エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.383
2014.12.19 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
次にボトム面に電源ユニットを搭載してみよう。搭載テストにはFractal Designの「EDISON M」シリーズの450Wを用意した。450Wから750Wまでの4タイプを用意するこのモデルは、80PLUS GOLD認証のモジュラー式電源ユニット。日本製105℃電解コンデンサと日本および台湾製固体高分子コンデンサを採用し、外形寸法はW150×D160×H86mmとされる。
搭載は「Define R5」左側面から行い、背面の穴にインチネジで固定するオーソドックスなスタイル。有効搭載スペースは標準状態で300mmとされているだけに、奥行き160mmの電源ユニットには十分な居住空間と言える。
奥行き160mmの「EDISON M」シリーズ450Wにとっては、広々とした搭載スペース。なおボトム部中央に140mm口径ファンを増設した場合、奥行きは170mmまでに制限。それでも10mmは残る計算 | |
搭載方法はいたってシンプル。背面の穴に付属のインチネジで固定。お馴染みのワッシャーヘッド六角インチネジは、「Power Supply Screw」として4本「Define R5」に付属している |
グラフィックスカード搭載スペースの様子をチェックしてみよう。標準状態での搭載スペースは、公称310mmとされている。ここで言う「標準状態」とは、拡張スロットの延長線上にあるHDDケージを利用する場合であり、これを取り外すことで有効スペースは一気に440mmまで拡大する。
たとえば以前検証を行ったNVIDIA GeForce GTX 980のオリジナルVGAクーラー搭載モデル、「ZOTAC GeForce GTX 980 AMP! Extreme Edition」は長さ299.97mm、GIGABYTE「GV-N980G1 GAMING-4GD」は312mm(いずれも公称値)だった。いずれも3連ファンを搭載する「長モノ」グラフィックスカードだが、あくまで数値上、前者は標準状態のママ、後者はHDDケージを取り外せば搭載ができるはずだ。ハイエンド志向の高い自作派なら、HDDケージとグラフィックスカード搭載スペースのトレードオフを柔軟に考慮する必要があるだろう。
HDDケージの搭載時(標準状態)で310mm、取り外し状態で440mmのグラフィックスカード搭載スペースが確保できる |
ちなみに搭載テストでは長さ270mmのグラフィックスカードを用意。数値上、問題がないことは明らかだが、実測約40mmを残しキレイに収めることができている。
長さ270mmのグラフィックスカードを搭載すると、HDDケージの側面まで実測約40mmの空きスペースができる |
最後にケーブルマネジメント機構に触れておこう。マザーボードトレイのスルーホールは、上部に横2つ、縦列に3つ、下部に1つが装備されている。いずれも各構成パーツの要所にレイアウトされており、使い勝手はすこぶる良好。無理なくケーブルがキレイに整頓できた。
また最も太いATX24pinメインケーブルを配線するマザーボード側面の縦列には、簡単にケーブルが結束できるマジックテープ「Velcroストラップ」があり、作業効率が格段に向上する。採用ケースもちらほら見受けられるが、是非全てのPCケースで装備して欲しい仕掛けだ。
4+4ピンCPU補助電源ケーブル(700mm)はマザーボード背面を斜めに横断させ、上部のスルーホールを通せば接続可能だった。ケーブルマネジメント機構が優れたPCケースは、おのずと”楽屋裏”までキレイに見せる事ができる |
Fractal Designの看板モデル「Define」シリーズは「R5」まで進化し、デビューを果たした。期待の新製品だけに、既に組み込みを楽しんでいる自作派も多いことだろう。どのような感想をお持ちだろうか。
Fractal Designが日本国内市場参入を模索していた2010年5月、編集部に空輸されてきた「Define R2」の検証を行った。あれから4年もの月日が経ち、「Define」シリーズは着実に進化を遂げている。まず感じるのが、工作精度の向上だ。「Define R2」は設計こそ現在の「R5」に通ずるものがあるものの、筐体を構成するパーツの各々が荒削りで、今のような高い質感を感じる事はなかった。さらに内部に貼り付けられた吸音シートも、薄汚れた絨毯のようなシロモノ。今だから書けるのは、本体サイドパネルに貼り付けられた吸音シートの角が、左右ともにめくれあがった状態で、撮影を行う前に応急処置を行わなければならなかった。まだまだ途上のメーカーという印象は否めなかった。
その後自作業界では人気メーカーのひとつに名を連ねるまでになり、ここに完成した新作「Define R5」は見事に完成度の高いミドルタワーPCケースに仕上げられていた。今年の「COMPUTEX TAIPEI 2014」開催に合わせてお披露目された初のオールインワン水冷ユニット「Kelvin」シリーズの開発と足並みを揃える必要があった「R5」は、従来の静音コンセプトに加え、水冷ユニット構築を想定した新たな課題を見事にクリア。高エアフローPCケースへのシフトもスムーズに行う事ができる、トップパネルの取り外し式「ModuVent™」や、大型ラジエター搭載を想定した完全着脱式ドライブベイなど、多方向からのリクエストに応える準備はできている。
着実に進化を続けるFractal Design。その真価が問われる看板モデルは、Fractal Designの“今”が凝縮されたミドルタワーPCケースと言えるだろう。