ、ハイエンド志向の自作派から絶大なる支持を得る事に成功した。そして同社初のMicroATX対応PCケース「Enthoo EVOLV」も同様、コンパクトなボディながら、従来モデルを踏襲したDIY水冷に特化。限られた内部スペースを巧みに使いこなしている。
まず気になるのは、ラジエター搭載スペースだ。DIY水冷に限らず、オールインワン水冷ユニットでもラジエターのサイズにより、冷却能力が大きく左右する。「Enthoo EVOLV」の搭載スペースを確認すると、フロントは標準で200mm口径ファンが搭載されているが、ここには240mmサイズまたは120/140mmサイズラジエターが搭載可能。また標準で140mm口径ファンが搭載されているリア部には120/140mmサイズラジエター。トップ部には240/280mmおよび120/140mmサイズラジエターが搭載できる。合計3箇所の搭載スペースは、好みの構成と最適なレイアウトで水冷システムを構築できるというワケだ。
計3箇所にラジエターが搭載可能。複数ラジエターを使うヘビー水冷ユーザーにとって、必要にして十分な備えと言えるだろう |
左側面に固定され、シャドウベイとして利用できた「サイドブラケット」。その「ふたつめの役割」は、水冷用ポンプまたはリザーバーの固定用として使用する。いわゆるDIY水冷に特化された、実にPhanteks「Enthoo」シリーズらしいギミックだ。通常ならシャドウベイとして利用するスペースを、敢えて空間にする事で、水冷ユーザーの利便性を劇的に向上させている。空冷派ならシャドウベイとしても利用できる「異種トレードオフ」の関係は、実に面白い。
なおこの他にもHDDケージ(2.5/3.5インチシャドウベイ)部分に、ポンプが搭載可能。ABS樹脂製トレイを外し、底面のネジ穴に付属の「ポンプブラケット」を固定すれば台座が完成。2個のハンドスクリューで固定されたHDDケージ天井を取り外せば、ポンプがマウントできるようになっている。
「ふたつめの役割」は、ポンプまたはリザーバーの固定に利用。特にリザーバーの固定にはたいへん重宝するだろう | |
ポンプは付属の「ポンプブラケット」を使い、シャドウベイ部分にマウントが可能。当然ながらシャドウベイとしての機能は失うものの、DIY水冷派にとって貴重なポンプ置き場になるはず |
MicroATX対応のミニタワーPCケースだけに、拡張スロットは全4段構え。ブラケットは通気孔仕様で、ボディのブラックに対し、ホワイトに塗装されている。なお固定には全てハンドスクリューが使用されている。
マルチグラフィック構成にも対応する拡張スロットは全4段。スロット金具は全てハンドスクリューで固定されており、プラスドライバーでより確実に締め付ける事ができる |
オプション扱いの電源ユニットは、ボトム部の「下段エリア」にマウントする事になる。搭載には右側面一方向のアクセスになり、設置面には防塵フィルター付きの通気孔と、ゴムクッションが装着されていた。なお有効スペースは、公称値で奥行き216mmとされている。
ボトムレイアウトを採用する、電源ユニット搭載スペース。2.5/3.5インチシャドウベイと下段スペースを分け合う事になり、やや窮屈感は否めない |
フロントパネルと防塵フィルタを取り外すと、右下部分にLEDが確認できる。これは通電状態で点灯するPOWER LEDだが、任意でLEDカラーを変更する事ができる。自作ショップに行けば、交換用LEDが単体発売しているが、「Enthoo EVOLV」では、予めブルー、グリーン、レッド計3色のLEDが付属し、簡単に交換ができるようになっている。
付属品BOXに同梱されている、3色のLED。ご丁寧にも交換用LEDにもコネクタが装着されており、工具不要で簡単に交換する事ができる |