エルミタ的速攻撮って出しレビュー Vol.416
2015.05.27 更新
文:GDM編集部 松枝 清顕
DIY水冷構成にとって、特に有利な設計が自慢の「Define S」だが、搭載テストでは以前詳細検証をお届けしたオールインワン水冷ユニット「Kelvin S24」(型番:FD-WCU-KELVIN-S24-BK)を用意した。いわゆる240mmサイズラジエターを備えたモデルで、搭載手順には若干のコツが必要ながら、冷却パフォーマンスは高い。
まずフロントに標準搭載される、140mm口径冷却ファン「Dynamic GP-14」を取り外し、ラジエターの搭載を試みた。さすがに最大360mmサイズまでサポートされるエリアだけあって、「Kelvin S24」の240mmサイズラジエターが小さく見えてしまうほど、スペースに余裕を感じる事ができる。通常あるべきシャドウベイ(HDDケージ)を取り払うと、実に広々としたエリアが生まれ、ラジエターおよび冷却ファンの厚さを気にせず、多くの汎用製品がチョイスできる。
標準搭載される「Dynamic GP-14」を外し、240mmサイズラジエターを固定。マウントには「Kelvin S24」付属のネジを使用し、120mm口径ファン用のネジ穴を利用する |
次にラジエターをトップ部にマウントしてみよう。標準では3枚の「ModuVent™」で塞がれているトップ面だが、240mmサイズラジエターを搭載するため、フロント寄り1枚の「ModuVent™」を残し、2枚だけを取り外す。このエリアは5.25インチドライブベイがないだけに、最大420mmサイズまでのラジエターが搭載可能。広いトップ部にはゆったりとラジエターがマウントでき、冷却ファン含め55mmまでの厚さに対応する。
内部の駆動音を極力漏らさない配慮から、「ModuVent™」は必要な2枚分だけを取り外し、240mmサイズラジエターをマウントする |
空冷ユーザーのために、CPUクーラーの有効スペースも確認しておこう。公称値は高さ180mmとされ、実際にCPUのヒートスプレッダから計測すると、180mm強のスペースが確認できた。大型サイドフロー型CPUクーラーでも180mm以下がほとんど。大口径冷却ファンを搭載した、ハイエンド志向のモデルも搭載できる準備がある。
CPUクーラーの有効スペースは、実測で約180mm強。公称値はクリアしており、ほとんどの大型サイドフロー型CPUクーラーが搭載できるはずだ |
グラフィックカードは多くの場合、シャドウベイ(HDDケージタイプ含む)と場所を分け合う事になる。しかし「Define S」にはそれら遮るものがない。拡張カードの有効スペースは、公称最大425mmとさすがに広く、オリジナル設計の大型VGAクーラーが搭載されるハイエンドグラフィックカードでも、ほとんどのモデルが搭載できるはずだ。なお搭載テストでは、奥行き270mmの2スロット占有モデルを用意したが、ほぼ公称値通りの空きスペースを残している事が確認できる。
拡張カード有効スペースは公称最大425mm。搭載したグラフィックカードは奥行き270mmで、標準搭載される140mm口径ファンまでの距離は、実測で160mm弱といったところ。表記通りのスペースが確保されている |
最後に、ケーブルマネジメント機構の使い勝手について触れておこう。ほどよいケーブルスルーホールの数と、的確なレイアウト。さらに結束バンド「Velcro ストラップ」の装備により、タイラップ等の結束アイテムの使用は最低限で済んでしまう。また、2.5/3.5インチシャドウベイエリアに設けられた、3.5インチHDD厚分の”段差”は、余ったケーブルをこっそり収納するスペースとしても利用可能。一般的なミドルタワーPCケースに比べ、広く確保された裏配線エリアは、すこぶる使い勝手が良かった。
マザーボードトレイ裏面約20mm、2.5/3.5インチシャドウベイエリア約40mmの裏配線スペースは、誰もがその使い勝手の良さに気付くだろう。さらに「Velcro ストラップ」は便利で、PCケース全ての標準装備品にして欲しいレベルの小物アイテムだ |
これまでの常識では必須だった、5.25インチオープンベイと3.5インチシャドウベイを”あるべき場所”から大胆にも撤去。フロントパネル裏面に大型ラジエター、水冷ポンプ、リザーバータンクがマウントできる、広大な空きスペースを確保した「Define S」。Fractal Designの代名詞とも言える「スカンジナビアデザイン」を前面に押し出した外観スタイルこそ、人気モデル「Define R5」のそれだが、見事に性格を切り分け、まったくの別モノとして仕上げられている。
「Define R5」と明確にコンセプトを棲み分けた「Define S」 |
広大な空きスペースは、まさしくDIY水冷パーツの居住性を考慮したものであり、それ以外に使い道はない。この潔さこそ、DIY水冷の普及をPCケース側から後押しする、ミドルタワーPCケース「Define S」の主たるコンセプトであり、記念すべき初号機なのだ。
今は限られた市場でも、自作PCの楽しさや新たな可能性を提案する試みは、ある意味著名メーカーの使命であり、「Define S」はそれを感じさせる意欲作として映る。個人的には大いに期待したい。