エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.370
2014.11.12 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
今回搭載テストに用意したのは、Inno3D「iChill GF GTX 980 4GB Ultra」(型番:C98U-1SDN-M5DNX)だ。堂々たる3スロット占有(高さ115mm)モデルで、長さは300mmある。なお「Enthoo EVOLV」の拡張カード有効スペースは公表値318mmとされている。そこで実際に搭載してみたところ、フロント200mm標準ファンまでの距離を約20mm残し、問題無く装着する事ができた。
大型VGAクーラー「HerculeZ X4 Air Boss」搭載のGeForce GTX 980オーバークロックモデルも、難なくマウント完了。真横に搭載される200mm口径ファンからのエアフローも存分に浴びる形になる |
次に電源ユニットをマウントしてみよう。サンプルに用意したのは、ショートタイプとロングタイプの中間となる、奥行き160mmのセミモジュラータイプだ。電源ユニットの有効スペースは公称216mmで、リアパネルから2.5/3.5インチシャドウベイ(HDDケージ)の側面プレートまでの空間を自由に使うことができる。
ただし搭載の仕方にはやや制約があり、右側面の開口部のみアクセス可能。左側面およびリア部からは搭載ができない。奥行き140mmクラスのショートタイプならまだしも、160mmクラスでは後からコネクタにケーブルを接続する作業は困難だ。「Enthoo EVOLV」は、極力奥行きの短い電源ユニットを選びたい。
最後にケーブルマネジメント機構をご紹介しておこう。歴代「Enthoo」シリーズに共通するのは、裏配線の使い勝手の良さ。「Hook n Loop」と呼ばれるマジックテープ状の結束バンドが、複数にわたり予めマザーボードトレイのフックに装備されている。この付近を通過するケーブルを無造作に固定するだけでも、格段に見栄え良くなる。マザーボードトレイの要所には、表裏を自由に行き来できるスルーホールも装備され、接続機器間の最短距離を見つけながら、配線作業を楽しむ事ができる。自作の楽しみ方をよく知ったPhanteksらしい計らいを感じる。
マジックテープ状のPhanteksロゴ入り「Hook n Loop」は実に便利。タイラップと違い、何度でもやり直しが利くため、配線が苦手な人でも楽しく作業を進める事ができる | |
スルーホールにはケーブルの外皮を傷付けないグロメットを装備。なおマザーボードトレイとサイドパネルまでのスペースは実測で約23mm程度。最も太い24pinコネクタATXメインケーブルもストレスなく「裏配線」可能 |
Phanteks「Enthoo」シリーズ初のMicroATXミニタワー「Enthoo EVOLV」を数日にわたりイジリ倒した。既存ラインナップとフォームファクタの違いはあれど、随所に見られる柔軟な発想から、DIY水冷ユースをベースに設計されている事は間違いなさそうだ。既存「Enthoo」シリーズに共通したポリシーは、MicroATX対応ミニタワーでも見事に継承されている。
比較的設計の自由度が高いミドルタワーに比べ、ミニタワーは制約が多い。そこにDIY水冷の構成パーツを無理なくマウントさせる事はチャレンジに近い。そこに敢えて挑戦したPhanteksは、大胆にも5.25インチオープンベイをリアに追いやり、上段のマザーボード搭載エリアにはシャドウベイを一切設けず、電源ユニット共に下段エリアへ押し込んだ。さらにリアには140mm口径ファンが搭載できるだけの幅を確保し、天井を高くする事でラジエターの居住性を確保。トレードオフながらシャドウベイ部にポンプの台座がマウントできるネジ穴を備え、リザーバーの搭載スペースも用意できている。
他社にない独創的な設計が人気のPhanteksにあって、もはや平均点の製品では飽き足らない。恐らく設計者もそれを感じているはずで、「Enthoo EVOLV」で見事にクリアしたハードルは、どんどん高くなっていく。今、Phanteksが面白い。