エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.395
2015.02.14 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
次に水冷ユニットの居住性をチェックしてみよう。「P380」はトップ部に120mm口径ファンが最大3基、または140mm口径ファンが最大2基搭載できる。そもそもラジエターは、冷却ファンのネジ穴互換によるマウント方式であるため、理論上120/240/280/360mmサイズの各ラジエターが搭載できる事になる。そこでチェックしておく必要があるのは、トップパネル(天板)とマザーボードまでの空きスペースだ。この距離が分かれば、搭載できるラジエター+冷却ファンのサイズ(厚さ)の見当が付く。
標準搭載されるトップ部の140mm口径ファンを外し、マザーボードとトップパネル(天板)の距離を計測してみると、約70mm程度だった。冷却ファンは一般的に25mm厚である事から、ラジエターは45mm厚程度まで搭載可能という計算だ。ただし、マザーボードによってはヒートシンクが大きく張り出すモデルもあるため、構成によってはマージンを考慮しておく必要がある。
トップパネル(天板)からマザーボードまでの距離は実測約70mmだった。水冷構成について特別大きくアピールされていない「P380」だが、フルタワーの利を生かした居住性は確保されている |
次に実際に水冷ユニットをマウントしてみよう。搭載テストには以前検証を行ったオールインワン水冷ユニットのAntec「Kuhler H2O 1250」を用意。ラジエターサイズは240mmで、厚さは25mm厚の冷却ファンを含め約51mmという製品だ。
約70mmまでサポートするラジエター搭載スペースに、約51mm厚のラジエターを備えた「Kuhler H2O 1250」をマウント。当然ながら、どこにも干渉することなく収める事ができた | |
4mm厚アルミニウム製トップパネルを取り外し、ラジエターを固定する。広い冷却ファン搭載スペースだけに、240mmサイズラジエターが小さく見える |
ボトムレイアウトの電源ユニット搭載スペース。公称200mm(奥行き)までサポートする底面へ、実際に電源ユニットをマウントしてみよう。
搭載検証には以前詳細検証を行ったAntec「EDG650」(80PLUS GOLD認証/650W)を用意。2系統12V 35Aのマルチレーン出力を備えたフルモジュラータイプで、135mm口径の流体軸受けLEDファンを搭載することから、奥行きは170mmある。
搭載検証に用意したのはAntecの80PLUS GOLD認証650W電源ユニット「EDG650」。前後に装着されたレッドカラーのベルトは”制振用シリコンバンド”。ドレスアップ要素も兼ね備え、ブラック色も同梱されている |
公称200mmの空きスペースに、奥行き170mmの電源ユニット。このチョイスは言うに及ばず、なんら問題なくすんなりとマウントする事ができた。フルモジュラータイプだけに、搭載時にケーブルが作業を邪魔することもない。
なお搭載後の空きスペースを計測してみると、電源ユニットから2.5/3.5インチ共用のシャドウベイまでの距離は、実測で約180mmもあった。公称値が控えめというにはかなりの「誤差」。これは側面にある裏配線用スルーホールに、電源ユニット本体が被らず利用するには、奥行き200mmの電源ユニットがベターという解釈によるものだろう。
2.5/3.5インチ共用のシャドウベイまで約180mmの空きスペースを確認。余ったケーブルの置き場としても十分に活用できる |
昨年開催された「COMPUTEX TAIPEI 2014」から約8ヶ月、Antec待望のフルタワーPCケース「P380」の発売が開始された。「Performance One」シリーズの静音志向モデルはたくさんの注目を集めるだけに、Antec開発陣の苦労は想像に難くない。新作「P380」はそんな熱い要望に応えられたのだろうか。
隠しても仕方が無い。シャーシの基本設計は「P280」を踏襲し、5.25インチベイの面影が残る点など若干の疑問を感じる人もいるだろう。だが4mm厚のアルミニウムパネルを惜しげも無くフロントとトップ部に使い、デザイン面だけでなくスタビライザーのごとく剛性を高める事に成功。右サイドパネルに施された、スチールとポリカーボネートによる二層の遮音パネルも重厚で、音漏れと共振を抑え込む役割を十分に果たすだろう。
注目されるだけに、賛否両論は覚悟の上。とはいえ、実際に評価サンプルと数日向き合い、あれやこれやとイジリ倒した感触は決して悪くはない。なによりマットブラックの4mm厚アルミニウムパネルから醸し出される、精密機械特有の無機質な佇まいは、「P380」をチョイスする最大の理由になり得るだけの説得力がある。あれこれ言う前に、ぜひ実機を見ていただきたい。